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しおりを挟むその後、謁見の間の両親の所に戻ると
遅い、と小言を軽く言われた
歓談の時間になっていたようで、私を待っていた
大勢の貴族に囲まれ挨拶をする事になった
私の価値が高く評価されたようで安心したが、
いつ終わるのか分からない程の大人数に
笑顔が引きつらないか、内心冷や冷やした
何とか挨拶を終え、全ての務めが終わって帰ると
両親からも何も苦言はなかったので
すぐに自室へ引き上げ、その日を終えた
それから暫く経ったある日の事、
両親と夕食を共にしていると執事長のハンスが
慌てた様子で駆け込んできた
「旦那様っ!」
「食事中だぞ、ハンス。
お前が慌てるなど、どうしたというのだ。」
「失礼を致し申し訳有りません…っですがっ!
シンシア様が…っ!」
「シンシア…?シンシアがどうしかしたのか?」
「…っ…お住まいのお屋敷が火事に遭われ、
デュレイク侯爵様と共に生存不明との事です…」
「な、んだと…!!」
シンシア叔母様はお父様の妹で、
デュレイク侯爵家に嫁いだ方である。
公爵家とは領地が離れていた為、あまり頻繁には
会う事はなかったが、お優しく慈悲の深い方だった。
「生存が分からない程、酷い火事なのか!
…そうだ、エルシアは…?エルシアの行方は!」
「お屋敷は全焼との事…、火の回りが早かったようで…
エルシア様は幸運にもお庭で倒れられていた所を
駆けつけた者が見つけたという事です。」
「エルシア…なんと…
無事で何よりだが…可哀想に…。」
従姉妹のエルシアは助かったようだ、良かった…
私の一つ年下で、最後に会ったのは彼女が2歳の頃
愛くるしい藍色の瞳にピンク色の髪の
天使のように可愛い子だった
お屋敷が家事なんて…
まだ6歳で、さぞ怖い思いをしたでしょうね…
怪我などしていなければいいのだけど…
「こうしてはおれん…、ハンス!
一刻も早く、侯爵家に向かう用意を!」
「かしこまりました、旦那様!」
夕食を食べている場合では無いと
お父様がハンスに命じながら出て行かれたので
お母様と私も後に続いた
侯爵家には両親だけが向かう事になり
私は残って休むようにと言われてしまった
全焼の現場など見せたくないという配慮だろう
けれど、エルシアを思うと、眠ることが出来なかった
どうか怪我なく無事でいて欲しい…
朝になり、お父様達が帰って来た物音に
ベッドから飛び起きて玄関まで駆けつけた
「フェリシア、起きていたのか?」
「はい、心配で眠れませんでした…」
お父様の腕の中にはしがみつくように
抱きついているエルシアがいた
顔は見えないが、体が震えている
服は煤だらけで焦げている部分もあり、
髪も所々焼けて短くなっていた
「怪我は…っ、怪我はありませんの…?」
「あぁ、軽い火傷と擦り傷だけだ。
あの中では奇跡と言うべきだな…。」
「…叔母様と侯爵様は…?」
「………っ………。」
静かにお父様は首を振った
お二人とも亡くなられたということ…
こんな突然に…何てことなの…
「お前も今日は休みなさい。
今日は勉強どころではないだろうし、
色々と慌ただしくもなる。」
「はい、お父様…。
エルシアは、大丈夫ですか…?」
「どうだろうな…。
可哀想に、ずっと震えて泣いている…。
この子も少し休ませないと…。」
エルシアの頭を撫でるお父様の顔は
苦しそうに悲しみが滲んでいた
「私に出来る事があれば、
何なりと仰って下さい、お父様…。」
「あぁ、暫くエルシアは預かる。
優しくしてあげなさい。」
そういうとお父様はエルシアを抱えて
侍従達と共に行ってしまわれた
残ったお母様も心配そうではあったが
私達は休みましょう、とだけ言って自室に戻った
私も部屋へ戻り、エルシアを思いながら眠りについた
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