クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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探偵の私生活~それは壊滅的だった~

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 零は鈍痛を体に感じながら目を覚ました。
 昨晩発情期になったマヨイとフエの相手を一気にした所為だ。
 テーブルに液体の入ったコップがあり、その下には紙があって。

 いつも無茶させてすみません、これ飲んで下さい

 むちゃさせてごめんなさい

 流暢な字がフエで、つたない字がマヨイのものだろう。
 飲めということは体にいいものなのだろう。
 零はためらいなく飲み込んだ。
 甘酸っぱく、のどごしが爽やかな飲み物だった。

 鈍痛が無くなり、体が軽く感じる。

「食事は……これでいいか」
「だーめに決まってるでしょう!」
 フエが姿を現した。
「人のこと言えないけど、零さん、自分のことないがしろにしすぎ!」
「と言われてもなぁ」
「せめてちゃんと食事はとること! なんなら私が作る」
「柊がふてくされないか?」
「柊さんとはもう食事一緒にとったもん!」
「そ、そうか……」
「柊さんは今他の人とお話してるから居なくても平気だしー」
「あの柊が?」
 嫉妬深く、修羅場を起こしているという柊が普通に話せる相手とは一体誰だろうと零は思った。
「蓮と康陽さん」
「……それはお話ではなく愚痴なのでは?」
「え?」
 零がそう言うと、フエは目を丸くしながらカリカリのトーストにマーマレードのジャムを添えて、サラダとスープの食事を提供した。
「ええーそんなことはないよぉ?」
「本当か? じゃあ今度聞いてみろ、多分向こうははぐらかすかぶっちゃけるかの二択だろうがな」
「むぅ」
 フエはふてくされた顔をした。
 そんな顔を見ながら、零は食事を取る。
「このジャム上手いな」
「マヨイの果実園で取ったので作った奴だからね」
「なるほど、野菜もか」
「そうそう、マヨイの畑でね」
「高級レストランにでも卸せばいい値段で売れるのでは」
「うーん、マヨイが乗り気じゃないからね」
「なら仕方ないな」
「うん、仕方ない」
 食事を取り終えると、零は立ち上がった。
「さて、見回りに──」
「の前に歯磨き」
「ああ、そうだな」
 零は歯ブラシと歯磨き粉のチューブを受け取ると、それを使って歯を磨き始めた。

 歯磨きを終えると匂いをかがれ、昨晩の情事とは言いがたい猟奇的な行いの匂いが残っているとフエは指摘し、シャワー室に入れられ、零はシャワーを浴びた。

 体を、髪の毛を洗いさっぱりとして、椅子に腰をかけると髪の毛を丁寧に乾かされる。
「零さん髪の毛長いんだから手入れちゃんとしないと」
「ああ、すまない」
 フエはぐちぐちと文句を言う。
「せっかく綺麗なんだから」
「いっそバッサリと切るか?」
「駄目」
「何でだ」
「勝手に切ったら駄目だからね」
「全く……」
「よし、終わった」
「では、出かける……」
「ちょっと待った」
 零が着ようとしている服を奪い取り、フエは匂いを嗅いだ。

「生臭い」

 そう言うなり服という服をあさり、匂いを嗅ぎ、帽子も匂いを嗅いでいた。

「何なのこの匂いー! 零さんちゃんと洗濯してる⁈」
「してる、が異形の体液で匂いが残ってたりするんだ」
「もー!」

 零は見たことの無い洗剤を取り出し、服は全部洗濯機にぶち込んで洗剤をどばっと入れて洗濯を開始した。
 そして帽子は素手で洗い始めた。

「……フエ、パンツ一丁なんだが」
「ああ、ごめん!」
 フエが指を鳴らすといつもの白いワイシャツにね紺色のスーツ服に紺色のつば広帽子の格好になっていた。
「洗濯してるから、紅姉さんと一緒に見回りいって」
「フエに呼ばれてきたぞ」
 紅が扉を開けてやってきた。
「いや、見回りは一人で……」
「いいから行って!」
「……分かった」
 零はしぶしぶ紅と見回りに出かけた。

「着物姿動きづらくないのか?」
「ああ、平気だ、慣れると楽だぞ」
「そうか……」


 零と紅がそんなのんきに見回りをしている頃──




「冷蔵庫も腐ってるもの大量じゃん! 掃除しないともー!」

「お風呂あんまり使ってないから臭うじゃん! もー!」

 と、住居スペースを掃除しまくるフエが居た。




「今日は異形は少なかったな」
「私がほとんど喰ってしまったがな」
「いやはや、すまない」
 そんな事を言いながら帰ってくると、怒り顔のフエが居た。
「零さん」
「何だ?」
「零さんの生活習慣見てらんない! これから毎日来て改善していくからね!」
「いや、別に私は……」
「零、フエは言い出したら聞かん」
「そうだな……」
 零は諦めたようにため息をついた。



 そして翌日──
「フエの浮気者ー‼」
 康陽と蓮の前でわんわんと泣き叫ぶ柊の姿があった。
「今度はどうしたんだ?」
「零さんの生活習慣がだらしなさ過ぎるから生活改善に行ったんだってさ」
「浮気してやる‼」
「ほほう、誰とだ」
「彼女と!」
 蓮に抱きついた。
「わ、私⁈ いや、私には康陽さんがいるから……」
「柊、そうやって自棄になって相手を選ぶのを間違えるのは良くない」
 康陽が呆れたようにたしなめる。
「ううううー‼」
 柊は突っ伏して号泣した。
 さてどうしたものかと考えていると、珍しく隼斗が現れた。
 げっそりとしている。
「マヨイが、マヨイが……」
 とぶつぶつ呟いている。
 蓮は眉間に手をあて、康陽は頷くと隼斗を椅子に座らせた。
「隼斗さん、一体どうしたんだ」
「マヨイが、マヨイが、零の私生活がだらしないからとフエと一緒に出かけてしまった」
 蓮はあちゃーと言わんばかりの顔をした。

 よりによって色んな意味で依存度が高い二人の相手であるフエとマヨイが出かけてしまったのだ、零案件で。
「うう、フエの浮気者」
「マヨイ、マヨイがいないと私は怖いんだ……」

──二人とも、早く帰ってきて──

 修羅場になるのは想像できたが、蓮はそれでもフエとマヨイが帰ってくるのを待つだけだった──





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