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1.ヴィクトル
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翌週末、アルカンスィエルの中心街から、小一時間ほどの街、トゥジューの由緒あるホールで、騎兵隊の将校、約八十名と、その家族が集まって、賑わいのあるパーティーが催されていた。
一月末のその日は、前日までの大寒波が少々緩み、人々をほっとさせた。
その年の寒さは、例年にないほど厳しく、度々、雪が舞い積もり、あらゆる水気が凍りつき、誰もが、あまりの寒さに疲れを覚えていたので、今日のようなわずかな温もりにでも、人々は、喜びを覚えた。
子どもたちの参加が認められる、昼間のその集いでは、大人だけの集いとは違って、上官の、お決まりの祝辞が続いた後、ビュッフェ形式の食事や、あるいは、楽団も入って、子どもたちのはしゃぐ声や、婦人たちの笑い声も混ざり、和やかに賑やかに盛り上がった。
それは、戦勝の祝賀行事の一環としながらも、何かと気苦労の多い軍人の家族を、慰労するための集いであるに違いなかった。
前線にいれば、当然参加することはなかったが、王都にいる以上、上官に誘われれば、特別な理由でもない限り、一年に一度、トゥジューで開かれるこの集いを、欠席する訳にはいかなかった。
ヴィクトルは、正直、この手の集いが、苦手だった。
家族連れの将校が眼についたが、当然、独身の将校や、将校の娘や妹といった、嫁入り前の者たちも参加していたわけで、恰好の見合いの席ではあったが、結婚に関心を抱かないヴィクトルにとっては、その喧騒が疎ましかった。
故に、結局のところ、ワインを片手に、将校たちで集まって、尽きない、殺伐とした前線の話に時間を費やすことになり、将校クラブで時間を過ごすのと、大差なかった。
そのうち、ひとりの少尉が、
「ホワイトノクターンですね」
と、笑顔でピアノの方を振り返り、曲名を言い当てた。
楽団の演奏が続いているはずだったが、いつしか、ピアノの独奏に変わっていた。
「詳しいんだな」
ヴィクトルは、その方面には、疎かった。
「姉の夫が、ピアノの演奏家なんです。おかげで、随分、詳しくなりました」
ホワイトノクターンは、三拍子の、随分と、夢想的、瞑想的な曲だった。
ほんの数分で終わる、そのロマンティックな楽曲を耳にして、ヴィクトルは、なるほど、女子供に、人気がありそうだと、思った。
時間を持て余しつつ、ヴィクトルが、何気なく、ホールの壁際に眼をやると、やや丸顔の明るい茶色の髪をした、ひとりの小柄な若い娘が、眼についた。
何故、眼についたかと言えば、その娘が、人目を引く美しさを持っていただとか、目立つ服装をしていたから、というわけではなくて、グレーの、これといって特徴のない、ありふれたドレスを身に着けたその娘は、むしろ壁に同化してしまいそうなほど、服装も容貌も、地味すぎるほど地味で、それが却って目立ったからだった。
その地味な娘は、そっと、ある一方を見つめ続けていた。
娘の視線の先には、ラ・ギーユ中将の子息、ラ・ギーユ中尉の姿があった。
ラ・ギーユ中尉は、遠くから自分を見つめる純粋な娘の眼差しに気づくはずもなく、ワインを手に、若い娘たちとの会話を、楽しんでいた。
眉目秀麗という言葉は、このマクシム・フランソワ・ド・ラ・ギーユ中尉のために、あるのではないかと思うほどで、長身、ブロンドに碧眼、温和で誠実な人柄、高い教養、大貴族の父親は、現役中将と来れば、非の打ち所が、見当たらなかった。
マクシムも、国境勤務が長く、しばらくの間、王都勤務らしいと、先日、誰かが言っていたのを、思い出した。
同じ団に所属したことはなかったが、二十五歳になるマクシムが、騎兵第五国境連隊軽騎兵の小隊長だということは聞いており、わざわざ危険で辺鄙な場所の任務につかずとも、父親の威光で近衛にでも配属されれば、王都勤務でいられるのに、そうしないあたり、マクシムの意地を察するヴィクトルだった。
