不死人になった私~逆ハーレムっぽい状態になるなんて聞いてないし愛ってなに?!~

琴葉悠

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真祖に嫁入り~どうしてこうなった~

なんで私は…… ~君が「籠の鳥」でいなければいけない訳~

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「さて、どこからお話ししようか?」
 グリースが手を組みながら、ルリを見る。
 ルリは少し考える、聴きたい事は山ほどある、だが答えが返ってくるかわからないのがほとんどだ。
「……まず、真祖が五桁超える数罰したという内容と、アルジェントが三桁とっくに超えてる数病院送りにした件について」
「あ、その件ね、全容はぼかす。おおざっぱにしか言えない奴だな」
 グリースがそう言って真祖の方を見る。
 ルリも真祖を見る。
「……お前の事は公にはしておらぬが、二千年前に盟約で定めた者が見つかったから私の花嫁――基妻にすると公言はした」
「うへぇ」
 真祖の言葉にルリはげんなりする、どうやら真祖が自分を娶ったという事は知られていないが、誰かが妻になったことはこの国の民は知っているようだ。
「……どういう存在かは言ったの?」
 ルリはもう少し詳しくしりたいと思い、真祖に尋ねる。
「言った。不死人の女であると、な」
「……反応は?」
「……」
 真祖は黙った、多分相当止めに入られたとのだとルリは思った。
「そうだねぇ、『二千年前の盟約で真祖様自身が決めたこととはいえ不死人を妻とするなど自分の首を絞めるつもりですか!!』みたいな発言があった」
「グリース」
 真祖はまるでグリースを咎めるかのように名前を呼ぶ。
「いや、これくらいは良いだろう」
「……この国では『不死人』は快く思われていない……?」
「……」
 ルリの言葉に、真祖は再度口を閉ざした。
 どうやら正解のようだ。
「ルリちゃん正解! そしてごめんねーそれ俺の所為」
「は?」
 黙る真祖の代わりに、グリースが答えて、そして謝罪した直後に何かとんでもない事実を述べられ、ルリは思わず変な声を出す。
「――グリースは二千年前の戦争でかなりの数の吸血鬼を滅ぼして居る、人間もだが」
「あ」
 真祖がため息をつき、その理由を言った。
 その内容でルリは思い出した。
 グリース自身が二千年前の戦争で吸血鬼、人間、両陣営を滅びる寸前まで追い込んだ、と言っていたことを。
「うん、その所為で不死人は『めっちゃヤバイ存在』という扱いになってるのよ、この国では」
「あー……つまり、私は『危険な存在』って事で国民からは敵視されてる?」
「まぁ、遠回しに言えばそうなるね。ルリちゃん俺みたいな力ないのにね」
「本当だよ!!」
 けらけら笑うグリースに、ルリは噛みつくように言った。

 グリースが自分の立場が危うい理由の大部分を作った諸悪の根源的な存在でもあるからだ。

「……だが、グリースが二千年前あのような行動をしなければ、吸血鬼が人間を支配する世界なっていただろう、それが良いかどうかはわからぬが」
「あー確かに、なんせお前にはにんにくも、陽光も、流れ水も、白木の杭も、銀も、祈りも、聖遺物も、吸血鬼の弱点の類のもん、何一つ効かねぇもんな」

「吸血鬼が苦手とするもの全部無効!! どんだけ人間が吸血鬼を滅ぼそうと行動したところで、真祖であるヴァイスが妨害しちまう!!」

「人間はどんどんジリ貧になって行った、そんな中、両陣営を滅ぼそうとする厄介な奴――俺が現れた」
 ルリはグリースの言葉をじっと聞いていた。
「……だから、世界は大きく分けて二つの国。人間の国と、吸血鬼の国に分かれた?」
「結果としてな。まぁ不死人なんて存在が生まれなかったら俺もルリちゃんもここにはいないし、人間は吸血鬼に支配される存在状態で、アルジェントもここにはいないだろうさ」
「……」
 グリースの言葉にルリは複雑な表情を浮かべる。

