67 / 120
第四章:ちょっと波乱すぎない?!
甘える「友人」~自己管理できず自己嫌悪~
しおりを挟む夕食を取る時間の少し前に、クレメンテは目を覚ました。
「クレメンテ殿下、お目覚めになりましたか?」
寝起きのまだおねむ状態な表情で、私を見上げる。
「……」
「クレメンテ殿下?」
「……ずるいです」
「はい?」
クレメンテの言っている意味が分からず、変な「はい?」という声を出した途端首の後ろに手を回されて――まぁ、抱き着かれた。
「で、殿下?」
「私も、彼のように呼んで欲しいです」
「か、彼?」
「……貴方の『客人』であるエリアのように」
「いや、そのしかし――」
「……私の事を『友』と言ってくださったのでしょう? なら……どうか……」
懇願するような声。
私は心の中でため息をつく。
――これは私の負けだな――
「分かりました、クレメンテ。ならば貴方も私の事を『ダンテ』と呼んではいただけないでしょうか?」
「……はい、ダンテ」
嬉しそうな声に聞こえた。
「……ダンテさ――……ダンテ殿下、クレメンテ殿下何をなさっているので?」
何処か冷めたフィレンツォの声が聞こえた、視線が痛い。
「クレメンテが起きた途端抱き着いてきたので私は何もしてませんよ?」
「……寝ぼけて抱き着いたようです、すみません……抱き心地が良くて……」
「フィレンツォ、私は今から食事制限するべきでしょうか?」
クレメンテのごまかしの言葉に、私は真顔になってフィレンツォにたずねる。
「ご安心ください、ダンテ殿下。ダンテ殿下は健康的ですので食事制限をする必要はありませんから。運動量も極度に増やす必要もありません」
「本当ですか?」
フィレンツォの言葉を疑う。
「……すみません、少しおさわりして宜しいでしょうか?」
フィレンツォも何か自信がちょっと無くなったのか私に近づいてきた。
「構わないですよ」
「では」
触られる感触、何か皮引っ張られている感じがしてちと痛い。
「……ダンテ殿下」
「ど、どうしたのですフィレンツォ……」
「残りの講義は三つ、休日まで三日、ですので一日一つの講義で終わらせて下さい。ダンテ殿下の肌が、荒れていらっしゃいます」
「へ?」
「申し訳ございません、クレメンテ殿下」
フィレンツォはそう言ってクレメンテと私を離すと、私の手首を掴んで部屋へと連行していった。
部屋で二人きりになると座らせられ、顔を両手で軽く叩くように包まれた。
「何で我慢してるんですか?!?!」
「え、えー?! フィレンツォ、私は特に我慢してないぞ?!」
「ダンテ様は、我慢をするとすぐ体調に現れますからね!! しかもダンテ様自身は無自覚ですから質が悪いのです!!」
フィレンツォは噛みつくように私を叱る。
「他の方の前だから肌が荒れているで済ませましたが、かなり体調崩しておりますよ?! 今のままだとおそらく「完全な休日」になった途端に噴き出て倒れるのが目に見えている程です!!」
フィレンツォの言葉に反論できない。
事実なのだ。
前世からの悪癖や悪い体質はそう簡単には治ることはない。
私は我慢をし続ける癖がある。
安全圏で翌日が何もない日という条件を満たしていない限り、知らぬ人物は皆私が元気に活動していると思っている。
まぁ、実際は無理をしているので、先ほどの条件を満たした途端私は倒れて死んだように眠り続けたり、それまで抑えていた不調が一気に出て苦しむ等よくあった。
前世ではソレのおかげで苦労した。
小学生の頃にはもう出来てたので、今も治らずにいる。
今は大体フィレンツォが不調なのを察して、休憩させてくれるから助かる。
甘えているのは分かるのだが、ずっと治せなかった癖を治すのは大変なのだ。
これでも少しは善処してるつもりなのだけども……知っている人であるフィレンツォからすると「全然駄目」という感じなのだろう。
「ダンテ様、もう少し御身を大事にしてください」
「いや、大事にはしてる……つもり、なんだけど、なぁ……」
しているつもりだけど、うまくいかない。
虚弱体質ではない、寧ろ前世よりも健康的だ。
でも、健康であっても、無理をすれば倒れるのは知っている。
エナジードリンクと言った類のモノをがぶ飲みして、健康の前借をして健康だった体を壊すなんて、前世では良く聞いた話だ。
その結果死ぬという最悪の事態もある。
「念のため、お体に負担をかけず、栄養価のある食事を作っておいて正解でした。ダンテ様は無理をなさらないように」
「ああ、うん」
「ただでさえ貴方様は――……」
フィレンツォが何か言おうとしたが最後まで言わなかった。
「フィレンツォ?」
「いえ、何でもございません。ともかく、無理をなさらないように!」
「わ、わかった……そう、するよ……」
