ハッピーエンド=ハーレムエンド?!~TS転生でへたれ攻めだけど幸せにしてみせる!~

琴葉悠

文字の大きさ
89 / 120
第五章:結ばれた縁と謎

面倒な奴に絡まれたよ!!(それが重要なのだが、言えないfrom神様)

しおりを挟む



 朝――

「だから何でいつもそういう状態になるんですかね?」

 呆れ顔のフィレンツォの視線をちくちくと感じながら、私は起き上がって息を吐く。
 寝間着姿の私の隣には、寝間着姿ですやすやと今も眠っているクレメンテが眠っていた。

「仕方ないだろう? クレメンテ殿下の情緒が不安定どころじゃなかったんだから」
「それは分かります」
「だろう? それと添い寝だけだよ、私はそれ以上の事はしてない、誓って言おう」
「インヴェルノ王家の名に誓って?」
「勿論だとも」
 私のその言葉に、フィレンツォは重くもどこか呆れたようなため息をついた。
 その時何か呟いたような気がしたが、よく聞き取れなかった。


『お前は聞き取らなくていい』
――えー!?――

 神様からの言葉が聞こえた。
 でも、それで何となく分かった。
 きっと今の言葉は、私が知らない方がいいのだろうと。

『その通りだ、お前の性格的に知らない方がいい』

 何処か不穏な発言だが、仕方ないと私は諦めた。


「今日からまた講義か……」
 そう呟いて時計を見ると、少しだけ早い時間帯だった。
「食事の準備は既にできております、講義の用意の方も、ですからクレメンテ殿下とエリア様を起こしていただけませんか?」
「ああ、分かった」
 フィレンツォが起こすように言った理由を何となく察する。

 フィレンツォが居なくなり、部屋の扉が閉じられているのを確認するとクレメンテを軽く揺する。
「クレメンテ、起きてください。今日からまた講義ですよ」
「ん……」
 もぞもぞと動いてから、クレメンテはまつげを震わせながら目を開き、栗色の目でこちらを見た。
「ダンテ……ああ、そういえば今日から……また、講義でしたね」
「ええ、そうですよ。着替えて準備をしましょう。エリアも起こさなければなりませんし」
「あの、ダンテ。一つお願いが」
 私の腕をクレメンテが掴んでそう言った。
「何でしょうか?」
「次の休み、エリアと一緒に寝てあげて欲しいのです。私はそういう事を頼むと約束した上でダンテの所に来たんです」
「……はい?」
 寝耳に水である。

――どういうこっちゃ?――

「……エリアも、夜誰かに抱きしめて涙を流して眠りたいこともあるのです」
「――わかりました、では次の休みに」
 私がそう答えると、クレメンテは安心した様に
「ありがとう、ダンテ」
「いえ、エリアを気にかけてくださりありがとうございます」




 その後、エリアを起こしに行き朝食を取り終えると、ブリジッタさんが後片付けをしてくれた。
 フィレンツォは何処だろうと思っていると、アルバートとカルミネの二人を迎えに行っていたらしく、二人が屋敷に招かれた。
 まだ、両家のごたごたが落ち着いてない中何かあったらより私の負担になるので二人も私――というかフィレンツォの監視下に入ることになった。
 若干不本意そうなフィレンツォに、私は噴き出して笑いそうになるのを堪える羽目になったが。




 講義は、あの厄介な男ベネデットが必ず同じ講義に出てくる上に、私やアルバート、カルミネと競うように……正直面倒な対抗心を燃やして色々やってくるので面倒だった。
 まぁ、神様の言う通り鼻っ柱へし折ってやったけども。

 高すぎる自尊心プライドというものを持つのは厄介なことだとつくづく思った。

――でも五日間も続けばこっちが嫌になる!!――
――ストーカーと前世じゃ呼ばれても仕方ないレベルだぞコレ!!――
――この三週間わざわざ私が居る時に出るとか正気かテメェ!!――

 と、私のストレスが溜まった。
 なので、休日朝食を取り終えると速攻で施設へと向かった。


 懐かしい音ゲーやら、格ゲーやら色々やり込んで遊びつくして、サイダーやアイスを食べてストレスを発散した。

「あのクソ野郎なんなんだー!! いい加減にしろー!!」

 と叫びながら。

 ひとしきり遊び終えると、私は施設を出た。
 フィレンツォが待っており、私の顔を見て安堵の表情を浮かべた。
「この施設を紹介してよかったと心から思ってます」
「……そんなに顔に出てたかい?」
「ええ、クレメンテ殿下やエリア様達はまだですが、長い付き合いの私にははっきり分かる程」
「むぅ」
 フィレンツォが分かるという事は、母とエドガルドも分かるという事だ。
 エドガルドにそんな顔を見られたら、あの男ベネデットがどうなるか分からない。
 いや正直どうなろうと構わないが、婚約者さんが可哀そうなので。

