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異形の『花嫁』~誰の物でも無い~
しおりを挟む「ううう……」
「「……」」
べそべそと泣いている柊を見て顔を合わせる蓮と康陽。
蓮はどうしよう? という顔をした。
それに対して康陽はわからないと首を振った。
「あーくそ、異形出まくるし、零さんの生活は残念すぎるし大変だよ」
フエの声がした。
すると柊は顔を上げてフエの声がした方へと走っていって、すがりついた。
「柊さん」
「~~浮気者ぉ!」
「いやだから浮気じゃないっていってるでしょう⁈」
「なんで私がいるのに他の者の所に行くんだ⁈」
「仕方ないじゃない、生活習慣がろくすっぽできてない人間放置して病気になったら大変なんだから! あと異形が常に狙ってくるし!」
「異形が狙ってくるのは我慢できるが他の奴に任せられないのか⁈」
「任せられたらこんなことしてる分けないじゃ無い!」
「うう~~浮気者ぉ!」
「もう、この子はー!」
駄々こねる柊をフエは抱えて立ち去った。
「腰が立たなくなるまでヤルに今晩のデザートをかける」
「俺も同様」
「賭けが成立しないじゃないですかー」
「そうだな」
それを見送り、賭けをしようとしたが成立しない賭けに二人は笑い合った。
夜──
「くそ、見回りに来たら当たりを引いたか」
零はそう言いながら銃口を異形に向けて弾丸を撃ち込む。
特殊な弾丸──異形の子性だからか、弾丸は異形に通じ、ひるんでいるうちに距離を取り同時に人気の無い場所を通って逃げる。
途中ヤクザに絡まれて逃げたが、その後悲鳴が聞こえたが仕方ないものとした。
──善良な一般人を巻き込むよりいい──
そう思い込んで。
それでも執拗に異形は追いかけてくる。
袋小路に入り、零は舌打ちして、叫んだ。
「フエ! 蓮! マヨイ! 紅!」
と呼ぶと、青い煙が周囲を漂い始めた。
捕食音が聞こえる、うっすらと見える煙の向こうでは異形が何かに捕食されていた。
煙が消えると異形は跡形も無く消えていた。
「もう少し早めに呼んでも良かったんだぞ」
「すまない」
「まぁ、犠牲者がヤクザだからいいとしよう」
「いいのか……」
「さて、と」
紅はくるんと煙管を回して消すと、零に近づき零を抱きかかえた。
「……重いぞ?」
「軽いが?」
紅はそう言ってその場から零と共に姿を消した。
事務所の居住スペースに戻ると、紅は零をベッドに座らせ、どこからか煙管を取り出し吸い始めた。
「吸わないと空腹感が酷くなるのか?」
「ああ、今は落ち着いているがな」
「『星喰いの紅』だからな」
「ああ、マヨイが薬草を育ててくれて助かる」
「マヨイはそういう能力に長けてるからな」
「マヨイは人は喰わん、異形の中でも稀な方だ」
「そういえば、今日三人来なかったな」
「蓮は別件で出払っている、フエは柊が根を上げるまで抱き続けている」
「いつから?」
「夕方頃からかな」
「……男性器とかヤバいことにならないか?」
「多分なってる」
「Oh」
「それはそうと、私がお前の夜の面倒を見るぞ」
「はい?」
「フエがこれないのでな、なのでさっさとちゃんと風呂に入れ、入れてあるから」
「あ、はい」
「それが終わったら食事だ、おっとその前に髪を乾かさねばな」
「うん」
零は紅の言う通りに動き、入浴し、髪を乾かされ、食事を取り、寝る前の酒を少量共に口にし、ベッドに入った。
しばらくして、すやすやと寝息を立てる零に、紅はそっと口づけた。
「たまには良かろう」
そう言って部屋を後にした。
「あー……漸く根を上げてくれたよ」
「どんだけ我慢強いんだお前の番いは」
「糞爺達のせい」
「ああ……」
ふてくされたようにフエが言うと、フエはくんくんと紅の匂いを嗅ぎ始めた。
「紅姉さん、煙の匂いが一端とぎれてる箇所がある」
「流石だな、零を抱きかかえるのに煙管が邪魔でな」
「大丈夫なの?」
「なに、その前に異形を喰ったから少しぐらい我慢できた」
紅はそう言って煙りを吐き出した。
「大変だよね、その薬草の煙を嗅いでないと空腹感に襲われるって……」
フエはしょんぼりと言った。
「仕方ないさ、これも私の異形性だ」
「うん……」
「ところで、お前は番い放置でいいのか?」
「あ、うん。根を上げる位抱いたから今頃すやすやしてるよ」
「そうか……」
「紅姉さんは番い欲しいと思わないの?」
「今のところ共有している『花嫁』がいるからいいかな」
「零さんね、なるほど」
紅は再び煙管を口にする。
「ところで、紅姉さん」
「なんだ?」
「零さんにちゅーした?」
「……バレたか」
「やっぱり、口紅少し薄くなってるもん」
「人間には分からない程度だがお前にはわかるのか」
「うん、まあ姉さんの口づけなら当分異形がよってこないだろうけどね」
「お前のは?」
「私のはまぁ、やっちゃうから匂い大量に残って半年くらいは異形避けになる」
「それでも、半年か」
「うん」
「……『花嫁』の匂いが強すぎるのが問題だな」
「仕方ないよー零さん、誰かの番いになる気ないんだもん」
「そうだな……」
フエの言葉に、紅は疲れたようなため息を吐き出した、青い煙と共に──
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