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真祖に嫁入り~どうしてこうなった~
一週間、少しはすっきり ~もう少しやり方考えろお前王様だろう~
しおりを挟む「……」
吸血鬼の国の真祖の城の玉座では、ヴァイスが明らかに不愉快そうな顔をして座っていた。
配下の吸血鬼が人間の政府とのやりとりの情報を伝えるなどして尽力していることを伝えるが一向に怒りが収まる様子はない。
「真祖様、アルジェントを使いに出しましょう、人間であるアルジェントなら向こうに行けるはずです」
「だが戻ってこれまい」
ヴィオレの言葉をヴァイスは一蹴する。
「……グリース、居るのだろう? 隠れていないで出て来るがいい」
「あ、バレてた?」
部屋の中央に、灰色の風が舞う。
風が止むとグリースが姿を現した。
配下の吸血鬼たちは一斉に武器を構える。
「やだなぁもう物騒だなぁ」
グリースは全く動じてない調子で答える。
「お前たち、下がれ、私はグリースと会話がしたい」
配下達は狼狽え始める。
「二度は言わぬ、下がれ」
静かだが圧のあるヴァイスの声に、配下達はその場から姿を消した。
グリースとヴァイス、二人きりだけの空間になる。
「お前さぁ、大事なのはわかるけどもう少しルリちゃんの対応どうにかならなかったわけ?」
邪魔者達が居なくなって少ししてから、グリースは呆れたようにヴァイスに言う。
「……お前の様に自由にできんのだ私は」
ヴァイスは疲れたように息を吐き、玉座に座ったまま手を組んだ。
「だろうな、とりあえず、今回は俺があっちの政府脅しておいたから次回以降はちゃんと考えろよ」
「……善処する」
「まぁ、親御さんには家族以外には会わせないで外出はさせないように言っておいたけどな。ルリちゃんのフェロモンはちょっとタチは悪くて薬作るのに難航してるんだよ」
「……あのわずかな接触でいつの間に……」
「まぁ、色々やってきたからなぁ」
グリースは何でもないことのように言った。
「――言ったように、ルリちゃんは他の不死人と何か違うようだから注意しておけよ」
「それはお前と同じ意味か『不死人の王』よ」
「……さぁ、どうなんだろうねぇ? 何せ二千年経って初めて出てきた不死人の『女性』だ、今まで現れたのは皆男だっていうのにな?」
グリースは面倒くさそうに頭を掻く。
「あ、ルリちゃんへの対応変えないなら、俺マジでお前から奪って俺の嫁さんにする気なのはマジだからな」
「……ルリは渡さぬ」
「じゃあそうならない様に努力するこった! じゃあ後でまたくるぜ」
グリースはそう言って姿を消した。
一人だけになると、ヴァイスは深いため息をついて、玉座に背中を持たれ額をおさえた。
「……お前とは違い自由ではないのだ……」
ぽつりと言葉をこぼす。
「……二千年もの間全てを憎み続けているお前までもが、見初めるとは思わなかった……だがお前は何故ルリに愛されることを望まぬ?」
ヴァイスの問いかけに答える者は誰もいない。
ルリは久しぶりの母と兄の手料理を満喫した。
そして寝室――母親との共同の寝室のベッドでゆっくりしていた。
「えへへー」
安心して眠れるのだ、大好きな母親の隣で、ルリはとてもうれしかった。
「外出はしてはいけないってルリを連れてきてくれた人が言っていたし、役人の方からも言われたから外出させれなくてごめんね」
「ううん、いいよ。お母さんは気にしないで」
「ゆっくりするんだよ」
「うん!」
ルリは元気よく返事をして、久しぶりに穏やかな眠りについた。
その日からルリは楽しく過ごしていた。
人目をないのを見計らって家の庭に出て花を触ったり。
兄のゲームを隣で眺めていたり。
不要になったはずの食事を、家族で仲良く食べると心から楽しかった。
体の弱った祖母の介護をしたりと、少し不自由があるが、城での暮らしよりも気が楽で安心して過ごせた。
――多少不便はあるけど、やっぱり家がいいなぁ……――
そしてルリが家に戻って一週間経過した日の朝、ルリが目を覚ますと目の前に――
「やっほールリちゃん」
「?!」
グリースが居た。
「何で!?」
「いやごめんね、両方の国が煩くなってきたんだよ。ヴァイスの奴も返せ状態が酷くなってきてねぇ」
「はぁ……」
――うーん、予想はしてたがやっぱり戻らなきゃならないのか、面倒だなぁ――
