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第一章 そして少年は少女に出逢う
第一話 まずは日常から
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世界は残酷に満ちている。
いつもそうだ。世界はいつだって、どこまでも残酷だ。
植物や動物にはないものを人は持っている。
高い頭脳と、それによって発生する感情だ。
人は感情がある限り、どこまでも残酷になれる。この世界をどこまでも残酷にできる。できてしまう。
しかしそうやって、この世界を残酷だと感じる要因もまた感情によるものだ。
世界はたとえ人がいなくても残酷だ。けれど、そんな残酷な世界から人がいなくなれば世界に対して残酷だと感じる存在さえいなくなってしまう。
それは世界にとって、俺たちにとって幸せなことなのだろうか。
俺には、わからない。
いつまでたっても、俺には。
※ ※ ※
使い古した手袋を両手にはめ、左腰にアーミングソードを、腰の後ろには左手から抜けるようにソードブレイカーを差し、仕事の準備を済ませる。
「……よし」
そう呟いた俺の仕事は、半円状で直径約5キロあるスラムの、その中で5つにエリア分けされたうちの一つを警備することだ。
「行くか」
窓から差す朝日に目を細めながら、俺はゆっくりと扉に向かった。
──カンカンカン! カンカンカン!
「ッ」
自宅の扉を開けようとドアノブに手をかけた瞬間、その向こう側では聞き慣れた警音が鳴り響いた。それも、俺が知るリズムの中では最悪に近いものだ。
魔蟲が現れた。
半分まだ仕事モードになりきれていなかった頭を無理やり叩き起こす。
扉を勢いよく開けると、すぐ近くの監視塔の上にいる人間に声をかけた。
「どっちだ!」
「イーサン! ここから真っ直ぐ北に、Cの方だ!」
その言葉を聞くと、北を真っ直ぐ見据えてその先に向かって急いで走り出した。
泥と吐瀉物と血が混ざったツンとした臭いが漂うスラムの、その住宅街を駆け抜ける。
走っているとやがて、女の叫び声が聞こえてくるようになった。走るごとにそれは音量を増していく。
その声を追うように走り続け、現場に辿り着いた。
「いやっ! イヤッ! イヤアァァ!」
「落ち着けってば!」
そこでは、今にも走り出しそうな女を1人の男が取り押さえていた。
そして、泣き叫ぶ女の視線の先にあったのは、小さな子供の死体だった。だがただの死体ではない。今、現在進行形で魔蟲に腹を食べられている真っ最中だ。
全長は大体4メートル程度で、赤黒い肌から赤く短い足が無数に生えていた。顔の前では黄色い触覚が揺れている。
今日は Chilopodaか……
「おい、だからっ──」
俺は状況を確認すると、暴れる女と、それを取り押さえる男の真横を走り抜ける。
捉えた。
左腰の剣を引き抜くと同時にムカデのような形をした魔蟲の首と思われる部位を横薙ぎに斬る。当然、子供の死体には当たらないように。
魔蟲の首から赤い鮮血が飛び散る。
まだだ。
直感的に悟った、その直後。俺の目の前に二匹の魔蟲が横並びで地面から姿を現した。
勢いよく飛び上がり壁のようになった魔蟲、その右側のやつを右に払った剣を左に戻すように胴体を斬り、それと同時に深く踏み込んだ右脚を軸にして左回りに回転。
「ふっ!」
そのまま左の魔蟲も斬る。
「まだだ!」
その声が前方から聞こえてきたと同時に、不意を突いたように背後からもう一匹の魔蟲が地面から飛び出した。
俺は魔蟲から背を向けたまま剣を逆手に持ち替え、脇下から後ろに剣を突き出した。
ズシャッ、という音を確認して剣を引き抜く。剣には緑色の血がついていた。
「あとは?」
剣の血を振り払いながら聞くと、男は唖然としていた顔をハッとさせた。
「も、もう終わりだと……思います」
その言葉を確認してから剣を鞘に納める。
すると、女が男の腕を擦り抜けるようにしてこちらに走ってきた。
「あ、おい!」
男の制止を無視して、女は子供の死体を抱きかかえた。
「あぁ、そんな……リード……リードッ……」
女は腹を大きく食われた子供の死体を、大粒の涙を流しながら必死に抱きしめる。
だか、そんなことをしたところで意味なんてない。子供が生き返るわけでも、この世に存在する全ての魔蟲が滅ぼされるわけでもない。無意味で、無価値な行為だ。
「この……」
しばらく俺と男が周囲を警戒しながら女を見ていると、女は光の無い目でこちらを睨みつけた。
「この……役立たずどもめ」
「な──!?」
男が何か言う前に、女は死体を持ってさっさと走っていってしまった。
「お前たち、無事か!」
前の女とは入れ違いに、今度は後ろから一人の女が五人ほどの武装した仲間を連れて話しかけてきた。
「か、頭!」
隣にいた男が背筋を伸ばす。
「ロイ、怪我はないか」
「はい! 問題ないです!」
女が満足そうに頷いた。
「俺には心配してくれないのか、レベッカ」
俺が女──もといレベッカに言うと、半分呆れたような顔をした。
「必要あるか? どうせそこに転がってる魔蟲もお前がやったんだろ」
「まあな」
