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異形の「花嫁」~花嫁の意味~

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「胸くそ悪い事件になりかけたな」

 零は忌々しげに棒付きキャンディをかじった。

「ええ、少女らをさらって異形に犯させて世界をめちゃくちゃにしようとするなんて」
「マヨイが居なかったら少女らは全員死亡していたしな」

 キャンディの部分が無くなったのか、噛まれた棒の部分を捨てて新しい棒付きキャンディをかじりだした。

「さらにフエも居なかったら、あの子等は心に傷を負ったままだった、記憶消し能力が強すぎるのは救いだな」
「何かをきっかけで思い出すこともありませんしね、フエの記憶消しの場合」
「その分、自分が何もできなかった事が歯がゆい」

 零は再度忌々しげにそう呟いた。

「所長、貴方は自分が成すべき事をなしたまでです」
「果たしてそうかな?」
「何が言いたいニルス」
「所長殿は、この事件が起きる前に自分が『花嫁』であることを連中に明らかにすれば、少女達の犠牲は無かったとお思いだ、それは事実になりうる」

 ニルスがにやにやと笑って言うと、レオンは怒鳴った。

「何処がだ! 『花嫁』でもあの異形の子を産んだら、所長にも負担がかかる! それに他の異形達もこぞって所長を狙うだろう!」
「それだよ、そうすれば異形同士が同士討ちをして今回の事件が起きなかった可能性がある、そうでしょう『花嫁』殿」
「……確かにそうだ」
「所長!」

 ニルスの言葉に、零は重い表情になった。

「私が『花嫁』である事を隠すのを止めれば、私を狙い他の子を狙う事は異形共は無くなるだろう」

 零はそう言って赤い石ついたのペンダントを握る。

「駄目です、所長」
「……」
「それこそ、奴らの思うつぼです」
「だが……」
「ニルス、貴様も余計な事を言うな。所長に何かあったらフエがお前を直々に屠るだろう」
「おお、怖い怖い」

 レオンはニルスを睨み付けていった。

「所長、自分の体を大切にしてください、それが私達の望みです」
「……分かった」

 零はどこかくらい表情で頷いた。




 その夜、零はペンダントを外して眠っていた。
 ずるずると、無数の触手と目玉を持つ異形が這いずってベッドで寝ている零に近づいていた。

「はい、其処まで」

 フエが現れ、触手の前に立ち、黒い肉壁を作り、それで一口で異形を捕食する。

「全くもう」

 フエは寝ている零にペンダントをつけた。

 当たりの空気が晴れる。

「これで異形はこれないわね、結界張り直したし。レオンもう少し結界貼るの上手だといいんだけど」

 フエが盛大にため息をつく。

「ん……」
「……寝てるな良し」

 フエはそう言って零の額にキスをした。

「明日起きたらお説教だからね、覚悟しておいてよ零さん」

 そう言ってフエは居なくなった。
 翌日、フエから肉体でも説教をくらい、腰を痛めて動けなくなり安静にさせられ、フエとマヨイに見張られる零がいた──





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