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7.Passionate
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玄関ホールで出迎えられた後、リビングに通されるのかと思いきや、そうではなく、レティシアは、二階のセルマ・マクファーレンの私室へと、案内された。
八十五歳を迎えても、頭脳は衰えることのないセルマだったが、ここ数年は、少しばかり足腰に、不安が見受けられるようになった。
椅子からの立ち上がりや、歩行に、人の手を借りることが、必要になっていた。
それで、レティシアの方から、セルマの私室へと、来訪の挨拶に伺うことになった。
レティシアはグレイスに案内され、リックに付き添われて、セルマの部屋の前に立った。
グレイスが、部屋をノックして、
「お義母様、リックと、素敵なお嬢さんですわ」
そう声をかけると、中から、おはいり、と、気丈な声が聞こえた。
ドアを開けると、ゆったりとしたソファに、白髪を後ろできっちりとまとめた、小柄な老婆が、ひとり座っていた。
読書中だったようで、入って来た三人に目を向けると、ぱたんと、音を立てて本を閉じ、グラスチェーンのついた老眼鏡を、外した。
その灰色の眼は鋭く、到底、八十五という歳に似つかわしくなかった。
「随分、ご無沙汰だこと、リック・スペンサー。クリスマスにも、帰ってこないなんて、あなたは、自分の家を忘れたの?」
「忘れたつもりじゃない、セルマ。ただ、仕事が忙しい」
「仕事を言い訳にするのは、男の常套手段です。今も昔もね」
六十歳ほど年下の、壮年期の男を相手にしても、セルマには少しの怯みもなかった。
亡くなった夫と共に、マクファーレンの礎を築いた、創業者としての、誇りと心意気は、未だ健在だった。
「そちらは?」
セルマは、じろりと、レティシアを眺めた。
無遠慮な視線だった。
レティシアについてのあらましは、グレイスから知らされていたはずだったが、レティシアを温かく迎えようとする配慮は、感じられなかった。
促され、レティシアは来訪の挨拶をし、簡単な自己紹介をし、招かれた礼を述べた。
そのレティシアを、にこりともせず、セルマは、まるで品定めでもするような眼で、見つめていた。
レティシアとしては、できるだけ丁寧に話したつもりだったが、セルマから、そのようなきつい視線を投げかけられると、慣れないフォルティスの言葉が、セルマの心象を悪くしたのかもしれないと、戸惑いが浮かんだ。
「セルマ、今、本人も話した通り、レティシアは、ユースティティアからやって来て、日が浅い。言葉も、習慣も、まだあまり慣れていないんだ」
「もう六十年以上も昔になるけれど、私の家のすぐ近くに、ユースティティアから、花嫁がやって来ました」
リックの言葉を無視するかのごとく、セルマは話し始めた。
「あなたのように、大層、美しい人でしたけどね、数年で、ユースティティアに帰って行きましたよ」
「頼む、セルマ・・・」
リックとしては、これ以上、場をこじらせることは止めてくれと、言いたかった。
姑の性格を知り抜くグレイスは、どうか嵐になりませんように、と、心のうちで十字を切った。
「つまり、彼女は、焦ったのです。早く、フォルティスになじまなければならないと、夫の家族に受け入れてもらわなければならないと、焦りすぎたのです。それが、裏目にでました」
セルマの灰色の瞳は、レティシアから逸れなかった。
「人は行動するばかりでなく、時に、流されることも必要です。流れに逆らわず、身を任せること、これも勇気です」
「お話、分かる気、します」
レティシアは、セルマが、セルマの言葉で、励ましてくれているように感じた。
たったひとりで、ユースティティアからやって来たレティシアを、応援してくれているように感じた。
セルマは、そのレティシアを、もう一度しっかり見つめると、昼食の支度が出来たら、下に降りるから、呼びに来るようにと告げて、再び老眼鏡をかけると、本を開いた。
つまりは、三人に、退出を促したのだった。
部屋を出ると、リックとグレイスは、大きなため息をついた。
寒いはずなのに、グレイスの額には、うっすら汗がにじんでいた。
「大丈夫、レティシア?」
グレイスは、セルマに免疫のないレティシアを心配し、気遣った。
「大丈夫、大丈夫。おばあさま、私、励ましてくれた」
「あれで?」
リックには、到底そうは思えなかった。
「おばあさま、私、応援してくれた」
と、嬉しそうに微笑みを浮かべるレティシアに、グレイスとリックは、顔を見合わせた。
下へ降りると、みなリビングに集まって、ウエルカムドリンクを手に、レティシアを歓迎し、賑やかに話が弾んだ。
