クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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マヨイの不調~番いの我が儘~

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「う゛ー……」

 その日、布団くるまりつつも、マヨイはモダモダしていた。

「マヨイの様子がおかしい?」
「ああ……声をかけても返事がないんだ」

 隼斗が紅に声をかけていた。

「どうした、マヨイに何があった?」

 其処へクラルが顔をだし、隼斗をぎょっと凍り付かせた。

 初対面では無碍に扱われたが、愛しいマヨイの義兄に相当する人物だ、隼斗はクラルが若干怖かった。

「その、何というか……ずっと唸ってて……」
「それだけじゃ分からん、見に行くぞ」
「そうだな」

 クラルと紅が顔を見合わせて頷き、マヨイの部屋に向かうと隼斗は慌てて追いかけた。




「異形性の発露だなこれは」
「何故我慢している?」

 マヨイの様子を見たクラルは即答し、紅は何故かと問う。

「それは私よりも、その男に問い詰めた方がいい」

 じろりと視線を隼斗に向けた。

「貴様、またマヨイへの依存を深刻化させたな」
「……」

 隼斗はさっとばつ悪そうに視線をそらした。

「マヨイになんと言った、答えろ」
「クラル、怒りを抑えろ、こいつは色々と弱いから」
「ちっ……」

 クラルは舌打ちの音を出した。

「で、隼斗。お前はマヨイになんと言った」
「こ、怖いと言ったんだ、マヨイが側から居なくなることが……だから側から離れないでくれと……」
「それだな」
「だろうな」

 クラルと紅は呆れの息を吐き出す。

「隼斗、お前の所為でマヨイは苦しんでるし、好きな仕事だってできないんだ、お前は我が儘を少しは控えるべきだ」
「じゃないとフエが仕置きに乗り出すぞ」

 その言葉に、隼斗は顔面を蒼白にした。

「わ、わかった。じゃあどうすればいい?」
「我慢しなくていい『花嫁』の所に行ってきてくれと言えばいい」
「い、言えない」
「じゃあ、マヨイが苦しみ続けるぞ、それでいいのか?」

 紅が睨み付けるように脅すと隼斗は首を振った。

「も、もっと嫌だ」
 隼斗はマヨイに近づいて囁いた。

「ま、マヨイ。もう、我慢、しなくていいから『花嫁』のところへ──」

 と言うと、マヨイはしゅんと姿を消した。

「ま、マヨイ」
「『花嫁』の所へ行っただけだ」
「そうだな」
 紅とクラルが言う。

「ど、どうして私では……」
「それが異形の子というものだ」
「その通り」

 紅の言葉をクラルは肯定した。




「う!」
「腹上死するかと思った……」

 下腹部をべどべとに汚しながら、汗まみれの零は起き上がった。

「我慢してたんだろう、我慢せず、今度からはくるように」
「うー」
「いいな」
「う!」

 マヨイが居なくなると、荒井が入って来た。

「風呂ならいれてあるから、さっさと入れ、無理ならシャワーでもいい。汚れを落としてこい」
「腰が痛くて立てない」
「仕方ないな……」

 荒井はタオルで零の体を包むと風呂場へと連れて行き、補助をしながら体を洗うのを手伝い、シャワーで洗い流すと、体を拭いてベッドに連れて行き、着替えを手伝った。

「いつもすまないな」
「本当だ、だが仕方ないだろう、お前は『花嫁』だからな」

 荒井が零をベッドに寝かせると、零に腕を捕まれた。

「腹が減った」
「何が食いたい」
「お前の鳥雑炊」
「分かった少し待て」

 少し待たせ、鳥雑炊を作ってきた荒井は、テーブルに置いてレンゲを渡した。

「熱いから気をつけろよ」
「ああ」

 零はふーふーっと冷ましながら鳥雑炊を頬張った。
 どことなく零のその表情は幸せそうで、荒井はわずかに口角を上げて見つめていた──




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