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第三章:学園生活開始!
前科ゆえに起きた事~助けて神様……ってマジですか?!~
しおりを挟む「ダンテ様、クレメンテ殿下が――」
「ああ、分かった」
訪問予定時刻より少し早いが、きてくれたようだ。
ちなみに、エリアは部屋にこもっている。
流石に王族の会話に入り込むつもりはないし、元々今日クレメンテが訪問する予定が先に入ってたのもどうやらフィレンツォに知らされていたらしく、大人しく部屋で学校の教材の本を読んでいる最中だ。
玄関へと向かい、フィレンツォが扉を開けた。
「ようこそ、クレメンテ・アウトゥンノ殿下。私はダンテ・インヴェルノ。お忙しい中御来訪くださり、ありがとうございます」
私はそう言って、頭を下げる。
フィレンツォも、頭を下げている。
私が顔を上げると、予想はしていたが、実物を見るとやはり心が酷く重くなるな、という光景が目に入った。
栗色の柔らかそうな長い髪に、同じ色の目、前世的に言えばアジア系の肌と欧州系の肌の色を混ぜたような色の肌、整った中性的な顔立ち。
綺麗で、物静かに見える表情なのに、目に「光」がない。
服装も、王族が着る服としてはあまりにも質素だった。
身分を隠す時に着る位の服だ。
傍にいるメイドも、何処か重い表情をしている。
「……ダンテ殿下。お招きいただきありがとうございます……」
クレメンテはそう言って頭を下げ、メイドも頭を下げた。
メイドの所作から、城で働いていたであろうメイドなのは分かった。
「――さぁ、中へどうぞ」
「……はい、お心遣い、感謝いたします」
物静かな彼の声が、私には酷く悲しい物に聞こえた。
「どうぞ、おかけになってください」
私がクレメンテに先に座る様に促すと、彼は困ったような雰囲気を出して、座ろうとしない。
「どうか、致しましたか?」
「そ、その……インヴェルノ王国次期国王であるダンテ殿下より、先に座るというのは……とても失礼だと思いましたので……」
何となく予想はしていたが、これは重傷だな、と再確認。
「――ダンテ殿下」
フィレンツォが私を呼びその雰囲気で察する。
この場合、無理に先に座らせるのを勧めるのは良くないと判断。
なので、私が先に腰を掛ける。
「クレメンテ殿下、どうぞお掛けになってください」
そう言うと、漸く彼はソファーに腰を掛けてくれた。
「まだこちらに来て落ち着いていない時に連絡してしまい、」
「いえ……ダンテ殿下からのお誘いをお断りするのは無礼な行いですから……」
「……」
何と言うか、自分を卑下しすぎている。
前世の記憶に残っているゲームの中でのクレメンテとのやり取りは此処迄自分を卑下することが酷かった記憶はないので、一体どういうことなのかさっぱりわからない。
確かに、クレメンテは自己肯定能力が低い。
理由は簡単「両親に愛されなかった、ぞんざいに扱われた」という理由からである。
この世界では性別は出産時までは明かされない。
透視術――まぁ、前世的に言えばエコーなどによる出産前の検診で順調に育成されているかは確認されるが、性別は明かされない。
前科があるからだ。
この世界では昔、男か女か分かると、前世的に言うと堕胎させられる事が多かったという。
特に、第一子が「健康的な」男子だった場合、第二子以降の男子が堕胎させられる事が非常に多かったそうだ。
もちろん逆もある、女子ばかり生まれるので――という事も多い。
それがあったのは、プリマヴェーラ王国。
その王は伴侶――この場合后達と、子どもを設けたが、女子ばかり生まれ、女神プリマヴェーラの祝福を持つ子も産まれず。
その結果、ある時生まれてくる子が女だった場合は堕胎させるようになった。
そしてそれを決めた最初の女の子である胎児を堕胎させてから――ずっと女の赤子しか后達は腹に宿らさなくなったそうだ。
王の祝福の証がほぼ薄れてしまう頃、漸く男児の赤子を一人の后が宿し、産まれてきた。
その子は祝福された子だった。
悲壮感に包まれた国は大いに活気づいた。
だが、その子は父親である王にも、母親である后にも懐かなかった。
それでも、何とか乳母をつけて養育させた。
その子が七つになった時、祝いの席でその子はこういった。
『父である愚王よ、お前が初めてに生まれる前に殺した赤子が私です。お前は祝福された私を殺したから、心が変わらないなら私は生まれないと決めていました。ですが、お前があまりにも変わらず、このままでは国が亡びる為、わざわざ男の体で産まれました』