ルリが渋い顔をしていると、グリースがルリを抱き寄せた。
「もし今後も不満とか、あいつが何か嫌な事とかすることがあったら言ってね、俺のお嫁さんにするから」
ルリは戻ってくるときに着た服に着替えて、出ていく準備をする。
また母親が不安そうな顔でルリを見ている。
「大丈夫ですって、何かあったらまたお家に帰しますんで!」
グリースは笑顔で言う。
「……戻るのが何か非常に面倒な気分だよ」
「戻るのが面倒じゃなくて嫌になったら言ってよ、二度と戻さないから」
グリースの言葉がルリに少しの不安と期待を持たせた。
「うん、じゃあお母さん、また」
ルリは母親に挨拶をし終えると、グリースの手を握る。
グリースはルリを抱きかかえて、灰色の風と共に姿を消した。
景色が変わると、其処は城のルリに用意された部屋だった。
ルリはまた、城での生活かと若干憂鬱になった。
「ルリ様!!」
ヴィオレが部屋に飛び込んでくる。
続いて静かにアルジェントが入ってきた。
「とりあえず、今回は返すけど、ヴァイスが阿呆な事するようになったら――」
「ルリちゃんは俺がもらうからな」
グリースはそう言って姿を消した。
「ルリ様お怪我は?」
「いえ、特にない……って何故脱がそうとする?!」
着ている服を脱がせようとするヴィオレに抵抗しながらルリは困惑した声を上げる。
「アレが何かしなかったか分かりません!! ですから隅々まで見せてください!!」
「ぎゃー!! それは嫌だー!! やめろー!! マジで助け呼ぶぞ!! もう一回グリース呼ぶぞ!!」
ルリがそう言って暴れると、ヴィオレは脱がそうとするのを止めた。
ルリがそう叫ぶように言った時、アルジェントの表情が歪んだのに、彼女は気づかなかった。
「本当、何もされてないからね!! 実家に帰らせてもらったのと、ここに戻される時以外接触ほとんどないからね!!」
ルリは警戒するようにヴィオレから離れつつ、ベッドを盾にしていた。
「……本当ですね、ルリ様。信じて宜しいのですね?」
「信じてよ!!」
「……分かりました、ではお体を調べるのは止めます」
ヴィオレがそう言うと、ルリはほっと息を吐いた。
「とりあえず、今日はゆっくり休みたいから、一人にして欲しい」
「畏まりました、何かあったらお呼びください」
ヴィオレはそう言って部屋を出て行ったが、アルジェントは少し部屋にとどまっていた。
「……アルジェント? どうしたの何か私に用事?」
「――ルリ様は、グリースをどう思っておりますか?」
アルジェントの突然の問いかけに、ルリは戸惑った。
「え? 会ってそんなに時間たってないからわからないよそんなの? うーん、まぁでも……何でだろう、分からないけど傍にいてくれると落ち着くかなぁ、何か分からないけど安心する……え、ちょっと何、顔怖いだけど……」
アルジェントの顔が、ルリには何処か怖い物に見えた。
「……ルリ様、貴方様は真祖様の奥方様です、それだけはお忘れなきよう」
アルジェントはそう言って部屋を出て行った。
部屋に鍵がかかる。
「……何を言いたかったんだろ?」
ルリは一人になった部屋で首を傾げぽつりと呟いた。
ソーシャルゲームや、アプリや、ネット、読書、動画鑑賞など、好きにしていたら夜になっていた。
何も食べていないが腹は減らなかった。
家にいたときは食欲がいくらでもあったのに、城では何故か食欲があまりわかない、喉も乾かない。
ルリはまあいいかと思い、普段ならとっくに眠る時間を超えていたので着替える。
ネグリジェが目についたが、何とか家で着ていたようなパジャマを引っ張り出し、着替える。
ベッドに乗っかり毛布にくるまる。
「お休みなさいー」
枕元のぬいぐるみにそう言うと、ルリは目を閉じた。
部屋が暗くなる。
ルリが深い眠りに落ちた頃、ヴァイスがルリの部屋にやってきた。
ルリは目を覚ます様子はない。
ヴァイスはルリの頬をそっと撫でる。
「……こうしてお前が眠った後にしかお前と触れる勇気がない私は臆病者だな、あんな事を言ったのに」
薄紅色の唇をなぞる。
「……時間を作らせよう、それがいい」
ヴァイスはそう呟いて、ルリの唇に、そと唇を重ねてから部屋を後にした。
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