「……此処は城ではないのです、ですから執事である私を今は頼ってください。ダンテ様は無理をなさるんですから……」
「……ごめん、フィレンツォ……」
城なら母国なら、どうにでもできる。
でも、此処は違う場所なのだ、違う環境なのだ。
「少しお休みを……」
「分かった……そうする」
私は椅子から立ち上がり、ベッドに横になる。
横になった途端、どっと疲れが出てきた。
本当、質が悪い。
――こんなんで本当に大丈夫なのか?――
瞼が重くて、私はそのまま目を閉じた。
目を覚ますと大体11時ちょっと前。
「……寝すぎたか」
ため息をついて二度寝をしようと思ったが、空腹感を我慢はできず台所に向かうことにした。
――まぁ、軽食か何か残してくれてるだろう――
――なかったら作ればいいか、怒られそうだけどしかたない――
そう思いながら向かう途中、食堂に灯りがついていた。
「ダンテ様、お待ちしておりましたよ」
食堂から声が聞こえた。
私は食堂へと向かう。
フィレンツォが居た。
「フィレンツォ」
「何年貴方の執事をしていると思っているのですか、座って待っていてください。すぐ持ってきますので」
フィレンツォに言われるままに私は椅子に腰を掛けた。
そしてすぐ、胃に優しそうな料理が出された。
ハーブと香辛料、それに柔らかく煮込まれた鶏肉が入ったお粥のような料理――ポリァジャだっけか確か。
それと、とろりとした少し甘い飲み物、甘酒の様な栄養価があるけど、甘酒よりも飲みやすい。
名前は甘雪茶。
――前々から思ってるけど、料理名とかお茶とか妙な所で日本系とカタカナ系混じってるよなこの世界、おかしいの――
まぁ、そこらへんはいいか。
器と、カップに触ると、熱すぎない温度なのが分かる。
スプーンを手に持ち、口につける。
「美味しい……ああ、フィレンツォ。お前の料理はいつも美味しいよ」
「有難うございます」
「……そしていつもすまない、自己管理が全くできない主人で」
申し訳なくなる。
なおらない、なおせない、できないのだ。
知らぬ間に無理を重ねすぎてた所為か、いまだに自分の「限界」を理解できないのが辛い。
精神的にも肉体的にも、未だに自己管理ができないのだ。
断るという事に関しては何とかできるようになったが、こういう自分の「限界」を理解せずに、無理をしてしまうのはどうにもできない。
自分で管理も認知も知覚もできないのだ、今も。
――嫌になる――
「ダンテ様」
フィレンツォが穏やかな表情を浮かべて私を呼ぶ、執事と言うよりも「親」の顔をしている。
「ダンテ様がどうして精神的、あるいは肉体的な限度を超えてまで無理をしても気づかないのは今も私には分かりません、だからこそ、私は少しでもそれが良くなるようお仕えします」
「フィレンツォ……」
「きっとこの四年間の間に、ダンテ様に良いことが起きると私は思っております、きっと無理をしすぎるのも改善されるはずです」
優しく言うフィレンツォの言葉に私はどう返せばいいか分からなかった。
――私は変われるのかな……――
そう思う事しかできなかった。
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった
水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。
そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。
ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。
フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。
ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!?
無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される
水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。
行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。
「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた!
聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。
「君は俺の宝だ」
冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。
これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる