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私の可愛いお嬢様を糞王子が泣かせたらこうなった~旦那様と夫人が作り出した修羅場~

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 私には目に入れても痛くない程可愛いお嬢様が居る。
 勿論、ご家族の方々にも愛されている可愛らしいお嬢様が。
 父が元王弟で、謂れの無き罪で投獄された後、身に危険が迫っていた私を保護して下さったフローレンス公爵一家の可愛らしいお嬢様。
「シリウス……!」
 その御方が泣きながら帰ってきた。
「ロゼッタお嬢様、どうしたのです?」
「シリウス、私クロード殿下に婚約破棄されてしまったの」
 はぁ?
 何しやがりやったんだあの馬鹿王子。
「お父上に相談しに行きましょう」
「はい……」
 ハンカチで目を拭い、ロゼッタお嬢様と共に旦那様の執務室へと赴き、ロゼッタお嬢様から事情を聞くことに。
 内容はこうだ。

 自分は真実の愛を見つけた。
 それがアン・ベンネットである。
 故にロゼッタ・フローレンスとは婚約破棄する。
 との事だ。

 なーにが真実の愛だ。
 こんな美しくて賢いお嬢様を泣かせるなんて許せん。

「馬鹿王子をどうにもできん国王陛下にも飽き飽きしてきたところだ」
 旦那様は怖い顔でそうおっしゃいました。
「シリウス、ロゼを呼んできてくれ話がしたい。その後はロゼッタの面倒を見ておくれ、ショックだったのだろう」
 私はロゼ夫人を呼びに行くと、柔和な表情のロゼ夫人の顔が、冷たく凍るのを見て少し恐怖を感じました。
 その後、ロゼッタお嬢様のところに行き、ロゼッタお嬢様を慰めます。
「ロゼッタお嬢様大丈夫ですか」
「うん……」
 とても平気そうには見えません。
「クロード殿下も人を見る目がない! お嬢様ほどお美しい方はいらっしゃらないのに、お優しい方はいらっしゃらないのに、賢い方はいらっしゃらないのに……!」
 私は思わず熱弁してしまう。
 するとお嬢様は笑った。
「もし次婚約するなら、シリウスがいいわ」
 とまで言ってくださった。
「もったいなきお言葉です」


 そして翌日、軍部の偉い方が来て旦那様達と何か話されていました。
 何を話していたのでしょう。


 そして一週間後──
「これはどういう事だ⁈」
「どういうことも何も、女の色目にだまされる王子が時期国王だなんて、国の為を考えればこうするしかないかと?」
 兵士達に拘束されている国王陛下と、クロード殿下。
「ファイン国王陛下、貴方は息子の矯正する機会が何度もあったのにそれを怠った故に貴方の地位を剥奪させてもらいます」
 旦那様は淡々としゃべっている。
「ベイン! 何故お前がそちら側に着いている⁈」
 クロード殿下がわめきます、確かに、自分の弟が私達側にいるのは驚きでしょうが、普通そうなるでしょう。
「私は兄上のような馬鹿になりたくないし、叔父上を策略で陥れた父上のようにもなりたくない、故に軍部の上層部の人間としてこちら側についたまで。私は次の国王になる気はないので」
「そこで空白になった国王の座には王族の血を引く我が夫が着かせて貰います」
 夫人も淡々としゃべっている。
「そして我が夫が国王の座を退いた後は──」
「亡き国王陛下の王弟でありフィルス公爵の息子シリウスに国王になってもらい、そして妻としてロゼッタと結婚して貰う!」
 玉座にいた貴族達がざわめく。

 私は若干顔面蒼白になりかけていた。
 私は母に似て褐色に金髪の肌をしている、国王陛下達の色白とは違う。

 旦那様は元王弟である父が幽閉された内容が以下に不誠実で不条理だったかを説き、それと私の正当性を説いた。

「故にシリウスに次の国王になって貰う、異論はないか!」

 異論は上がってこなかった。
「ふざけるな! 執事風情がそんなことできる訳……!」
「シリウスには王族として必要な知識は既に教育済みだ」
 あー、そういやそうでしたな。
 理由を聞いたら、王妃になるであろうロゼッタの為、とだけでしたしね。
「遊び惚けて、女にうつつを抜かしていた貴様とは違うのだ、シリウスは!」
 旦那様、少し恥ずかしいです。
「お父様、本当にシリウスと結婚していいの?」
「勿論だともロゼッタ」
「有り難うお父様!」
 お嬢様が私に抱きつく。
「クロード殿下……いえ、クロードみたいな不誠実な人と結婚しなくてよくなったのよ! 嬉しいわ!」
「さて、真実の愛を見つけたというクロード・フィルドとアン・ベンネットには相応の事をして貰わねばな」
 国王となった旦那様はじろりと二人を睨み付ける。
「クロード・フィルド、貴様は王籍から除籍。そして──」

「二人には国の外部の警備の任について貰う」

 二人の顔色がさぁと色を失った。

「ま、待ってくれ! そんな場所に配置されたら死んでしまう‼」
「待ってください! 私は殿下の地位目的で近づいたんです、認めますから──!」
「アン⁈」
「ならばそのような輩はますます、王都から離れて貰わねばな」

 言い合いになる二人を兵士達が連れて行き、元国王陛下も連れて行かれた。

 大人しく連れて行かれたということは、自分の非を理解しているのだろう。
 結果がこれだが。

「あの、旦那様。私で良いのでしょうか?」
「良いも何も、お前は何も罪を犯していない王弟、フィルス公爵の息子だ! 正当な王位継承権がある」
「は、はぁ……」
「それにお前なら、ロゼッタを大事にしてくれるだろう?」
「……はい!」
 私は力強く返事をした。
「お嬢様──いえ、ロゼッタ。どうか私とこれから歩んでください」
「ええ、ええ。シリウスとなら私頑張りますわ!」


 こうして、血を流さない革命が終わり、軍部の上層部と結婚しているロゼッタの姉君が祝福に来た。

「ロゼッタ、シリウス、おめでとう!」
「ロゼリスお嬢様、有り難うございます」
「ロゼリスでいいのよ、次期国王陛下」
「そ、そうでしたね、ではロゼリスさん。有り難うございます」
「真面目なところがいいわよね、シリウスは」
「お姉様の旦那様は?」
「無口だけども可愛いのよ?」
「誰が可愛いだ?」
 少し不本意そうな元第二王子のベイン様。
 この方に継がせてたら良かったんじゃ無かったのかと思いはしたが、ベイン様は王位に興味はないのでこうなった。
「事実を言ったまでじゃない……ロゼッタ綺麗よ」
「お姉様、有り難う」
 そう、今日は式。
 隣には美しい花嫁衣装のロゼッタが居る。
「ロゼッタ、行こう」
「はい!」
 ロゼッタの手を取り式へと向かう。

 空は祝福するような晴れやかな青空だった──





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