互いに苦笑混じりにそんな話をしていると、後ろから複数の足音がした。
振り向くと、そこには全身に鎧を着た男たちが4人ほどいた。全員、腰からバスタードソードを降ろした完全武装。"蟲取り"だ。
そうして観察していると、カシャカシャと音を立てながら一人の男が近寄ってきた。
「これはレベッカ殿」
そう言いながら、男は鎧兜を頭から取り、顔をあらわにさせた。
最近はもう見慣れた顔だが、それでもずしっとした重みを感じるような視線だ。それなりの熟練者であることが見て取れる。
「まさか自警団の頭である貴方が、直々に現場に赴こうとは」
男の視線に正面から視線を返すように、レベッカは応える。
「それは貴方にも言えることではないかな。ルマネシア王国魔蟲対策本部第一級危険区域隊隊長、レイズ・クライレス殿」
レベッカの言葉に、レイズは不敵な笑みを浮かべた。
というか、蟲取りの正式名称はそんなに長かったのか。今まで機会がなかったので全く知らなかった。
「いやいや、貴方のような頭とは違い、私は隊長なのでね。現場で直接指示を出すのが私の仕事なのですよ。それに、ずっと事務作業だけでは腕も鈍ってしまいますし」
「違いない」
レイズの皮肉混じりの言葉にレベッカは余裕を持って応えた。
だが、ロイとやらはそうでもないようだ。さっきから隣で顔を赤くしてプルプルと震えている。暴発しなければいいが。
「お前たち、さっさと死体を運び出せ!」
便宜上の挨拶を終わらせたレイズが部下たちに指示を出す。部下たちは早速、俺が斬った魔蟲の死体を抱え始めた。
「ところで」
死体に目を向けていたレイズがこちらに向き直った。
「あの魔蟲を殺したのは、君か?」
レイズが俺を見ながら言った。
誤魔化しても無意味だろう。
「そうだ」
「名は?」
「イーサン」
「……そうか、君があの」
レイズが軽く目を見開いた。
どうやら俺の名は蟲取りの連中にも広まっているらしい。まったく、出世したものだ。
「君さえ良ければ、うちに来ないか」
「何?」
レイズが口の端に笑みを浮かべ、続ける。
「最低限の衣食住を保障しよう。殺した魔蟲の数だけ給料も出る。どうだ?」
「お前!」
さっきまで顔を赤くしてもなんとか我慢していたロイが、ついに痺れを切らしてレイズに突っかかろうとする。が、
「待て」
「頭……!」
レベッカが止めに入った。
「すまないが、レイズ殿。こちらも毎年人手不足に悩まされている。大切な団員、それもエースを引き抜こうとするのはやめていただきたい」
「これは失礼した。これは癖のようなものでね。ある種の職業病とでも思ってくれると助かる」
謝罪を口にしながらも、悪びれた様子もなくレイズは笑った。
「それでは、私はこれで。行くぞ!」
レベッカに軽く礼を入れてから、レイズは身を翻して部下と共に去っていった。
「頭、あいつ絶対に調子に乗ってます! このままでいいんですか!」
と、今度は威勢よくロイがレベッカに言う。
「落ち着け、ロイ。あれでも同業者だ。仲良くしろとは言わないが、もう少し我慢を覚えろ」
「ッ……はい」
何か言おうとした寸前で堪えたロイを見たレベッカは、満足そうに頷いた。
「わかったら持ち場に戻ってよし」
「失礼します」
深々と頭を下げ、赤かった顔を暗くして、ロイは路地に走っていった。
「随分、威勢がいいな。新人か」
「ああ、剣の筋も悪くない。期待の新人だ。ただ少し問題はあるが、悪い奴じゃない」
「そうらしいな」
性格に難あり、か。たしかに悪い奴ではなさそうだが、蟲取りの隊長に突っかかろうとするなんて、はっきり言って世間知らずも良いところだ。あんなでよく今まで死ななかったものだ。
「お前たちも持ち場に戻って構わん」
レベッカが後ろで待機していた仲間たちに指示を出し、去っていく部下たちの背中を見送ると、今度はこっちを向いた。
「イーサン」
レベッカが名前だけを呼んでくる時は、大体人前ではできないような話がしたい時だ。
「……わかった」
俺はこの後の予定を頭の中で思い出しながら、頷きを返した。
いつもそうだ。世界はいつだって、どこまでも残酷だ。
植物や動物にはないものを人は持っている。
高い頭脳と、それによって発生する感情だ。
人は感情がある限り、どこまでも残酷になれる。この世界をどこまでも残酷にできる。できてしまう。
しかしそうやって、この世界を残酷だと感じる要因もまた感情によるものだ。
世界はたとえ人がいなくても残酷だ。けれど、そんな残酷な世界から人がいなくなれば世界に対して残酷だと感じる存在さえいなくなってしまう。
それは世界にとって、俺たちにとって幸せなことなのだろうか。
俺には、わからない。
いつまでたっても、俺には。
※ ※ ※
使い古した手袋を両手にはめ、左腰にアーミングソードを、腰の後ろには左手から抜けるようにソードブレイカーを差し、仕事の準備を済ませる。
「……よし」
そう呟いた俺の仕事は、半円状で直径約5キロあるスラムの、その中で5つにエリア分けされたうちの一つを警備することだ。
「行くか」
窓から差す朝日に目を細めながら、俺はゆっくりと扉に向かった。
──カンカンカン! カンカンカン!