 ちらりと前世でやってた時ゲーム中も登場したが、とても優しい女性だった。

――んー今はどうなのかわからないけどもね、実際あった事がないし――

 そんな事を考えつつ、私は帰路についた。




 屋敷に戻ると、居間のソファにゆっくりと腰を掛けて、少し姿勢を崩して座る。
 目の前のテーブルに置かれたミルクと砂糖入りの紅葉茶を飲みながら一息つく。

 ストレス発散できたが、体力を消費したのがまだ残っているのでゆっくりと休む。
「……」
 甘い紅葉茶を口にしながら、一人考える。
「ダンテ様、どうなさいましたか?」
 フィレンツォが茶菓子を目の前にそっと用意しながら私にたずねる。
「アナベル家とシネン家の事だよ。正直考えたくない。カリーナ陛下も何を考えているんだ、こんな若造に」
 そうぼやいてクッキーを齧る。

 さくっと音をたてて優しい甘さのそれに、舌鼓を打つ。

「美味いね」
「昨晩から準備しておりましたから」
「いつもすまないな」
「いえ」
 フィレンツォがそう言ってから、私は一人考える。

――若造……前世足すと若造じゃ……いや待て、王族はかなり長寿で老化現象も遅い……やっぱり私はこの世界では若造?――

 などと、先ほどの自分の発言を振り返る。
 前世の事など知ってるのは神様と私だけなので、ここでは18歳の若造。
 そう、まだ大人にもなれてない存在。

――それに色々問題ふっかけてくる陛下達なんなん!?!?――

 ぐいっと白茶色の液体を飲み干して、カップを置く。
「――次から次へと私へ問題を押し付ける陛下達には参るよ。父上もそうだったし」
「まぁ、あれはジェラルド陛下も悪いですが、断ることをしなかったダンテ様もかなり悪いと思います」
「それはな。でも、ヴァレンテ陛下とカリーナ陛下はどうなんだ? ヴァレンテ陛下は何とか向こうに返したけど、カリーナ陛下から投げられた件はまだ解決の『か』の字も出てないじゃないか」
 私は若干自棄になって言う。
「ご安心を。私は『か』の字は出ておりますし、そろそろ『い』の字も出る頃合いだと思っております」
「ああもう、お前は!!」
 フィレンツォの言葉に頭を抱える。

――軽く言ってくれるな、本当!!――

 まだ、両家の情報を軽く知ってる位しかないのにどうすればそうなるのか知りたい。
「話が変わりますが、エリア様の件で」
「どうだ?」
「はい、ヴァレンテ陛下が少しだけ手直ししただけでほぼそれで通りました。ただ、カリオ・マニョーリャ殿への処遇で少し問題が」
「何だ?」
 悪いことが起きたなら、エリアとの約束を反することになるので、私は身構える。
「ええ、どうやら現在身の安全を完全に確保できない為、エリア様が卒業するまではお会いすることは少々難しいかもしれないと」
「なるほど……結構厄介だな」
「それだけ多かったのです、仕方ありません」
「プリマヴェーラ王国は四国家の中で国民数が一番多いからな、貴族の数もその分、多い。本当面倒だろうなぁ」
 他人事ではないのだが、他人事でもあるので私は呆れたように言う。
 ちなみに、国民の数が一番少ないのがインヴェルノ王国、つまり祖国だ。




 プリマヴェーラ王国は春、エステータ王国は夏、アウトゥンノ王国は秋、インヴェルノ王国は冬をイメージして前世では設定されている。
 なので春夏秋冬の順に国民数が多いが、一番偉いのは逆に冬で他三つは同列扱いになっている。
 そこらへんは神話と関わる。


――それにしても変わった神話だよな――


 私は、前世で、そして今世で語られた神話を一人思い出した――





しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

【土壌改良】スキルで追放された俺、辺境で奇跡の野菜を作ってたら、聖剣の呪いに苦しむ伝説の英雄がやってきて胃袋と心を掴んでしまった

水凪しおん
BL
戦闘にも魔法にも役立たない【土壌改良】スキルを授かった伯爵家三男のフィンは、実家から追放され、痩せ果てた辺境の地へと送られる。しかし、彼は全くめげていなかった。「美味しい野菜が育てばそれでいいや」と、のんびり畑を耕し始める。 そんな彼の作る野菜は、文献にしか存在しない幻の品種だったり、食べた者の体調を回復させたりと、とんでもない奇跡の作物だった。 ある嵐の夜、フィンは一人の男と出会う。彼の名はアッシュ。魔王を倒した伝説の英雄だが、聖剣の呪いに蝕まれ、死を待つ身だった。 フィンの作る野菜スープを口にし、初めて呪いの痛みから解放されたアッシュは、フィンに宣言する。「君の作る野菜が毎日食べたい。……夫もできる」と。 ハズレスキルだと思っていた力は、実は世界を浄化する『創生の力』だった!? 無自覚な追放貴族と、彼に胃袋と心を掴まれた最強の元英雄。二人の甘くて美味しい辺境開拓スローライフが、今、始まる。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

処理中です...