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第三章
小さな星屑 第十二話
しおりを挟む純がメンバーになって、数日が経った。蒼太と真矢は授業が終わると、今日も屋上で練習しながらフォーメーションを考えていた。
「ん~やっぱり見栄え的にも、あと二人は欲しいねんなぁ」
真矢は座り込みながら腕を組み頭を悩ませていた。
「二人か……全然思いつかない」
蒼太も同じように座り込んで腕を組みながら頭を悩ませる。
「まぁ、今ここで悩んでてもしゃあないし、純が来るまでとにかく練習や」
二人は立ち上がり練習を再開した。
蒼太と真矢が練習している頃、純は職員室から自分のクラスに戻っている最中だった。
「先生に質問してたら、遅くなっちゃったなぁ。急がないと」
純は教室に着くと、机の中に入っていた教科書を急いでカバンの中に詰め込んだ。すると、不意に後ろから眼鏡をかけた男子生徒に声をかけられた。
「余裕だな、早乙女」
「……風間君。何の用?」
純が振り返るとクラスメイトの風間鉄平(かざま てっぺい)が、足を組みながら本を読んでいた。
鉄平はいつも一人で行動していて、授業中も教科書を開かずに自分の興味のある本を読むような自己中心的な性格の持ち主だった。にも関わらず、テストの成績は常に上位で、純以外には成績で負けたことがない。
『必死に授業を受けて、こんなテストも出来ないとはお前たちはどれだけ頭が悪んいんだ』と、いつも周りを見下している。そんな鉄平のことが、純は昔からあまり好きではなかった。
「もうじきテストだというのに遊んでいる暇があるとはな。せいぜい俺に成績で抜かれないようにするんだな」
「ご忠告ありがとう。風間君の心配には及ばないから」
純は少し意地悪そうに言うと教室から出ていった。すると、純とすれ違うように一人の生徒が教室に入ってきた。
「『風間君の心配には及ばないから』だってよ。鉄平言われてやんの」
教室に入ってきたのは、眼鏡はかけていないが鉄平と同じ顔をした男子生徒だった。
「何の用だ、心平。お前と居るとロクなことが起きないから、さっさと出て行ってくれ」
「おいおい、唯一無二の弟に向かって出て行けは酷いだろう」
鉄平の双子の弟の風間心平(かざま しんぺい)が両手を広げて近づいてきた。
「酷いだと。お前と顔が同じせいで訳のわからん奴に、お前と勘違いされて喧嘩を売られるのだぞ」
鉄平と違い心平は他人とよく一緒に行動している。運動神経も良く、人当たりも良い。
だがその人当たりの良さとは裏腹に、実際は広い人脈で集めた様々な情報で人と人の間にトラブルを起こして、それを楽しんでいるのだった。たまに仕返しに来る奴には、持ち前の運動神経の良さで必ず逃げ切る。そんなことを繰り返していた。
「どいつもこいつも面白そうだから、ちょっとからかってるだけなんだけどなぁ」
「そういう無計画な奴が、俺は一番嫌いなのだよ。さっさと帰れ」
「ハイハイ、分かりましたよ。ちょっと小耳に挟んだことを伝えにきただけだから、すぐ帰りますよ。明日から宍戸がまた学校来るってさ」
心平はめんどくさそうに右手で振り払う仕草をしながら鉄平に報告した。
「そんなことか。全く宍戸のやつは何度自宅謹慎をくらえば気が済むのだよ。俺には関係のないことだ」
鉄平は興味なさそうに再び本を読み始めた。
「あっそ、じゃあな」
心平は満足したのか、報告を終えるとそそくさと教室から出ていった。
「それにしてもダンスねぇ……」
廊下を歩きながら呟く心平の顔には怪しい笑みが浮かんでいた。
純は急いで屋上に向かうために廊下を走っていた。
「二人とも待ってるよね。急がなきゃ……うわぁ‼︎」
勢いよく走っていたせいで急には止まれず、横から飛び出してきた誰かにぶつかってしまった。が、転んだのは純だけで相手の方はびくともしていなかった。
「すまん、見えてなかった」
ぶつかられた生徒はゆっくりと手を差し伸べた。
「い、いえ、すみませんでした。こちらの方こそ不注意でした」
純は差し出された手に捕まると立ち上がった。
「そうか」
お互いに無事なことを確認すると、相手はそのまま行ってしまった。
「今の人、大きい身体してたなぁ」
純が感じたように、ぶつかった生徒は純よりも遥かに背が高くて体格も良く、見るからに丈夫そうな体つきだった。
呆気に取られていた純だったが蒼太たちが屋上で待っていることを思い出し、再び屋上へと急いだ。
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