アンディとデイヴは、一週間ぶりに会うレティシアにまとわりつき、この一週間に起こった出来事について、・・・そのほとんどが、ファーザークリスマスが持ってきた、クリスマスプレゼントについてだったが、興奮気味に話した。
昼食は、セルマも加わって、ダイニングで、全員で取った。
窓から明るい日差しが降り注ぎ、頭上に、夜には、さぞやきらびやかな輝きを放つであろうシャンデリアが下がる、広いダイニングでの和やかなランチは、レティシアにとって、楽しく、心弾むものだった。
ダイニングテーブルにつく頃には、レティシアは、隣に座るグレイスと、すっかり打ち解けていた。
グレイスの方も、どうかすると貴族の娘と言っても差し支えのないような、洗練された立ち居振る舞いの、美しく優しいレティシアに、魅了されていた。
グレイスにとって、ケイティは、信頼のできる、明るく逞しい、しっかりものの嫁だったが、レティシアは、素直で、控えめで、どこか儚げなところがあって、守ってやりたいような、可憐さがあった。
これは、リックが惹かれたとしても、不思議はないわね。
グレイスは、そう思った。
近頃、新たに雇い入れたという若い料理人の作る料理は、前菜、スープからメイン、デザートまで、どれも素晴らしかった。
ただ、レティシアは、どれも大変美味しいとは思いつつ、胸のうちで、アダムの料理に、そっと軍配を上げた。
スープが運ばれてきた時、レティシアは、この屋敷へ来るときの、リックとの会話を思い出した。
それで、そっと斜め向かいに座ったリックの顔を見ると、リックも、レティシアを見て笑みを浮かべたので、リックも、同じことを考えているに違いないと、可笑しくなった。
リックも、レティシアも、スプーンで、スープを口に運んだ。
決して、音を立てたりしないよう、いつも以上に、慎重に。
昼食を終え、セルマは自室へ戻ったが、ケイティ、グレイス、レティシア、それに子供たちは、応接間に集まって、尽きぬ話に、花を咲かせ、ロナルド、ジェフリーにフランク、リックは、リビングで、食後酒を楽しみながら、カードに興じた。
それでも、交代で、カードを抜けだして、フランクやロナルド、リックが、応接間で過ごす女たちのもとへ、お茶に来たり、ジェフリーが、ウォルトに構いに来るため、結局は、男も女も子供たちも一緒になって、時間を過ごすことになった。
楽しい時間は、あっという間に過ぎ、夕刻、見送られて、レティシアは、リックと一緒に、マクファーレンの家を辞した。
もう二日もすれば、フランク、ケイティ、四人の子供たちも、ブリストンのフランクの家へ帰って来て、いつもの賑やかな生活が始まるとわかっているのに、別れは、寂しいものだった。
それは、子供たちの方も、同じだったと見えて、リックが手綱を取る、レティシアを乗せた馬車が、見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。
レティシアも、後ろを振り返って、屋敷の前に並ぶ、見送りの者の姿が見えなくなるまで、大きく手を振り続けた。
姿が見えなくなって、レティシアは、前を向いた。
時刻は、四時が近かった。
冬の日没は早いため、あと三十分もすれば、暗くなってくるはずだった。
リックは、少し馬車のスピードを上げた。
「どうした?寂しくなったのか?何ならあのまま、泊まっても良かったんだぜ」
行く時とは違って、傍らのレティシアが、黙ったままなので、リックは、そう声をかけた。
レティシアは、黙ったまま、首を振った。
レティシアは、素晴らしい家族に出会えたこと、そして、自分のような者が、温かく迎えられたことに、心から感謝していた。
あのまま、聖ラファエラ女子修道院に暮らしていたならば、知ることのできなかった時間だった。
当初、ブリストンでの生活は、試練だと考えていたレティシアだった。
けれども、今ではもう試練ではなく、神様からの贈り物だったと、思うようになっていた。
そのレティシアの想いは、到底、言葉で言い表せるものではなかった。
レティシアは、フランクの家に帰り着くまでの間、心のうちで、その想いを、静かにかみしめていた。
フランクの家に帰り着いた時、辺りは、すっかり暗くなっていた。
リックの手を借りて、馬車から降り、レティシアは、リックに今日の礼を丁寧に述べた。
そして、白い息を吐きながら、しばらく、語り掛ける言葉を探すようにしていたが、
「リック、私・・・、ブリストンへ来て、良かった」
レティシアは、微笑んで、そう言った。
「本当に、楽しかった。一度、ちゃんと、お礼、言いたくて」
「礼は、必要ない」
「本当に、本当に、ありがとう。私、あなたに会えて・・・、本当に、良かった」
レティシアは、ヘーゼルの瞳で、リックをしっかり見つめて、そう告げると、何か口を開きかけたリックに背を向けて、急いで、ポーチから鍵を取り出し、玄関のドアを開け、中に身体を滑り込ませた。
