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花嫁は大事、番いは?~勿論大事です!~
しおりを挟む「フエ、いるか?」
「零さん、なーに?」
ベッドで安静にしている零はフエを呼び出した。
フエはぶらんと天井から現れ、そのままくるっと一回転して着地した。
「私が寝ている間、何か来なかったか?」
「どうしてそう思うの?」
「何かが居た痕跡が残っていた」
フエはあちゃーと言ってから肩をすくめて。
「正解、零さんが寝た時、キューピッドみたいな異形が来て零さんを『花嫁』を自分達のものにしようとしたみたい」
「面倒な……でもお前がどうにかしてくれたんだろう?」
「当然!」
フエはえへんと胸を張る。
「人の人生いじって遊ぶタチの悪い異形だったからね、だからしっかり排除させていただきました」
「それはいい、被害者が減る」
「だねー!」
そう言って起き上がろうとした零をフエは慌てて寝かしつける。
「だめだめ、まだ寝てなきゃ」
「むぅ……」
「寝てばかりで眠れなくなってきているんだ」
「じゃあ、子守歌でも歌おうか」
「ほう、歌えるのかお前が」
「失礼しちゃうなー」
揺籃のうたを
カナリヤが歌うよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ
揺籃のうえに
枇杷の実が揺れるよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ
揺籃のつなを
木ねずみが揺するよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ
揺籃のゆめに
黄色い月がかかるよ
ねんねこ ねんねこ
ねんねこよ
歌い終わる頃には、零はすっかり夢の中に入っていた。
「お休み、零さん」
そう言って額にキスをしてフエはその場を後にした。
「柊さん、どうしたのー?」
毛布にくるまってなにかふてくされている柊に、フエは声をかける。
「フエは『花嫁』ばかりを気にかける……」
「いやぁ、今回は『花嫁』さんに負荷をかけまくったからねー」
「私は目覚めない君に毎日不安を抱いていたのに」
「……ごめん」
フエは謝った。
「愛想尽かされても仕方ないけど、これが私の異形性なんだ」
「『花嫁』を求めるのも?」
「それは異形の血を引く者なら誰でも」
「……番いが居ても?」
毛布から顔をだしてフエを見る。
「……うん」
「私では、駄目なのか?」
「私の異形性を本気で出すと貴方が傷つく、番いを傷つけたくない。傷つけずに済むのは私達の『花嫁』だけ」
「花嫁だけ……」
「花嫁の前では異形性は落ち着く、そして発露もできる」
「番いでは……」
「できない」
「……」
「それでも私は柊さんを、貴方を愛してる。それじゃ駄目?」
「……分かった、我慢する」
「ありがとう、柊さん」
起き上がった柊に、フエはキスをした──
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