独身の娘たちが、マクシムの姿に心ときめかせるのは、当然と言えば当然で、なるほど、あの壁際の地味な娘も、そのひとりか、と、ヴィクトルは即座に理解した。
俺たちとは違う争いが、娘たちにもあるようだ、と、ヴィクトルは、鼻で笑った。
「ミレーヌ」
壁際の地味な娘、ミレーヌ・フェリシテ・ド・ブルダンは、ラ・ギーユ中尉に気を取られ続けていたせいで、小さな息子の手を引く兄嫁ソフィが、傍に立ったことに、すぐには気づかなかった。
「ああ・・・、驚いた!やはり、ご気分が優れません?小さなアランを、しばらく見ていましょうか?」
密かに、マクシムへと向ける視線に、気づかれたのではないかと、ミレーヌは顔を赤くし、病弱な姉を労わる言葉が、早口になった。
体つきが細く、いつも青白い頬のソフィだったが、今のところ、具合が悪そうには見えなかった。
「私なら、大丈夫よ。いつも、心配してくれてありがとう。ねえ、ミレーヌ、せっかくの機会なのだから、ラウルに紹介してもらって、あなたも、どなたかとお話をして来たら?」
ラウルは、騎兵隊の中尉で、ミレーヌの兄であり、ソフィの夫だった。
ソフィは、人一倍、人見知りの妹に、素敵な人が現れたらと思って、そう声をかけたのだったが、ミレーヌは、顔を赤くしたまま、首を横に振った。
「いいえ、私・・・、そういったことは苦手だから」
「そう?無理にとは言わないけれど、きっかけは大切よ」
十九歳になる、世間知らずではあるけれど、心優しい妹に、良い出会いがあったらと、気に掛けるソフィだった。
ミレーヌ・フェリシテ・ド・ブルダンは、五年程前に亡くなった、騎兵隊大隊長ブルダン中佐の娘で、二十六歳になる兄ラウルは、騎兵隊の中尉だった。
兄と言っても、ラウルとは母親が違い、ミレーヌは、庶子だった。
つまりは、ブルダン中佐の愛人の子だった。
幼少期に実の母親を亡くしたミレーヌだったが、ブルダン中佐の本妻、つまり、ラウルの母親は、寛大な心で、放っておけば路頭に迷うであろう、夫の愛人の幼子を引き取った。
ブルダン夫人は、引き取ったミレーヌを、本当の娘の様に可愛がり、自分の生い立ちを知るミレーヌは、そのことを心から感謝し、二年前にブルダン夫人が亡くなるまで、育ての母を、大切に世話した。
ブルダン家は、軍人家系だったが、亡くなった父親が中佐にまで上ったとはいえ、もともとは、そう裕福とは言えない貴族の家庭だった。
ミレーヌは、人一倍人見知りで、引っ込み思案で、はにかみ屋だった。
舞踏会や、サロンの女主人からの招待状が、舞い込んだこともあったが、ミレーヌは性格的にそういったことに消極的で、出費がかさむこともあって、あれこれ理由をつけて断ることが多く、その存在は、次第に忘れられていった。
女たちが美を競い合い、そして、様々な思惑が渦巻く社交界は、そういったことを何一つ望まないミレーヌを、ひどく疲れさせた。
長く国境に赴任する兄ラウルから、病弱な妻ソフィと、息子アランのことを頼まれていたミレーヌは、兄嫁を助け、三歳になる甥の世話をし、二名の使用人に指示を与え、空いた時間は、刺繍と読書に費やした。
その毎日の暮らしに、満足していたミレーヌは、今の生活を何ひとつ変えたいとは、思わなかった。
ラウルが国境へ赴任中は、敬愛する兄が無事に帰ってくることだけが、ミレーヌの望みだった。
それでも、今日こうして、トゥジューでの集いに出席することを決めたのは、ラ・ギーユ中尉にお会いしたい、という思いからだった。
一ヵ月前、基地の馬術訓練場に、姉からの頼まれ物を届けに行ったミレーヌは、偶然、凛々しい将校の姿を見かけた。
ミレーヌは一瞬にして、その雄々しい姿に、惹きつけられた。
その将校の、後方から走って来た下士官が、ラ・ギーユ中尉、と呼び止めるのが耳に入って、それがラ・ギーユ中将の息子、ラ・ギーユ中尉なのだと知った。
それは、娘らしい憧れだった。
ラ・ギーユ中尉と自分とでは、家柄も容姿も、何もかも釣り合いが取れないことは、百も承知で、ラ・ギーユ中尉と話したいだとか、どうにかなりたいだとか、考えたことは一度もなかった。