そして、そのままドアに寄りかかると、ほうっと大きく息を吐いて、眼を閉じた。
しばらくして、立ち去る車輪の音が、耳に届いた。
レティシアは、洋服の上から、左肩の、罪人の烙印を、ぎゅっと掴んだ。
八十五歳を迎えても、頭脳は衰えることのないセルマだったが、ここ数年は、少しばかり足腰に、不安が見受けられるようになった。
椅子からの立ち上がりや、歩行に、人の手を借りることが、必要になっていた。
それで、レティシアの方から、セルマの私室へと、来訪の挨拶に伺うことになった。
レティシアはグレイスに案内され、リックに付き添われて、セルマの部屋の前に立った。
グレイスが、部屋をノックして、
「お義母様、リックと、素敵なお嬢さんですわ」
そう声をかけると、中から、おはいり、と、気丈な声が聞こえた。
ドアを開けると、ゆったりとしたソファに、白髪を後ろできっちりとまとめた、小柄な老婆が、ひとり座っていた。
読書中だったようで、入って来た三人に目を向けると、ぱたんと、音を立てて本を閉じ、グラスチェーンのついた老眼鏡を、外した。
その灰色の眼は鋭く、到底、八十五という歳に似つかわしくなかった。
「随分、ご無沙汰だこと、リック・スペンサー。クリスマスにも、帰ってこないなんて、あなたは、自分の家を忘れたの?」
「忘れたつもりじゃない、セルマ。ただ、仕事が忙しい」
「仕事を言い訳にするのは、男の常套手段です。今も昔もね」
六十歳ほど年下の、壮年期の男を相手にしても、セルマには少しの怯みもなかった。
亡くなった夫と共に、マクファーレンの礎を築いた、創業者としての、誇りと心意気は、未だ健在だった。
「そちらは?」
セルマは、じろりと、レティシアを眺めた。
無遠慮な視線だった。
レティシアについてのあらましは、グレイスから知らされていたはずだったが、レティシアを温かく迎えようとする配慮は、感じられなかった。
促され、レティシアは来訪の挨拶をし、簡単な自己紹介をし、招かれた礼を述べた。
そのレティシアを、にこりともせず、セルマは、まるで品定めでもするような眼で、見つめていた。
レティシアとしては、できるだけ丁寧に話したつもりだったが、セルマから、そのようなきつい視線を投げかけられると、慣れないフォルティスの言葉が、セルマの心象を悪くしたのかもしれないと、戸惑いが浮かんだ。
「セルマ、今、本人も話した通り、レティシアは、ユースティティアからやって来て、日が浅い。言葉も、習慣も、まだあまり慣れていないんだ」
「もう六十年以上も昔になるけれど、私の家のすぐ近くに、ユースティティアから、花嫁がやって来ました」
リックの言葉を無視するかのごとく、セルマは話し始めた。
「あなたのように、大層、美しい人でしたけどね、数年で、ユースティティアに帰って行きましたよ」
「頼む、セルマ・・・」
リックとしては、これ以上、場をこじらせることは止めてくれと、言いたかった。
姑の性格を知り抜くグレイスは、どうか嵐になりませんように、と、心のうちで十字を切った。
「つまり、彼女は、焦ったのです。早く、フォルティスになじまなければならないと、夫の家族に受け入れてもらわなければならないと、焦りすぎたのです。それが、裏目にでました」
セルマの灰色の瞳は、レティシアから逸れなかった。
「人は行動するばかりでなく、時に、流されることも必要です。流れに逆らわず、身を任せること、これも勇気です」
「お話、分かる気、します」
レティシアは、セルマが、セルマの言葉で、励ましてくれているように感じた。
たったひとりで、ユースティティアからやって来たレティシアを、応援してくれているように感じた。
セルマは、そのレティシアを、もう一度しっかり見つめると、昼食の支度が出来たら、下に降りるから、呼びに来るようにと告げて、再び老眼鏡をかけると、本を開いた。
つまりは、三人に、退出を促したのだった。
部屋を出ると、リックとグレイスは、大きなため息をついた。
寒いはずなのに、グレイスの額には、うっすら汗がにじんでいた。
「大丈夫、レティシア?」
グレイスは、セルマに免疫のないレティシアを心配し、気遣った。
「大丈夫、大丈夫。おばあさま、私、励ましてくれた」
「あれで?」
リックには、到底そうは思えなかった。
「おばあさま、私、応援してくれた」
と、嬉しそうに微笑みを浮かべるレティシアに、グレイスとリックは、顔を見合わせた。
下へ降りると、みなリビングに集まって、ウエルカムドリンクを手に、レティシアを歓迎し、賑やかに話が弾んだ。
アンディとデイヴは、一週間ぶりに会うレティシアにまとわりつき、この一週間に起こった出来事について、・・・そのほとんどが、ファーザークリスマスが持ってきた、クリスマスプレゼントについてだったが、興奮気味に話した。