 吸血鬼は、人間がいなくなると生きてはいけない。
 確かに、そうなると二千年前の戦争はグリースが現れなかったら、どうあがいても勝てない相手である真祖がいる以上人間側は負ける。
 そうなると、吸血鬼は人間を支配する立場になっていたはずだ。

 でも、ならなかった。

 グリースが不死人になったから。
 吸血鬼と人間に、最愛の者を、家族を奪われたグリースは両方を憎んだ。
 不死人となったグリースが、ルリと同じように大した力を持っていないなら、戦争はそのまま進み吸血鬼が人間を支配するという結末になっていただろう。
 だが、グリースは力があった。
 誰も滅ぼすことができないはずの真祖を滅ぼすことができる程の力が。
 世界をひっくり返す程の力が。
 確かにグリースはある意味世界をひっくり返した。
 それだけで終わった。
 グリースは支配者になることなどせず、盟約を作らせ、人間と吸血鬼が戦争規模の争いごとを起こさないようにさせた。

「――ねぇ、グリースは支配者になろうと思わなかったの?」
 ルリはグリースに問いかけた。
「あー俺そういうの向いてないし、なりたいとも思わなかったわ。今は大分マシになったけど、当時はかなり人間憎し、吸血鬼憎し状態になってたからね。あんまり関わりたくなかったから盟約結ばせ終わったら速攻で姿くらませたよ。時々吸血鬼の国や人間の国見て回る程度、馬鹿やったら姿見せてたけど」
 グリースは手を軽く振りながら、そう答えた。
「この国でははっきりと二千年前の戦争が起きた理由と、戦争が終わった理由なども教えている、だから不死人グリース、姿は知らぬが存在を知っている者はほとんどだ」
 真祖の言葉に、ルリは真祖の方を見る。
「――ルリの国、人間達の国ではそうではないようだな。グリースの事は隠してある、故にグリースの事などを知ることができるのは政と関わっている連中位だ。不死人の事は知っている者は普通にいるがな」
「あー……うん、確かに。私戦争の事とかグリースの事、この城に来てグリースと来てから初めて知った……不死人については学校で習ったけど……」
「さてルリちゃん、どうして君の母国では俺の事は言わないで、不死人の事だけ教えていると思う?」
 グリースの問いかけに、ルリは考え込む。

――何故不死人の存在を教えるんだろう?――
――もし盟約通りの不死人の女がでたらの時を考えて?――
――違う、そんな理由だけのはずがない――
――グリースのような力を持った不死人の存在を待っている?――

「……グリースみたいな力を持った不死人を増やしてに吸血鬼の国より強い国になりたい?」
「うーんちょっとだけあってる!!」
 グリースはルリの出した答えに対して、一応正解していることと告げる。
「ルリちゃんの母国は可能なら力を持つ不死人の軍隊を作りたいんだよ、吸血鬼達を滅ぼすことができる位の」
「……え?」
 グリースが口にした内容は、ルリの答えよりもスケールが大きい物だった。
「グリース」
 真祖がまるでこれ以上喋るのはやめろと言わんばかりに、グリースの言葉を制止する圧かけて名前を呼ぶ。
「いや、ルリちゃんが知らないままだと色々とヤバイことになりかねないから暴露する」
「ヤバイ事って……どういう事?」
 ルリは不安になった、自分が知らないと大変なことになるとはどういうことなのだろうか。
「人間の政府は不死人の因子を持っているかどうか調べることができる薬を既に持っている、だけど薬は作るのが困難な為国民全員に使うことはできない」
「……じゃあ、その薬は誰に使うの?」
「不死人の親を持つ子どもにだよ」
 グリースの言葉に、ルリは目を見開く。
「不死人の男は今まででてきた、人間の女との間に子どもを作らせた」
「ちょ、ちょっとそれ、まるで実験動物みたいじゃん……え?」
 ルリは自分の言った言葉で、気づいた。
「ルリちゃんその通りだ」

