僕が君に殺されるまで

フィボナッチ恐怖症

文字の大きさ
26 / 32

26話 ラストアタック

しおりを挟む
ゴウンゴウン

 という音がして、爆発が収まったことが分かった。
ぼくは、ちょうど男の方に向かっていて、男の背後の辺りにいることができたため、何事もなかった。
男がきっちりと壁を作って爆風を防いでくれたおかげだ。

 と、そんな分析をしている余裕は無いか。
比奈は死んでいないはずだ。それなのに、なのに......まだ、電気使いの子どもは生き残っている。
比奈は、きっちりと殺すはずなのだ。そのことを認めてしまうのも悲しいのだが、比奈が死んでしまうことと比べれば、そこまででも無いか。
次に、潔がどうなっているのかが問題だ。あちら側で1人爆風を直で受けているかもしれない。ただ、即座に死に至るほどの爆発ではなかった様子だ。今でも電車が走り続けているのだから。

 とりあえず男を攻撃しに行こうかと思ったがやめた。その前に、倒れている電気使いの子どもをもう一回刺しておいた方がいいと思ったのだ。念には念を、というやつだ。
倒れている子どもの方に向かって行くが、左足の損傷のせいでスムーズに進めず、子どものところにたどり着いた頃には、すでに男がぼくが子どもの方に向かっていることに気づいたようで、こちらの方に向かってくる。

 何も子どもに動きがないので、グサッと子どもの頭を頭頂部側からナイフで刺す。
すると、子どもの頭から血が放射状に吹き出し、ぼくの身体にベッタベッタと張り付くかのようにくっついてくる。まるでスライムか何かのようだ。

「ガフッ」

 背中からお腹にかけて激痛が走り、ぼくはボッタボッタと血を子供にかける羽目になった。何かに貫かれたようだ。しかし、その何かが何なのかはわからなかった。貫いたはずのものがどこにも存在しないのだ。
そうか。有機物に触れたから消えたのか。ぼくの体に触れて、消えるまでの間になら貫くことができるのだ。

「潔! お前の能力で、その男をぼくの方に吹っ飛ばしてくれ!」

 潔からの返事が来るより先に男がこちらのほうに向かってくる。
なぜぼくの位置がわかる?

 10秒だけ、いや、20秒だけ時間を稼げれば......そうすれば......

 男のこちらへの歩みが突然止まった。
男が一瞬後ろに下がってから、意を決したかのようにこちらに先ほどよりも速度を上げて走ってくる。
一瞬男が切れたかのように見えたが、そのままこちらに走ってくる。

 体が痛んでそんなに動けないぼくは、倒れこむようにして右側に転がる。すると、それを目で追うようにして、男が時間のずれがないかのようにぼくを見てくる。
あ、なるほど。今理解した。男は能力で変換した空気の粒子が、元に戻る位置を特定しているのだ。

ドン

 交通事故のような音がして、男がぼくを超えて吹っ飛んだ。これで10秒か。あと10秒。

 これで、10秒は稼げるだろう。おもちゃのボールにナイフを突き刺して投げる。ボールの中の灯油のせいで、ぶれた飛び方をするこのボールには不用意には近づきにくいだろう。
しかし、そのナイフ付きボールは当てることが目的ではない。
投げられたナイフがボールの表面で少しずつ動き、切れ目を大きくしていく。
そろそろだ。ボールから四方八方に灯油がばらまかれていく。
灯油の量は少ないが、ぼくを探すのの妨害くらいにはなるだろう。

キキキキー

 よしきた。

ガリッ

 電車が脱輪した音がした。そのまま電車は2秒ほど宙を舞い、爆発音よりもでかい音で電車は住宅街に突っ込んだ。

 ぼくはというと、動けないまま電車の外に窓から放り出され、地面に直撃する直前で、比奈が出してくれた微生物に支えられ、無事脱出できた。少しして、潔がぼくの近くに激しめの音を出して落ちてきた。が、無事なようだ。少し痛そうにも見えるけれど。

「大丈夫だった?」

 比奈がぼくに優しく話しかける。久しぶりに比奈を見た気がする。と、それよりも。

「大丈夫。とりあえず、あいつにとどめを刺しに行こう」

「そうしようか」

 ぼくが立ち上がろうとしたとき、お腹のあたりが痛んだ。
大丈夫。これくらいなら耐えられる。自分にそう言い聞かせて、脱線した電車のところに向かう。

 1号車のところで男は、子どもを抱いて泣いていた。脱線したときのせいでもう血が完璧に抜けてしまったかというレベルで、しかも骨も粉々で、ほぼ皮と同じような状態の子どもを抱いて。
男の傷も大したものだというのに。きっと、そんなに連続ですべてのものを回避するなり、自分を気体に変えたりといった安全策が取りきれなかったのだ。

 ぼくは左足からトクトクと漏れている灯油を男にかける。こうすることで、気体になって回避されるのを防ぐことができる。しかし、もう戦意を失ったのか、何の行動も移さずに泣いている。先ほどまでの性格、言動、行動力、冷静さが嘘のようだ。本当の姿はもしかしたら、今の泣いている姿なのかもしれない。
ぼくは泣いている男を背中側から、ナイフで一突きにして殺した。あまりのあっけなさだったが、相手が抵抗しなかったのが悪い。


 そうして、イベント2日目は唐突に終わった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました

四折 柊
恋愛
 子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...