ただ、その凛々しく、雄々しい姿を、遠くからそっと見つめていたかった。
「少し・・・、ごめんなさい。六歳くらいの男の子を、見なかったかしら?」
背中から、そう声をかけられて、ミレーヌが振り返ると、二十三歳になる兄嫁ソフィと同じ年恰好の婦人が、心配そうな面持ちで立っていた。
「いいえ、見かけませんでしたけど・・・、迷子ですか?」
「ええ、そうなの。少し眼を離した隙に、どこかへ行ってしまって・・・」
と、若い母親は、困惑の表情だった。
ホールの中には、楽団が入り、将校が約八十名、そしてその家族を含めると、四百名はいると思えて、子どもが迷子になったとしても、おかしくはなかった。
ミレーヌと、息子アランの手を引いたソフィは、一緒に探しましょうか、と申し出た。
三歳の息子を持つソフィにとっては、他人事とは思えなかった。
若い母親は、ミレーヌとソフィの申し出に感謝し、迷子になった息子の名は、トマだと伝え、再び広いホールの中を探しに向かった。
もしかしたら、外へ出たのかしら、と、ミレーヌとソフィ、そしてアランは、預けてあったケープやコートを取りに行き、表に出た。
時刻は、午後三時をすぎようとしていた。
昨日までの酷い寒波が、収まったとはいえ、それでも、例年より気温は低いように思えた。
アルカンスィエルの中心街からは、少々離れた、小高い場所ということもあって、ホールの前の通りを行く馬車もまばらで、のんびりと走り、もし誤って表に出たとしても、連れ去りでもない限り、事件や事故にあうこともないように思えた。
集いに参加する将校たちの中には、馬車でやって来た者もあり、その乗りつけた馬車は、ホールの前にずらりと並んでいて、小さな子どもがひとりで歩いていれば、気にかける者があるように思った。
ホールの裏手を見ると、冬木立が並んでいるのが眼に入って、向こうを探してみましょうかと、ソフィが促し、白い息を吐きながら、三人で冬木立へと向かった。
冬木立に、人影はなかった。
「こちらにも・・・、来てなさそうね。やっぱり、ホールの中にいるのかしら」
と、ソフィが、ミレーヌを促して、来た道を戻りかけた時だった。
か細い泣き声が、聞こえた。
思わず、ソフィと、ミレーヌは顔を見合わせた。
慌てて声のする方へ向かい、思わず、ソフィは、声を上げた。
冬木立の並ぶ場所よりさらに奥まった場所には、大きな池があった。
そして、その池の中央付近で、割れた氷にしがみつく、男の子がいたのだ。
例年にはない、異常ともいえる寒さで、池の氷は凍り付いていた。
ホールを抜け出して、池にやって来たトマは、池が凍り付くと言う滅多にない出来事に、驚き、好奇心を覚えて、凍った池の上を歩き出したのだった。
ところが、今朝は、寒さが緩んだせいで、池の中央へ進むほどに、氷は溶け、薄くなっていた。
氷に、ぴしりと、亀裂が入り、割れ、トマはそのまま、水の中へ落ちた。
それでも、辛うじて、池の表面に張る氷にしがみつけたのは、幸運だった。
もし、そのまま、池の中へ沈んでいたなら、こうして発見されることはなかった。
「ミレーヌ、あなたは、ここにいて。私、すぐに、人を呼んでくるから」
と、ソフィは、細い腕でアランを抱き上げて、ホールへと必死に走って戻った。
池に残ったミレーヌは、凍てつくように冷たい池に、下半身を沈め、何とか上半身を水の上に出し、恐怖からか、寒さからなのか、ぶるぶる震えるトマの泣き顔に、酷く動揺した。
池は深く、トマの足は、ついていないようだった。
もし、トマがしがみつく、あの氷が、割れてしまったら。
今、トマが、力尽きてしまったら・・・。
目の前の小さな少年が、亡くなってしまうかもしれないと思うと、ミレーヌは、とても、このままじっとしては、いられなかった。
私が・・・、私が、何とかしなくては。
それ以外の事は、考え付かなかった。
ミレーヌは、慎重に池の氷の上に立った。
歩を進めていく内、次第に、氷が薄くなっていくのが分かったが、目の前に助けを求めるトマがいる限り、引き返すことはできなかった。