「俺と、ルリちゃん以外の不死人は皆実験動物みたく、研究所で隔離されて子どもをつくる為の事をさせられている」

 グリースの言葉にルリは言葉を失った。
 ルリは気づいたのだ、真祖の「盟約」が無ければ、自分もその研究所に連れていかれていたと、子どもを産む為の存在にさせられていたと。
 そして自分以外の不死人の女性はおそらく今――
「……言わなくても気づいたみたいだね」
「……で、でも不死人の軍隊なんてできるわけが――」
「そう、できなかった。今まで不死人の親を持った子どもを調べても誰一人として不死人になる因子を持っていなかった」
「……」
 ルリはどう言葉を発すればいいのかわからなかった、疑問が多すぎた。
 そして自分への疑問も多く湧きすぎた。
「精子や卵子レベルで今の政府は調べることが可能になった、研究所の中だけでしかできないけど、そうしたら驚きの結果だ、不死人の男達も、新しく見つかった不死人の女達も、誰一人として生殖の箇所に『不死人の因子』を保有してなかったんだよ」
「へ……? じゃ、じゃあ不死人の親でも子どもは不死人じゃない……?」
「そゆこと」
「――ここからは私が話そう、ルリ、お前の国の政府連中と研究者はお前の事を調べよう音躍起になっている、どうしてだとお前は思う?」
「え? さ、最初の女性の不死人だから?」
「――グリースは子に不死人の因子を遺伝させれるか、調べれる」
「え?」
「調べ方とかは内緒!! ごめんね!!」
「――グリースに頼んでルリ、お前がどうか調べさせてもらった」
「……も、もしかして結果は……」
 ルリは若干青ざめた表情で問いかける、自分の予想が外れてほしいと願いつつ。
「――お前は自分の子に、確実に『不死人の因子』を受け継がせることが可能だ。お前が人間や不死人と子を成した場合、子は確実に不死人となる」
 真祖の発言に、ルリめまいがしそうになった。
 ふらりと倒れそうになるが、グリースが支えた。
「ごめんね、かなりとんでもない内容で。でも、分かったよね、ルリちゃん。君を下手に人間の国に帰せない理由が」
 グリースの言葉に納得するしかなかった。
 もし、帰った時研究者がどうにかして自分のことを調べて、「ルリが産んだ子は皆不死人になる」という結果が分かったら、人間政府は自分を拉致するかもしれない、場合によってはこの国に武装部隊か何かを送って自分を連れ去るかもしれない。
「ああ、ちなみにもう一つ俺の子どもも確実に不死人になる」
 グリースは付け足すように言った、ルリはその言葉にも耳を疑った。
「――今の情報を知っているのは私達だけだ、他の者は一切知らぬ、ルリこの事はアルジェントにもヴィオレにももし会う事ができたとしても家族や友人にも言ってはならぬ」
「……うん」
 真祖の言葉にルリは不安そうに頷いてから、真祖を見上げる。
 真祖は顔色がルリの頬を冷たい手でそっと撫でた。
「……だから私を手元に置くの?」
「違う」
 ルリの言葉に、真祖は否定で返した。
「ルリ、お前が愛しいからだ、お前を愛しているからだ。だから私はお前を守る為母国には帰さぬ、否帰すことはできぬ。そして世話役以外の者に合わせることもさせたくない、どこから情報がもれるかわからぬからだ」
「……ルリちゃんをよく思ってない連中が情報を流したらルリちゃんが危険だ、だからヴァイスはアルジェントがルリちゃんを悪く言った奴をアルジェントが瀕死にしようが咎めない、そしてアルジェントが誰かに会うかもしれないから庭への外出を禁じる申し出を認めた」
 グリースの言葉に、ルリはうつむく。

――ああ、神様がいるなら残酷だ、私が一体何をした、何で私をそういう存在にしたのか――

 ルリは、自分に与えられた「物」に、深く嘆いた。



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