昼食は、セルマも加わって、ダイニングで、全員で取った。
窓から明るい日差しが降り注ぎ、頭上に、夜には、さぞやきらびやかな輝きを放つであろうシャンデリアが下がる、広いダイニングでの和やかなランチは、レティシアにとって、楽しく、心弾むものだった。
ダイニングテーブルにつく頃には、レティシアは、隣に座るグレイスと、すっかり打ち解けていた。
グレイスの方も、どうかすると貴族の娘と言っても差し支えのないような、洗練された立ち居振る舞いの、美しく優しいレティシアに、魅了されていた。
グレイスにとって、ケイティは、信頼のできる、明るく逞しい、しっかりものの嫁だったが、レティシアは、素直で、控えめで、どこか儚げなところがあって、守ってやりたいような、可憐さがあった。
これは、リックが惹かれたとしても、不思議はないわね。
グレイスは、そう思った。
近頃、新たに雇い入れたという若い料理人の作る料理は、前菜、スープからメイン、デザートまで、どれも素晴らしかった。
ただ、レティシアは、どれも大変美味しいとは思いつつ、胸のうちで、アダムの料理に、そっと軍配を上げた。
スープが運ばれてきた時、レティシアは、この屋敷へ来るときの、リックとの会話を思い出した。
それで、そっと斜め向かいに座ったリックの顔を見ると、リックも、レティシアを見て笑みを浮かべたので、リックも、同じことを考えているに違いないと、可笑しくなった。
リックも、レティシアも、スプーンで、スープを口に運んだ。
決して、音を立てたりしないよう、いつも以上に、慎重に。
昼食を終え、セルマは自室へ戻ったが、ケイティ、グレイス、レティシア、それに子供たちは、応接間に集まって、尽きぬ話に、花を咲かせ、ロナルド、ジェフリーにフランク、リックは、リビングで、食後酒を楽しみながら、カードに興じた。
それでも、交代で、カードを抜けだして、フランクやロナルド、リックが、応接間で過ごす女たちのもとへ、お茶に来たり、ジェフリーが、ウォルトに構いに来るため、結局は、男も女も子供たちも一緒になって、時間を過ごすことになった。
楽しい時間は、あっという間に過ぎ、夕刻、見送られて、レティシアは、リックと一緒に、マクファーレンの家を辞した。
もう二日もすれば、フランク、ケイティ、四人の子供たちも、ブリストンのフランクの家へ帰って来て、いつもの賑やかな生活が始まるとわかっているのに、別れは、寂しいものだった。
それは、子供たちの方も、同じだったと見えて、リックが手綱を取る、レティシアを乗せた馬車が、見えなくなるまで、ずっと手を振り続けていた。
レティシアも、後ろを振り返って、屋敷の前に並ぶ、見送りの者の姿が見えなくなるまで、大きく手を振り続けた。
姿が見えなくなって、レティシアは、前を向いた。
時刻は、四時が近かった。
冬の日没は早いため、あと三十分もすれば、暗くなってくるはずだった。
リックは、少し馬車のスピードを上げた。
「どうした?寂しくなったのか?何ならあのまま、泊まっても良かったんだぜ」
行く時とは違って、傍らのレティシアが、黙ったままなので、リックは、そう声をかけた。
レティシアは、黙ったまま、首を振った。
レティシアは、素晴らしい家族に出会えたこと、そして、自分のような者が、温かく迎えられたことに、心から感謝していた。
あのまま、聖ラファエラ女子修道院に暮らしていたならば、知ることのできなかった時間だった。
当初、ブリストンでの生活は、試練だと考えていたレティシアだった。
けれども、今ではもう試練ではなく、神様からの贈り物だったと、思うようになっていた。
そのレティシアの想いは、到底、言葉で言い表せるものではなかった。
レティシアは、フランクの家に帰り着くまでの間、心のうちで、その想いを、静かにかみしめていた。
フランクの家に帰り着いた時、辺りは、すっかり暗くなっていた。
リックの手を借りて、馬車から降り、レティシアは、リックに今日の礼を丁寧に述べた。
そして、白い息を吐きながら、しばらく、語り掛ける言葉を探すようにしていたが、
「リック、私・・・、ブリストンへ来て、良かった」
レティシアは、微笑んで、そう言った。
「本当に、楽しかった。一度、ちゃんと、お礼、言いたくて」
「礼は、必要ない」
「本当に、本当に、ありがとう。私、あなたに会えて・・・、本当に、良かった」
レティシアは、ヘーゼルの瞳で、リックをしっかり見つめて、そう告げると、何か口を開きかけたリックに背を向けて、急いで、ポーチから鍵を取り出し、玄関のドアを開け、中に身体を滑り込ませた。
そして、そのままドアに寄りかかると、ほうっと大きく息を吐いて、眼を閉じた。
しばらくして、立ち去る車輪の音が、耳に届いた。
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