僕が君に殺されるまで

フィボナッチ恐怖症

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24話 ウラン

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「潔? 幻覚じゃないよな?」

 すぐに回答が欲しかったので、ずれを解除して話しかける。

「当たり前だろ。そんな人外みたいなことはないさ」

 すでに人外な能力を持ってるじゃないかというツッコミは置いておこう。
確かに、もやしが潔を殺していたなら、リーゼントを殺したタイミングで死んでいたか。

「斬られた痕は残ってないのか?」

「残ってないな」

 でも、潔は間違いなく斬られていたはずだ。
もしかして、いや、もしかしなくても、比奈の能力だろう。
まさか、ぼくの右足も、比奈がいつの間にか治してくれていたのだろうか。その結果、今比奈は動けなくなっているのだろう。ほんと迷惑ばっかりかけてるな......

「いつ頃意識が戻った?」

潔に問いかける。

「ついさっきだ」

 ぼくの右足は瞬時に治っていたことから考えるに、わざと、潔は治療を遅らせてしばらく意識を戻させなかったのか?
ぼくらは、敵も含めて、全て比奈に計算され尽くした通りに動いていたのか?
その可能性については今考えていてもキリがないと思ったので、とりあえず前の敵に目を向ける。
奥にいる男はこちらを仰々しい眼で睨みつけていた。相当お怒りのようだ。

 床を見ると、男の立っている周辺の床が緑色から、銅の色に変わっていっていた。そして、男がこちらに向かってくる。
相当な能力の持ち主のようだ。どういう事象を起こして、今の現象を引き起こしているのだろうか。

 見ている限り、男の半径1メートルより遠くの床は変化していないように見える。もしかすると、近づかれてしまった時に、ぼくのこの体も、床みたいに別の物体になってしまうのだろうか。
とりあえず、近づかない方が良さそうだ。
そういえば、潔の能力ならジャストで守れるのか。折角生き残ってくれていたのだから、活躍してもらおう。

「潔、あの男を絶対に、ぼくらに近づけないようにしてくれ」

「分かった」

 男が宙に向かって手をかざす。こういうときは、間違いなく危ない。今までにも、空気を使う敵は意外と多かった。
またもや、粒子操作か?
けれど、今までの攻撃なんかとは段違いに強いのが来るような気がした。

今すぐ、この場から離脱しないと......

「大丈夫。このまま戦ってたら、負けないはず」

 比奈がいきなり言う。

「比奈は大丈夫?」

「うん。全然問題ないよ」

 たしかに、ここで後ろに引いたとしても、もう1人の敵が待っているかもしれない。

考えろ。考えるんだ。相手の能力なら、空気を使って何ができる?

 相手の能力は、物質変換だと思われる。それなら、空気中の物質を何に変えれば、1番威力が高いだろうか。そして、それでいて自分が生き残れるような攻撃。
危険な原子を思い浮かべていく。

ナトリウム、水銀、リン......

 ウランか。そうだ、きっとウランだ。ウランの核分裂で発生する放射線なら、分厚い壁みたいなので防ぐこともできる。
それなら、相手の背後に行けば、ある程度ダメージを減らせるはずだ。

「比奈、潔、あいつの背後にまわろう」

 返答は、男の叫び声で聞こえなかったが、そろそろ本気で危ない。
急いで移動しよう。男から1メートル離れたところが光り出す。
激しい爆発音と熱風が来るかと思われたが、計画通り、男が壁を張ってくれたようで、なんとか当たらずに済んだ。

ん?

比奈がいない?

もしかして、取り残された? ま......まさかね。不吉な予感がする。

 急いで様子を確かめに行こうとしたときだった。
なぜだか体が動かなかった。何かに掴まれているような、いや、何かに縛られているようなそんな感じがした。
体を見てみると、体が鉄でガッチガッチに固められている。しかし、皮膚の出ているところは固められていない。皮膚が出ているあたりには能力が使えないのだろうか。

「潔、能力使って!」

「分かった」

 半径1メートル内に男がいることは間違いない。そして、男が自分で作った壁がある。その間に挟んで仕舞えばいいのだ。
男が壁の方に飛んでいく。すると、壁が消えた。流石にそうするか。

壁の奥の光景を見て、ぼくは叫ばずにいられなかった。

「比奈?比奈!比奈!?」

 その叫びに答える声はなかった。
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