「ッ」
自宅の扉を開けようとドアノブに手をかけた瞬間、その向こう側では聞き慣れた警音が鳴り響いた。それも、俺が知るリズムの中では最悪に近いものだ。
魔蟲が現れた。
半分まだ仕事モードになりきれていなかった頭を無理やり叩き起こす。
扉を勢いよく開けると、すぐ近くの監視塔の上にいる人間に声をかけた。
「どっちだ!」
「イーサン! ここから真っ直ぐ北に、Cの方だ!」
その言葉を聞くと、北を真っ直ぐ見据えてその先に向かって急いで走り出した。
泥と吐瀉物と血が混ざったツンとした臭いが漂うスラムの、その住宅街を駆け抜ける。
走っているとやがて、女の叫び声が聞こえてくるようになった。走るごとにそれは音量を増していく。
その声を追うように走り続け、現場に辿り着いた。
「いやっ! イヤッ! イヤアァァ!」
「落ち着けってば!」
そこでは、今にも走り出しそうな女を1人の男が取り押さえていた。
そして、泣き叫ぶ女の視線の先にあったのは、小さな子供の死体だった。だがただの死体ではない。今、現在進行形で魔蟲に腹を食べられている真っ最中だ。
全長は大体4メートル程度で、赤黒い肌から赤く短い足が無数に生えていた。顔の前では黄色い触覚が揺れている。
今日は Chilopodaか……
「おい、だからっ──」
俺は状況を確認すると、暴れる女と、それを取り押さえる男の真横を走り抜ける。
捉えた。
左腰の剣を引き抜くと同時にムカデのような形をした魔蟲の首と思われる部位を横薙ぎに斬る。当然、子供の死体には当たらないように。
魔蟲の首から赤い鮮血が飛び散る。
まだだ。
直感的に悟った、その直後。俺の目の前に二匹の魔蟲が横並びで地面から姿を現した。
勢いよく飛び上がり壁のようになった魔蟲、その右側のやつを右に払った剣を左に戻すように胴体を斬り、それと同時に深く踏み込んだ右脚を軸にして左回りに回転。
「ふっ!」
そのまま左の魔蟲も斬る。
「まだだ!」
その声が前方から聞こえてきたと同時に、不意を突いたように背後からもう一匹の魔蟲が地面から飛び出した。
俺は魔蟲から背を向けたまま剣を逆手に持ち替え、脇下から後ろに剣を突き出した。
ズシャッ、という音を確認して剣を引き抜く。剣には緑色の血がついていた。
「あとは?」
剣の血を振り払いながら聞くと、男は唖然としていた顔をハッとさせた。
「も、もう終わりだと……思います」
その言葉を確認してから剣を鞘に納める。
すると、女が男の腕を擦り抜けるようにしてこちらに走ってきた。
「あ、おい!」
男の制止を無視して、女は子供の死体を抱きかかえた。
「あぁ、そんな……リード……リードッ……」
女は腹を大きく食われた子供の死体を、大粒の涙を流しながら必死に抱きしめる。
だか、そんなことをしたところで意味なんてない。子供が生き返るわけでも、この世に存在する全ての魔蟲が滅ぼされるわけでもない。無意味で、無価値な行為だ。
「この……」
しばらく俺と男が周囲を警戒しながら女を見ていると、女は光の無い目でこちらを睨みつけた。
「この……役立たずどもめ」
「な──!?」
男が何か言う前に、女は死体を持ってさっさと走っていってしまった。
「お前たち、無事か!」
前の女とは入れ違いに、今度は後ろから一人の女が五人ほどの武装した仲間を連れて話しかけてきた。
「か、頭!」
隣にいた男が背筋を伸ばす。
「ロイ、怪我はないか」
「はい! 問題ないです!」
女が満足そうに頷いた。
「俺には心配してくれないのか、レベッカ」
俺が女──もといレベッカに言うと、半分呆れたような顔をした。
「必要あるか? どうせそこに転がってる魔蟲もお前がやったんだろ」
「まあな」
互いに苦笑混じりにそんな話をしていると、後ろから複数の足音がした。
振り向くと、そこには全身に鎧を着た男たちが4人ほどいた。全員、腰からバスタードソードを降ろした完全武装。"蟲取り"だ。