薄くなった氷に、亀裂音がして、思わず、ミレーヌはしゃがみ込んだ。
手袋をしていない手に、直接氷が触れて、痺れるほどいたかった。
けれども、あと一メートルほど行けば、トマに辿り着くことが出来た。
ミレーヌは、這いつくばるような恰好で、慎重に、慎重に、進み、トマの手を取った。
ちょうど、その時、ホールから将校たち、そして集っていた家族たちが、冬木立を抜けて、一斉に、ふたりのいる池に向かって、駆けこんできた。
トマの名前を呼ぶ、母親の絶叫が、ミレーヌの耳に入った。
目の前に広がる、俄かには、信じることのできない光景に、人々は、口々に神に救いを求める声を、漏らした。
それでも、火事場を知る軍人たちの動きは、速かった。
凍てつくように冷たい水から上がった時に備えて、ホールにある控室の暖炉の火を、可能な限り強くしておくことと、出来るだけたくさんのブランケットを、すぐさま用意するようにと指示する声が上がり、すぐに、手分けして行動に移った。
将校たちが、ミレーヌとトマを助けに行かなかったのは、決して、凍てつく池に恐れをなしたからではなかった。
今、六歳の少年の重みでさえ割れてしまう氷が、大人の男の重みに耐えられるとは、到底思えなかった。
ミレーヌがトマに辿り着いた今、そのままミレーヌがトマを引き上げ、戻ってくることを祈った。
「そう、そうよ、私の手を取って・・・、ゆっくり、焦らないで、上がるのよ」
池に張る氷の上に座ったミレーヌは、そう言って、トマの腕を取ったが、小柄なミレーヌが服に水を吸った、六歳の男の子を引き上げるのは、至難だった。
何度か、腕が滑り、トマは、池の中へ引き戻され、大人たちのため息が上がった。
それでも、何とかミレーヌがトマを水から引き上げると、見守る大人たちから、歓声と拍手が上がった。
「大丈夫・・・、もう少しだから、頑張って。さあ・・・、先に行くのよ。走ってはだめよ、ゆっくり歩くの」
ミレーヌはそう言って、トマを先に促した。
トマは、大人たちが固唾をのんで見守る中、氷の上を慎重に歩き出した。
ゆっくり、ゆっくり、ぎこちなく。
そうして、自分が助けに行こうとするのを、夫を含む数人に引き留められて待つ、母親の腕の中に飛び込むと、安堵で大泣きし、そのまま何枚もの毛布にくるまれて、抱き上げられて、温かな暖炉のある部屋へと連れてゆかれた。
残されたミレーヌは、トマが助かったのを見届けて、急に恐怖心が沸き上がって来た。
もし、この中へ落ちてしまったら、どうしよう。
私、泳げない・・・。
そう考えると、立ち上がれなくなって、動けだせなくなった。
「お嬢さん!」
その声に、ミレーヌが顔を上げると、池の傍で、マクシム・フランソワ・ド・ラ・ギーユが、ミレーヌに向かって、大声を張り上げていた。
「お嬢さん、君は、勇敢だ。さあ、もう少しだけ、勇気を。立ち上がってはいけない。立ち上がらずに、そのまま、膝と両手を氷に着けて、ゆっくり進むんだ」
それは、身体の重みが一か所にかからないようにするためだった。
仕方がないこととは言え、衆人環視の中、その動物のような動きを強いられ、ミレーヌは、涙が込み上げそうになったが、助かるためには、そうするより他なかった。
「そうだ・・・、とても、うまく出来ている。君は、勇気がある」
マクシムの声に励まされて、慎重に、ミレーヌは、進んだ。
けれども、次の瞬間、ミレーヌの耳に亀裂音が届いたかと思うと、足元の氷が割け、そのまま、ミレーヌの姿が人々の視界から消えた。
見守る婦人たちから、悲鳴が、上がる。
と、同時に、氷の上を走りだした将校がいた。
しばらく進んだところで、氷は、男の重みで容赦なく割れた。
そして、軍服姿の将校も、水の中に消え、再び、婦人たちの悲鳴が上がった。
けれども、ずぶ濡れの将校は、すぐに、咳込むミレーヌの腰を引っ張り上げて、上がって来た。
駆け寄った者たちは、ふたりに賞賛と、気遣う言葉を次々にかけながら、その身体に、毛布を巻き付けた。
