クトゥルフちっくな異形の子等の日常~番いと「花嫁」を添えて~

琴葉悠

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夢見の悪さ~『花嫁』を奪還~

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 くるくるくるり
 世界は私を中心に回っている。
 でも、私は世界の中心にいるだけで、何もかもがままならない。


「……」

 フエは目を覚ました。
 隣には柊が眠っている。
 それを見て微笑むと、フエはその場から起き上がり、柊の髪をそっと撫でてその場を後にした。




「フエ、どうした辛気くさい顔をして」

 会議しつでノートパソコンとにらめっこをしながら、ガタガタと何かを打ち込んでいる紅がフエがやって来たのでチラリと視線と向ける。

「ちょっと夢見が悪くてね」
「それは辛気くさくなるな」

 ノートパソコンを閉じ、どこかに消して紅はふぅと息をする。

「夢見が悪いということは絶対なにか起きる、そうだろう」
「うん、そうなの」
「これは、お前が見る『夢』なのだから」

 紅がそう言うと緊急連絡が入る。

「こちら紅」
『慎次だ! レオン達と見廻りしてたらどこからか出て来た異形に零をさらわれた、今追跡中だ!』
「わかった、こちらも向かう」

 通信をきり、紅はフエを見る。
 フエは暗い笑みを浮かべた。

「へぇ、零さんを誘拐ねぇ。命知らずにも程がある」
「……そうだな」
「『花嫁』を誘拐する馬鹿共の血肉一片たりとも残さない」

 フエはそう言って姿を消す。
 紅も後を追って姿を消した。




「くそ、移動速度が速いな!」
「レオン、お前の『犬』はどうだ⁈」
「既に出して追っかけてます、攻撃しようとすると逃げられるので追わせるのが手一杯ですけど!」
「くそが!」
「しかし、あんな異形が『花嫁』だと分かっていないはずなのに何故所長を連れ去るんでしょうねぇ?」
「知らんわ!」

「来たぞ」

 紅が異形を追いかけている三人の所にやって来て走る。

「フエは?」
「向こうだ」

 視線の方を向けば四方八方を黒い肉癖で覆い始めたフエが居た。

 異形は逃げようと方向転換した途端、レオンの「犬」に喰われ始めた。
 もがく異形は零だけを置き去りにして逃げ出したが、時すでに遅し。

 逃げた先には黒い肉癖があり、肉癖に食い殺された。

「本体が居るみたいね」
「どこに?」
「狭間。私ちょっくら行ってくるから零さんの具合をマヨイに見せて」
「分かった」

 フエが居なくなると、紅はマヨイを呼び出し、零の容態を見せる。

「へんなのおなかにいる、とりのぞくね」
「頼む」

 少し膨らんだ腹の部分に触手を取り付けると、すぽんと何かが抜けた。
 紅がそれを見せるようにマヨイにいい、マヨイはそれを紅の手のひらにのせた。
 胎児のようで、不気味な形をした異形の赤子だった。

 ガチ!

 紅が歯を合わせると、それは消えてなくなった。

「不味いな」
「みまわり、おしまいにして、じむしょもどろ?」
「そうだな」

 慎次は零を抱きかかえて五名は事務所に向かった。




 眠る零をベッドに寝かせて、マヨイは心配そうに世話をしている。
 するとそこへフエがやって来た。

「任務完了!」

 そう言って着地する。

「どうだった?」
「繁殖能力を失った異形の一族が、まだ繁殖能力がある連中に人間──『花嫁』に胎児を寄生させて出産させるって考えだったみたい。異形の子等と一緒にいたから『花嫁』と思ったみたいね、読みが一つ外れてたわ」
「マジかよ……」
「まぁ、例外だと思うから気にすんな」

 頭を抱える慎次にフエは笑って背中を叩く。

「で、その異形連中はどうした?」
「一匹残らず喰いましたが何か?」
「ならいい」

 紅の問いかけにフエがそう答えると、紅は頷いた。

「ん……」
「零さん?」
「ああ……ここは、私の部屋?」

 目を覚ました零に皆駆け寄る。
 零はベッドの上でぼんやりとしている。

「大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
「よかった、でも今日は大人しくしておいてね」

 フエはそう言ってペンダントに自分の血を垂らした。
 ペンダントは血を吸いより赤く輝く。

「これでいいかな?」
「いつもすまないな……」
「気にしないでよ」

 フエはカラカラと笑った。

「お前達もすまなかった」
「いいえ、零さんが無事なら」
「貴方が無事で何より……」
「お前が無事ならそれでいい」

 レオン、ニルス、慎次も謝罪する零に言う。

「じゃあ、帰ろうかマヨイ、紅姉さん」
「う!」
「そうだな帰るか」
「今日は有り難う……」
「だからー気にしないでよー」
「う」
「そうだ気にするな」


 フエと紅とマヨイはそう言って姿を消した。

「私とニルスで見廻りの続きをしてきます、慎次は零さんを」
「分かった」


 出て行くレオン達を見送り、慎次は椅子を移動させて、ベッドの近くに座る。

「荒井……」
「どうした」
「少し心細くてな……手を握ってほしい」
「分かった」

 慎次が手を握ると、零は安心したのかほどなくして眠りに落ちた。

「あんなの二度とごめんだな」

 慎次はぼそりと呟いた──





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