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第三章:学園生活開始!
願いと信頼~お前が執事で良かったよ~
しおりを挟む「――ふぅ……」
何とか返事の手紙を書くことができた。
一応見直して、神様に言われた事もちゃんと書いてるか確認する。
エドガルド以外には読めないように最後の一枚だけは術をかけて置く。
「――よし」
便箋を全部封筒に入れて、封蝋をして印璽を押す。
「……明日にでもフィレンツォに渡せばいいかな?」
『今すぐ渡して、頼んでおけ』
――アッハイ――
またまた神様の言葉がやってきた。
なので私は早速手紙を手に、フィレンツォが居るであろうキッチンへと向かう。
予想通り、キッチンにいた。
見た感じ準備は終わっているようだ。
「フィレンツォ」
「――ダンテ様、どうなされましたか?」
「これを国にいる兄上に送りたいんだけども……」
そう言って手紙を見せる。
フィレンツォは手紙を受け取る。
「――畏まりました、では今で出して来ますね」
「王家直属の配達所はやってるけど……いいのかい?」
「急ぎなのでしょう?」
「いや、急ぎではないけれども……でも、できれば早く兄上に届いてほしいな……」
「分かりました」
私の言葉にフィレンツォは何処か安心したように微笑む。
そして手紙を持ってキッチンを後にした。
ちゃんと火とかの始末している当たり本当優秀だなぁと思う。
――前世で、火つけっぱで大惨事はよくある話だからなぁ――
と、前世を思い返していると足音がした。
ノックする音がするが、玄関ではない。
「……」
場所的に私の部屋から聞こえるので私は部屋に戻ることにした。
「――エリア、どうしたんですか?」
「?!」
私の部屋の扉の前で何処か落ち込んだ表情でうつむいているエリアに声をかければ、エリアは体をびくっと跳ねさせて、こちらを向いた。
「だ、ダンテ、殿下……その、えっと」
困惑した表情で、視線をさ迷わせる彼を見る。
「その、その……大した、用事、では、ない、の……です、けど……」
「構いませんよ、此処では何でしょう、私の部屋へ」
「え? そ、そんな失礼な――」
「気になさらないでください、エリア。どうぞ」
少し強引な気もするが、彼を部屋の中に案内する。
まぁ、向こうから必要な物と、此処での必要な物とかで、城の本来の自室よりも物が少ないので、私の部屋とはまだ言い難い。
四年間の間に、思い出がたくさん詰まった部屋になってくれれないいなと、一人思う。
彼の部屋も、そうなって欲しいと思った。
部屋に案内し、誰か来た時用に置いてある椅子にエリアを座らせ、私は机の傍の椅子に腰を掛ける。
「どういたしましたか? 何か困った事でもございましたか?」
「いえ……その……怖い、のです」
「怖い?」
エリアの言葉の意味を探る。
怖いと感じられる事はいくらでもあるし、まだ私への恐怖もあるだろう。
さて、どれなのかと聞くか迷っていると――
「……にい……兄達の仕返しが、こわい、のです」
「……」
エリアの言葉に私はどう答えるべきかと、悩み始めた。
予想できないわけではないが、どんな罰があの馬鹿共に下されるかは全く想像できない。
憶測で答えるのは問題だ。
「そ、それに……」
「それに?」
「ぼ、僕の、せ、せいで、カリオおじ様が……」
「……もしかして、ヴィオラ家の執事の方ですか?」
私の問いに、エリアはこくりと頷いた。
――ああ、つまり、密告者である執事はカリオという人か……――
――エリアが「おじ様」と呼んでいるという事は、おそらくヴィオラ家で唯一安心できる存在だったんだろうな……――
『正解だ』
――神様?!――
『ただ出てきただけだ、気にするな。とりあえずエリアの話は聞いてやれ、ちゃんとな、そして引き出し、不安を解消してやれ』
――了解しましたよ!――
神様の声にびびったが、それはエリアが知ることはないことなのでまぁ良し。
「……カリオおじ様は、僕の、お世話をしてくださりました、僕の事を、かばって……僕を、りゅ、留学、させて、くれた、のもカリオおじ、様なんです……きっと留学先なら、兄、達も、おとなしい、だろう、からと……でも……」
――成程、エリアの「兄」は馬鹿だったと!!――
「カリオおじ様だけ、なんです、僕のことを、大事に、して、くれたのは……だから、やめさせられたく、なく、て……」