極限の緊張から、一気に安堵すると、ミレーヌの身体から力が抜けて、地面に膝をついた。
ミレーヌの名を呼ぶ、ラウルと、ソフィの声を最後に、ミレーヌは気を失った。
一月末のその日は、前日までの大寒波が少々緩み、人々をほっとさせた。
その年の寒さは、例年にないほど厳しく、度々、雪が舞い積もり、あらゆる水気が凍りつき、誰もが、あまりの寒さに疲れを覚えていたので、今日のようなわずかな温もりにでも、人々は、喜びを覚えた。
子どもたちの参加が認められる、昼間のその集いでは、大人だけの集いとは違って、上官の、お決まりの祝辞が続いた後、ビュッフェ形式の食事や、あるいは、楽団も入って、子どもたちのはしゃぐ声や、婦人たちの笑い声も混ざり、和やかに賑やかに盛り上がった。
それは、戦勝の祝賀行事の一環としながらも、何かと気苦労の多い軍人の家族を、慰労するための集いであるに違いなかった。
前線にいれば、当然参加することはなかったが、王都にいる以上、上官に誘われれば、特別な理由でもない限り、一年に一度、トゥジューで開かれるこの集いを、欠席する訳にはいかなかった。
ヴィクトルは、正直、この手の集いが、苦手だった。
家族連れの将校が眼についたが、当然、独身の将校や、将校の娘や妹といった、嫁入り前の者たちも参加していたわけで、恰好の見合いの席ではあったが、結婚に関心を抱かないヴィクトルにとっては、その喧騒が疎ましかった。
故に、結局のところ、ワインを片手に、将校たちで集まって、尽きない、殺伐とした前線の話に時間を費やすことになり、将校クラブで時間を過ごすのと、大差なかった。
そのうち、ひとりの少尉が、
「ホワイトノクターンですね」
と、笑顔でピアノの方を振り返り、曲名を言い当てた。
楽団の演奏が続いているはずだったが、いつしか、ピアノの独奏に変わっていた。
「詳しいんだな」
ヴィクトルは、その方面には、疎かった。
「姉の夫が、ピアノの演奏家なんです。おかげで、随分、詳しくなりました」
ホワイトノクターンは、三拍子の、随分と、夢想的、瞑想的な曲だった。
ほんの数分で終わる、そのロマンティックな楽曲を耳にして、ヴィクトルは、なるほど、女子供に、人気がありそうだと、思った。
時間を持て余しつつ、ヴィクトルが、何気なく、ホールの壁際に眼をやると、やや丸顔の明るい茶色の髪をした、ひとりの小柄な若い娘が、眼についた。
何故、眼についたかと言えば、その娘が、人目を引く美しさを持っていただとか、目立つ服装をしていたから、というわけではなくて、グレーの、これといって特徴のない、ありふれたドレスを身に着けたその娘は、むしろ壁に同化してしまいそうなほど、服装も容貌も、地味すぎるほど地味で、それが却って目立ったからだった。
その地味な娘は、そっと、ある一方を見つめ続けていた。
娘の視線の先には、ラ・ギーユ中将の子息、ラ・ギーユ中尉の姿があった。
ラ・ギーユ中尉は、遠くから自分を見つめる純粋な娘の眼差しに気づくはずもなく、ワインを手に、若い娘たちとの会話を、楽しんでいた。
眉目秀麗という言葉は、このマクシム・フランソワ・ド・ラ・ギーユ中尉のために、あるのではないかと思うほどで、長身、ブロンドに碧眼、温和で誠実な人柄、高い教養、大貴族の父親は、現役中将と来れば、非の打ち所が、見当たらなかった。
マクシムも、国境勤務が長く、しばらくの間、王都勤務らしいと、先日、誰かが言っていたのを、思い出した。
同じ団に所属したことはなかったが、二十五歳になるマクシムが、騎兵第五国境連隊軽騎兵の小隊長だということは聞いており、わざわざ危険で辺鄙な場所の任務につかずとも、父親の威光で近衛にでも配属されれば、王都勤務でいられるのに、そうしないあたり、マクシムの意地を察するヴィクトルだった。
独身の娘たちが、マクシムの姿に心ときめかせるのは、当然と言えば当然で、なるほど、あの壁際の地味な娘も、そのひとりか、と、ヴィクトルは即座に理解した。
俺たちとは違う争いが、娘たちにもあるようだ、と、ヴィクトルは、鼻で笑った。
