賭けに勝った令嬢は籠の鳥から解放されるようです

coyubi

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その後数日はお父様の言う通り慌ただしく過ぎた


あの日はデュレイク侯爵一族が集い、
数日に渡るパーティーが行われていた
その一族と、仕える侍従達全員が亡くなってしまった
助かったのは幼いエルシアだけ

デュレイク家唯一の生き残りであるエルシアに代わり、
お父様が葬儀の手配を行った
デュレイク侯爵一族だけでなく、亡くなった全ての侍従達の葬いも含めた葬儀だった

葬儀はしめやかに執り行われたが
参列者の中には、一族を巻き込んだ火事の
不審さを訝しむ者も少なく無かった







式の後、エルシアは我が家で引き取る事になった
喪が明ければ、養女として迎えるという事だ

未だ悲しみの中に居るエルシアは部屋に篭り
私は顔を見に行くことも出来ないでいた
お父様とお母様が入れ替わり立ち替わり、
エルシアに付き添っている為である

一度様子を見に行こうとしたが
暫くそっとしておくように、と帰されてしまったのだ


そうして数週間が経った頃
部屋で読書をしていると、ノックもなくドアが開いた


「…フェリシアお姉さま…?」

「エルシア…?驚いたわ、もう大丈夫なの?」


扉からひょこっと控えめにエルシアが顔を出した
じっと見つめる瞳は大きく、相変わらず可愛らしい
入っても良いのか迷っている様子なので声を掛ける


「良ければ此方にいらっしゃいな、ね?」


こくり、と頷き私が座るソファまで来ると
座ってと言う間もなくエルシアが腰掛けた

一応まだ養女ではないから、私が声を掛けるまで
座ってはいけないのだけれど…
マナーはこれからなのね、きっと


「ごめんなさいね、顔を見に行きたかったのだけど
 お父様から暫く遠慮するよう言われていたの。」

「大丈夫です、お姉さまが心配してるって
 お父さまから聞いていたわ。」

「お父様…?」

「私はこの家の子になるのだから、
 お父さまでしょー?」


何かおかしいの?と首を傾げる
それはそうだけど…、普通は遠慮するというか
ちょっと早過ぎるような…


「まだ養女の手続きが終わっていないから
 少し驚いただけよ、ごめんなさいね。」

「お父さまは許してくださったわ。
 ねぇ、それよりお姉さま!
 あれちょうだい!!」


お父様が許したの…?!それなら仕方ないわね…
え、あれって…?


「あれって、あのぬいぐるみ…?」

「えぇ!あの白いウサギさん!
 とっても可愛いわ!!」


彼女が指差したのは、白いウサギのぬいぐるみ
あれは何年か前に両親から貰ったプレゼント

私が強請った最後のプレゼント…
その後プレゼントされるのは勉強に使う物ばかり
他の物を強請っても却下されたのだ


「…ごめんなさい、あれはあげられないの。
 あれは大切な物だから…。」

「くれないの…?
 私のお人形さんは全部燃えちゃったのに…。
 お姉さまは私が嫌いなのね…っ。」


エルシアはそう言うと火が付いたように泣き出した
わんわんと泣くというのはこうするのだという
お手本かのような騒がしい泣き方だった


「エルシア、ごめんなさいっ!
 嫌ってはいないのよ、落ち着いてっ!」

「じゃ、じゃあっ!どう、してなのっ!!
 私をっ!ひっぐ、好きなら言う事聞いてよっ!!」


肩をさすりながら宥めようとしても
手を払われまた泣き出す始末
どうしたらいいのかしら…



「騒々しいぞフェリシア!!何事だ!!
 エルシア…?どうしたというのだ…!」


騒ぎを聞きつけたのかお父様が部屋に押し入って来た
エルシアを見るなり慌てて駆け寄る


「どうして泣いているんだ、何があった?」

「申し訳ありませんお父様、エルシアがぬいぐ…」

「お姉さまがっ!私をお嫌いなのっ!!」

「何だと…?どういう事だ?」

「ぐすん、お姉さまはっ、私がお父さまを
 お父さまと呼ぶことが気に入らないのっ…」

「違います!そうではなく…っ!」

「だから私につめたいの…っ、お嫌いなの…っぐ…」

「可哀想にエルシア…もう大丈夫だ。」 


エルシアの頭を撫でながら宥めるお父様は
話を聞いて此方をキッと睨む


「優しくしてあげなさい、と言わなかった?」

「お父様、違うんです!
 確かに呼び方は驚きましたが、私は…」

「言い訳など聞きたくもない!
 私が許可したのだから呼び方に口を出すな!
 …お前はこの子に暫く近づくんじゃない。」

「そんな…っ!…っ、分かりました…。」

「…まったく…、エルシア、行こうか?」

「ぐすん、はい…お父さま…。」


エルシアを抱き抱えるようにしてお父様は出て行く


「こんなに泣いて可哀想に…。
 そうだ、何か欲しい物はないか?
 これから買いに行こう。」

「いいんですか…?うれしいです…。」


そんな会話を見つめていると
お父様の肩越しにチラッと此方をみたエルシアは
私を見て、くすっと嘲るように微笑んだ


「…っ?!…」


思わず声が出そうになった
あの子はこれを狙って…まさか全てわざと…?


パタン、と扉が閉まり思わず溜息が出る
驚いた…、あの子は相当の演技派だわ…
もうこんな事に巻き込まれるのは御免だわ
何が目的なのか分からないけれど…

ただ愛でられたいだけならそっとして置いて欲しい
エルシアに奪われるようなものは持っていないもの
こんな事になるならぬいぐるみもあげれば良かった
しがみつくと、ろくでもない事しか起きないわ



遠目にぬいぐるみを見て自分を笑う
やっぱり、私には愛情なんていらないわ





…………………………………………

更新が遅くなり申し訳ありません。
事故により、書き溜めた全データが吹っ飛びました。
忙しさも相まって、中々更新できず…
次回はもう暫く、お待ち頂ければと思います。
申し訳ありません。











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