そうして観察していると、カシャカシャと音を立てながら一人の男が近寄ってきた。
「これはレベッカ殿」
そう言いながら、男は鎧兜を頭から取り、顔をあらわにさせた。
最近はもう見慣れた顔だが、それでもずしっとした重みを感じるような視線だ。それなりの熟練者であることが見て取れる。
「まさか自警団の頭である貴方が、直々に現場に赴こうとは」
男の視線に正面から視線を返すように、レベッカは応える。
「それは貴方にも言えることではないかな。ルマネシア王国魔蟲対策本部第一級危険区域隊隊長、レイズ・クライレス殿」
レベッカの言葉に、レイズは不敵な笑みを浮かべた。
というか、蟲取りの正式名称はそんなに長かったのか。今まで機会がなかったので全く知らなかった。
「いやいや、貴方のような頭とは違い、私は隊長なのでね。現場で直接指示を出すのが私の仕事なのですよ。それに、ずっと事務作業だけでは腕も鈍ってしまいますし」
「違いない」
レイズの皮肉混じりの言葉にレベッカは余裕を持って応えた。
だが、ロイとやらはそうでもないようだ。さっきから隣で顔を赤くしてプルプルと震えている。暴発しなければいいが。
「お前たち、さっさと死体を運び出せ!」
便宜上の挨拶を終わらせたレイズが部下たちに指示を出す。部下たちは早速、俺が斬った魔蟲の死体を抱え始めた。
「ところで」
死体に目を向けていたレイズがこちらに向き直った。
「あの魔蟲を殺したのは、君か?」
レイズが俺を見ながら言った。
誤魔化しても無意味だろう。
「そうだ」
「名は?」
「イーサン」
「……そうか、君があの」
レイズが軽く目を見開いた。
どうやら俺の名は蟲取りの連中にも広まっているらしい。まったく、出世したものだ。
「君さえ良ければ、うちに来ないか」
「何?」
レイズが口の端に笑みを浮かべ、続ける。
「最低限の衣食住を保障しよう。殺した魔蟲の数だけ給料も出る。どうだ?」
「お前!」
さっきまで顔を赤くしてもなんとか我慢していたロイが、ついに痺れを切らしてレイズに突っかかろうとする。が、
「待て」
「頭……!」
レベッカが止めに入った。
「すまないが、レイズ殿。こちらも毎年人手不足に悩まされている。大切な団員、それもエースを引き抜こうとするのはやめていただきたい」
「これは失礼した。これは癖のようなものでね。ある種の職業病とでも思ってくれると助かる」
謝罪を口にしながらも、悪びれた様子もなくレイズは笑った。
「それでは、私はこれで。行くぞ!」
レベッカに軽く礼を入れてから、レイズは身を翻して部下と共に去っていった。
「頭、あいつ絶対に調子に乗ってます! このままでいいんですか!」
と、今度は威勢よくロイがレベッカに言う。
「落ち着け、ロイ。あれでも同業者だ。仲良くしろとは言わないが、もう少し我慢を覚えろ」
「ッ……はい」
何か言おうとした寸前で堪えたロイを見たレベッカは、満足そうに頷いた。
「わかったら持ち場に戻ってよし」
「失礼します」
深々と頭を下げ、赤かった顔を暗くして、ロイは路地に走っていった。
「随分、威勢がいいな。新人か」
「ああ、剣の筋も悪くない。期待の新人だ。ただ少し問題はあるが、悪い奴じゃない」
「そうらしいな」
性格に難あり、か。たしかに悪い奴ではなさそうだが、蟲取りの隊長に突っかかろうとするなんて、はっきり言って世間知らずも良いところだ。あんなでよく今まで死ななかったものだ。
「お前たちも持ち場に戻って構わん」
レベッカが後ろで待機していた仲間たちに指示を出し、去っていく部下たちの背中を見送ると、今度はこっちを向いた。
「イーサン」
レベッカが名前だけを呼んでくる時は、大体人前ではできないような話がしたい時だ。
「……わかった」
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