その言葉に、祝いの席は凍り付いた。
その子は続ける。
『お前の証はただ、色が残るのみ。印は既に消え失せ、王たる資格は無い。故に玉座から退くがよい!! 貴様に早々に退位させられた前国王――我が祖母を呼び戻すがよい!!』
その子の言う通り、王にあるはずの女神の祝福の印の痕は、消えていた。
子の言う通り、王は王である権利を失ったのだ。
母である后や、同じく后である女達にもその子――その王子はこう言った。
『貴方達は何も疑問に思わなかったのか? それとも王に愛されなくなるのが怖いから口出しできなかったのか? どちらであろうと、貴方達が望んで作った命を殺したのは貴方達だ。強姦などで宿ったならともかく、貴方達は自分達で作ってそして命を選別したのだ、性別だけで。その意味をよく反省するといい』
王は退位させられ、前国王が、王子が次の国王になるまで国を支えるとなった。
その事から、国王たちは話合い、産まれてくる赤子の性別を教える事をしないようになったそうだ。
前世的に言う避妊に関してはその時進んでいたので、前世である「口減らし」という類のものは無かったらしいが、胎児を性別で選別して殺すというのはあったらしい。
胎児の状態の透視術は当時は前世的にはエコー的なレベルだったので、証持ちかどうかを判別することは困難。
そんな事もあって、前世では妊娠検診の時にある「男の子みたいですね」「女の子みたいですね」という事がないのだ。
もしその件がなかったら堕胎されて、クレメンテは此処にいることはなかったのは想像できる。
色んな意味で頭が痛い。
――アウトゥンノの現国王基……クレメンテの産んだだけの連中は、どういう思考してやがるんだ?!――
――子どもはテメェらの都合のいい道具じゃないんだぞ!!――
『「産んだだけの連中」と言ってる所で「親」と認めたくないのが丸わかりだな本当。』
――当たり前だ!!――
『そしてどういうべきか悩んだのも沈黙で分かるな、いやはや所謂「毒親」を持つと子は苦労するなぁ』
――他人事みたいですね――
『いや、そうでもないのだが……まぁ、それはそれ。で、お前はどうしたい?』
――う゛ー……クレメンテの方も何とかしたいけど、エリアの件もあるし、どうしたらいいんだろうってなってる……今――
正直な所、優先順位をつけたくないし、つけれないのだ。
エリアの「元家族」と、クレメンテの「親」に地獄を見せてやりたいのは変わらないのだが、どっちをどうすればいいのか分からない。
母とエドガルドに報告するのも手なのだが、多分あっちにもクレメンテの兄と姉達から連絡が行っている気はしなくもない。
――今のエリアは現在私の「客人」という立場にあるから「親兄弟」や虐げていた連中もうかつに手出しはできない、クレメンテは諸悪の根源である「親」と離れているから逆にどうとでもいえる可能性はあるが……――
悩み、ぐるぐると考え込む。
この時間基空間があるのはゆっくり考えられるからありがたいのだが、逆にこれがないと色々と大変な状態でもあるという事は理解している。
流石に、仮にも王族であるクレメンテを私の『客人』にはできない。
だが、放置するのは不味い。
その上出会いから、既に前世の知識が使えない状態にある。
全てではないが、私が知っている状態とは違う点が多すぎるのだ。
――頭痛が痛い――
『お前がそう言うとは相当だな』
――その通りですよ、本当それ位頭が痛い、悩みすぎてしんどい!!――
『重症だな』
――なのでへるぷみー……――
悩みすぎて、思考停止状態の私は神様に助けを求める。
『悩みすぎると思考が停止するのは仕方ないことだし、お前は日々頑張っているし、我慢しすぎているから、助けを求めるようになってる時点で良しとしよう』
何かさりげなく私の事をディスられている気がしなくもない。
『別に悪くは言っておらん。そうさな、簡単に言えるがちょっと面倒だ、やれるか?』
――なにをですかかみさま?――
『……不安だな、まぁ口を出せばいいだけか』
『そうだなゲーム的に言うなら、エリアとクレメンテ両方同時攻略しろ、残り二人も出てきたら同様に攻略対象に入れて全員まとめて攻略しろ』
――……はぁ?!?!――
神様からの言葉に私はすっとんきょうな声を上げるしかなかった。
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