「ミレーヌ」
壁際の地味な娘、ミレーヌ・フェリシテ・ド・ブルダンは、ラ・ギーユ中尉に気を取られ続けていたせいで、小さな息子の手を引く兄嫁ソフィが、傍に立ったことに、すぐには気づかなかった。
「ああ・・・、驚いた!やはり、ご気分が優れません?小さなアランを、しばらく見ていましょうか?」
密かに、マクシムへと向ける視線に、気づかれたのではないかと、ミレーヌは顔を赤くし、病弱な姉を労わる言葉が、早口になった。
体つきが細く、いつも青白い頬のソフィだったが、今のところ、具合が悪そうには見えなかった。
「私なら、大丈夫よ。いつも、心配してくれてありがとう。ねえ、ミレーヌ、せっかくの機会なのだから、ラウルに紹介してもらって、あなたも、どなたかとお話をして来たら?」
ラウルは、騎兵隊の中尉で、ミレーヌの兄であり、ソフィの夫だった。
ソフィは、人一倍、人見知りの妹に、素敵な人が現れたらと思って、そう声をかけたのだったが、ミレーヌは、顔を赤くしたまま、首を横に振った。
「いいえ、私・・・、そういったことは苦手だから」
「そう?無理にとは言わないけれど、きっかけは大切よ」
十九歳になる、世間知らずではあるけれど、心優しい妹に、良い出会いがあったらと、気に掛けるソフィだった。
ミレーヌ・フェリシテ・ド・ブルダンは、五年程前に亡くなった、騎兵隊大隊長ブルダン中佐の娘で、二十六歳になる兄ラウルは、騎兵隊の中尉だった。
兄と言っても、ラウルとは母親が違い、ミレーヌは、庶子だった。
つまりは、ブルダン中佐の愛人の子だった。
幼少期に実の母親を亡くしたミレーヌだったが、ブルダン中佐の本妻、つまり、ラウルの母親は、寛大な心で、放っておけば路頭に迷うであろう、夫の愛人の幼子を引き取った。
ブルダン夫人は、引き取ったミレーヌを、本当の娘の様に可愛がり、自分の生い立ちを知るミレーヌは、そのことを心から感謝し、二年前にブルダン夫人が亡くなるまで、育ての母を、大切に世話した。
ブルダン家は、軍人家系だったが、亡くなった父親が中佐にまで上ったとはいえ、もともとは、そう裕福とは言えない貴族の家庭だった。
ミレーヌは、人一倍人見知りで、引っ込み思案で、はにかみ屋だった。
舞踏会や、サロンの女主人からの招待状が、舞い込んだこともあったが、ミレーヌは性格的にそういったことに消極的で、出費がかさむこともあって、あれこれ理由をつけて断ることが多く、その存在は、次第に忘れられていった。
女たちが美を競い合い、そして、様々な思惑が渦巻く社交界は、そういったことを何一つ望まないミレーヌを、ひどく疲れさせた。
長く国境に赴任する兄ラウルから、病弱な妻ソフィと、息子アランのことを頼まれていたミレーヌは、兄嫁を助け、三歳になる甥の世話をし、二名の使用人に指示を与え、空いた時間は、刺繍と読書に費やした。
その毎日の暮らしに、満足していたミレーヌは、今の生活を何ひとつ変えたいとは、思わなかった。
ラウルが国境へ赴任中は、敬愛する兄が無事に帰ってくることだけが、ミレーヌの望みだった。
それでも、今日こうして、トゥジューでの集いに出席することを決めたのは、ラ・ギーユ中尉にお会いしたい、という思いからだった。
一ヵ月前、基地の馬術訓練場に、姉からの頼まれ物を届けに行ったミレーヌは、偶然、凛々しい将校の姿を見かけた。
ミレーヌは一瞬にして、その雄々しい姿に、惹きつけられた。
その将校の、後方から走って来た下士官が、ラ・ギーユ中尉、と呼び止めるのが耳に入って、それがラ・ギーユ中将の息子、ラ・ギーユ中尉なのだと知った。
それは、娘らしい憧れだった。
ラ・ギーユ中尉と自分とでは、家柄も容姿も、何もかも釣り合いが取れないことは、百も承知で、ラ・ギーユ中尉と話したいだとか、どうにかなりたいだとか、考えたことは一度もなかった。
ただ、その凛々しく、雄々しい姿を、遠くからそっと見つめていたかった。
「少し・・・、ごめんなさい。六歳くらいの男の子を、見なかったかしら?」