「……」
エリアの言葉に、色々と予想ができた。
おそらく、カリオという執事はエリアの身を守るために口を閉ざすしかなかった。
そしてエリアは自分を唯一大切にしてくれる「カリオおじ様」を辞めさせられるのが怖くて「親」と「兄」達に逆らえず、男の相手を無理やりさせられたり、暴力を受けたのだろう。
カリオさんが、見ていない所で。
それに気づいたが、守る方法が思いつかなかったからこそ、留学という手段でエリアを実家から離れさせ安全圏に置き、自分は罰を受ける覚悟で現在のヴィオラ伯爵家の悪事の知り得る限りを密告した、と。
――そこまではエリアは知らないだろう――
『うむ、それは当たっている』
――当たってましたかー……なら、フィレンツォはエリアに何を話したんだろう?――
『それは今は聞くな、以上』
――はいはい、分かりましたよ!!――
『まぁ、それよりもエリアの話をちゃんと聞いてやれ』
――はい、分かってますとも――
神様に「呼ばれた状態から戻って」きたので私はエリアを見つめる。
エリアは必死な表情で、私を見ている。
「お、お願いです!! ダンテ殿下、カリオおじ様が酷いことにならないようにしてください、その為だったら僕は――」
自分の服に手をかけたエリアに近づき手をそっと掴む。
「エリア」
私はそう言って首を横に振って微笑む。
「そんなことをする必要はありません」
「で、でも――」
「エリア、私は貴方が大切なのです、そして貴方がその方をどれほど心配しているかも理解しました」
手を下ろさせ、頬を撫でる。
「分かりました。私の方でも何とかできないかやってみましょう」
「ほ、ほんとう、ですか?」
「ええ、勿論です。約束いたしましょう、私の名に誓って。インヴェルノ王家に誓って」
私はそう言ってから、エリアの両手を包む様に握る。
「だから、お願いですエリア。先ほどのような行為はしないでください。貴方は、好きでもない輩とそういう行為をするように強いられていたからこそ、自分の体をこれからは大事にして欲しいのです」
「で、でも……僕は、これ、以外……」
「それはこれから覚えていきましょう、だから自分を大切にしてくださいエリア。私は貴方が大切なのですから」
「……はい」
私の言葉に、エリアは少し嬉しそうに笑みを浮かべて頷いた。
フィレンツォが戻って来て、食事をとり終えるとエリアは部屋で少し休みたいと言ってきたので「許可を取らなくてもいいですよ。でも無理はせず、不調の時は教えて下さい」と返して部屋に戻るのを見送った。
部屋に入ったのを確認し、片づけを終えたフィレンツォを呼ぶ。
「フィレンツォ」
「何でしょうか、ダンテ様」
手招きし、近づいてもらって小声で話す。
「エリアから頼みがあった」
「どのような?」
「ヴィオラ伯爵家の執事の『カリオ』という人物が酷い扱いにならないようにと、な」
「カリオ……なるほど、そういう事ですか」
「諜報部にヴィオラ家の内情を密告した執事、違うか?」
「その通りです」
フィレンツォの言葉に私は付け加えた。
「まぁ、そういう事だ。エリアは彼の身を案じている為に不安定になっている、だから私は彼を安心させたい。彼の処遇について、エリアが傷つかないようにしてもらえるようにできないかな?」
「ダンテ様はそれを御求めで?」
「勿論、エリアがそれを望むから。それにカリオさんだっけか? 彼は十分苦しんでいる、大切な友人の娘さんと娘さんの産んだ子を守れなかったという事にね。それに許されたことも、彼をきっと『苦しめる』なら、十分罰になるだろう?」
納得させるように私は言う、冷酷な言い方をしている自信はある。
「……やれやれ、ダンテ様は相変わらず口は達者なのに、そう言った事柄に関しては嘘が下手くそですね」
でも、フィレンツォには見抜かれていた。
「分かりました、ではそのようにお伝えいたしましょう。私もエリア様が傷つくのはあまり見たくありません」
「ありがとう、フィレンツォ」
「当然です私はダンテ様の執事なのですから」
誇らしげに笑うフィレンツォに、私は笑みを返す。
――お前が私の執事で、本当に良かった――
心からそう思う程、フィレンツォは信頼できるのだ、出会ったあの日から、ずっと――
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