背中から、そう声をかけられて、ミレーヌが振り返ると、二十三歳になる兄嫁ソフィと同じ年恰好の婦人が、心配そうな面持ちで立っていた。
「いいえ、見かけませんでしたけど・・・、迷子ですか?」
「ええ、そうなの。少し眼を離した隙に、どこかへ行ってしまって・・・」
と、若い母親は、困惑の表情だった。
ホールの中には、楽団が入り、将校が約八十名、そしてその家族を含めると、四百名はいると思えて、子どもが迷子になったとしても、おかしくはなかった。
ミレーヌと、息子アランの手を引いたソフィは、一緒に探しましょうか、と申し出た。
三歳の息子を持つソフィにとっては、他人事とは思えなかった。
若い母親は、ミレーヌとソフィの申し出に感謝し、迷子になった息子の名は、トマだと伝え、再び広いホールの中を探しに向かった。
もしかしたら、外へ出たのかしら、と、ミレーヌとソフィ、そしてアランは、預けてあったケープやコートを取りに行き、表に出た。
時刻は、午後三時をすぎようとしていた。
昨日までの酷い寒波が、収まったとはいえ、それでも、例年より気温は低いように思えた。
アルカンスィエルの中心街からは、少々離れた、小高い場所ということもあって、ホールの前の通りを行く馬車もまばらで、のんびりと走り、もし誤って表に出たとしても、連れ去りでもない限り、事件や事故にあうこともないように思えた。
集いに参加する将校たちの中には、馬車でやって来た者もあり、その乗りつけた馬車は、ホールの前にずらりと並んでいて、小さな子どもがひとりで歩いていれば、気にかける者があるように思った。
ホールの裏手を見ると、冬木立が並んでいるのが眼に入って、向こうを探してみましょうかと、ソフィが促し、白い息を吐きながら、三人で冬木立へと向かった。
冬木立に、人影はなかった。
「こちらにも・・・、来てなさそうね。やっぱり、ホールの中にいるのかしら」
と、ソフィが、ミレーヌを促して、来た道を戻りかけた時だった。
か細い泣き声が、聞こえた。
思わず、ソフィと、ミレーヌは顔を見合わせた。
慌てて声のする方へ向かい、思わず、ソフィは、声を上げた。
冬木立の並ぶ場所よりさらに奥まった場所には、大きな池があった。
そして、その池の中央付近で、割れた氷にしがみつく、男の子がいたのだ。
例年にはない、異常ともいえる寒さで、池の氷は凍り付いていた。
ホールを抜け出して、池にやって来たトマは、池が凍り付くと言う滅多にない出来事に、驚き、好奇心を覚えて、凍った池の上を歩き出したのだった。
ところが、今朝は、寒さが緩んだせいで、池の中央へ進むほどに、氷は溶け、薄くなっていた。
氷に、ぴしりと、亀裂が入り、割れ、トマはそのまま、水の中へ落ちた。
それでも、辛うじて、池の表面に張る氷にしがみつけたのは、幸運だった。
もし、そのまま、池の中へ沈んでいたなら、こうして発見されることはなかった。
「ミレーヌ、あなたは、ここにいて。私、すぐに、人を呼んでくるから」
と、ソフィは、細い腕でアランを抱き上げて、ホールへと必死に走って戻った。
池に残ったミレーヌは、凍てつくように冷たい池に、下半身を沈め、何とか上半身を水の上に出し、恐怖からか、寒さからなのか、ぶるぶる震えるトマの泣き顔に、酷く動揺した。
池は深く、トマの足は、ついていないようだった。
もし、トマがしがみつく、あの氷が、割れてしまったら。
今、トマが、力尽きてしまったら・・・。
目の前の小さな少年が、亡くなってしまうかもしれないと思うと、ミレーヌは、とても、このままじっとしては、いられなかった。
私が・・・、私が、何とかしなくては。
それ以外の事は、考え付かなかった。
ミレーヌは、慎重に池の氷の上に立った。
歩を進めていく内、次第に、氷が薄くなっていくのが分かったが、目の前に助けを求めるトマがいる限り、引き返すことはできなかった。
薄くなった氷に、亀裂音がして、思わず、ミレーヌはしゃがみ込んだ。
手袋をしていない手に、直接氷が触れて、痺れるほどいたかった。
けれども、あと一メートルほど行けば、トマに辿り着くことが出来た。
ミレーヌは、這いつくばるような恰好で、慎重に、慎重に、進み、トマの手を取った。
ちょうど、その時、ホールから将校たち、そして集っていた家族たちが、冬木立を抜けて、一斉に、ふたりのいる池に向かって、駆けこんできた。
トマの名前を呼ぶ、母親の絶叫が、ミレーヌの耳に入った。
目の前に広がる、俄かには、信じることのできない光景に、人々は、口々に神に救いを求める声を、漏らした。
それでも、火事場を知る軍人たちの動きは、速かった。
凍てつくように冷たい水から上がった時に備えて、ホールにある控室の暖炉の火を、可能な限り強くしておくことと、出来るだけたくさんのブランケットを、すぐさま用意するようにと指示する声が上がり、すぐに、手分けして行動に移った。
将校たちが、ミレーヌとトマを助けに行かなかったのは、決して、凍てつく池に恐れをなしたからではなかった。
今、六歳の少年の重みでさえ割れてしまう氷が、大人の男の重みに耐えられるとは、到底思えなかった。
ミレーヌがトマに辿り着いた今、そのままミレーヌがトマを引き上げ、戻ってくることを祈った。
「そう、そうよ、私の手を取って・・・、ゆっくり、焦らないで、上がるのよ」
池に張る氷の上に座ったミレーヌは、そう言って、トマの腕を取ったが、小柄なミレーヌが服に水を吸った、六歳の男の子を引き上げるのは、至難だった。
何度か、腕が滑り、トマは、池の中へ引き戻され、大人たちのため息が上がった。
それでも、何とかミレーヌがトマを水から引き上げると、見守る大人たちから、歓声と拍手が上がった。
「大丈夫・・・、もう少しだから、頑張って。さあ・・・、先に行くのよ。走ってはだめよ、ゆっくり歩くの」
ミレーヌはそう言って、トマを先に促した。
トマは、大人たちが固唾をのんで見守る中、氷の上を慎重に歩き出した。
ゆっくり、ゆっくり、ぎこちなく。
そうして、自分が助けに行こうとするのを、夫を含む数人に引き留められて待つ、母親の腕の中に飛び込むと、安堵で大泣きし、そのまま何枚もの毛布にくるまれて、抱き上げられて、温かな暖炉のある部屋へと連れてゆかれた。
残されたミレーヌは、トマが助かったのを見届けて、急に恐怖心が沸き上がって来た。
もし、この中へ落ちてしまったら、どうしよう。
私、泳げない・・・。
そう考えると、立ち上がれなくなって、動けだせなくなった。
「お嬢さん!」
その声に、ミレーヌが顔を上げると、池の傍で、マクシム・フランソワ・ド・ラ・ギーユが、ミレーヌに向かって、大声を張り上げていた。
「お嬢さん、君は、勇敢だ。さあ、もう少しだけ、勇気を。立ち上がってはいけない。立ち上がらずに、そのまま、膝と両手を氷に着けて、ゆっくり進むんだ」
それは、身体の重みが一か所にかからないようにするためだった。
仕方がないこととは言え、衆人環視の中、その動物のような動きを強いられ、ミレーヌは、涙が込み上げそうになったが、助かるためには、そうするより他なかった。
「そうだ・・・、とても、うまく出来ている。君は、勇気がある」
マクシムの声に励まされて、慎重に、ミレーヌは、進んだ。
けれども、次の瞬間、ミレーヌの耳に亀裂音が届いたかと思うと、足元の氷が割け、そのまま、ミレーヌの姿が人々の視界から消えた。
見守る婦人たちから、悲鳴が、上がる。
と、同時に、氷の上を走りだした将校がいた。
しばらく進んだところで、氷は、男の重みで容赦なく割れた。
そして、軍服姿の将校も、水の中に消え、再び、婦人たちの悲鳴が上がった。
けれども、ずぶ濡れの将校は、すぐに、咳込むミレーヌの腰を引っ張り上げて、上がって来た。
駆け寄った者たちは、ふたりに賞賛と、気遣う言葉を次々にかけながら、その身体に、毛布を巻き付けた。
極限の緊張から、一気に安堵すると、ミレーヌの身体から力が抜けて、地面に膝をついた。
ミレーヌの名を呼ぶ、ラウルと、ソフィの声を最後に、ミレーヌは気を失った。
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