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その異形の子料理に夢中につき

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「で、どうしたんだ。私を住処に呼んで」

 珍しく住処に来ている零に、慎次が言う。

「フエが料理以外に目が行かなくなった」
「ほう」
「それでカレーを量産している」
「ん?」

 そこで、慎次の言葉に零は耳を疑った。

「カレーだけか」
「カレーだけだ」
「……何故」
「分からん」




 扉が開かれると、調理室ではでかい鍋にマヨイ印のルゥを入れて調理するフエの姿があった。
 扉が開く音があったのに反応はない。
 ただひたすらに皮をむき、野菜を切り、肉を切り、カレーを作っている。

「重傷だな」
「だろう?」

 料理をしているフエを横目に、食堂へと足を運ぶ。

「零さん!」
「零さん!」
「う!」

 エルとりらとマヨイが声をかけて来た。

「やぁ三人とも、料理は美味しいかな?」
「うん!」
「おいしいよ!」
「う!」

「マヨイ、零がお前の言葉が分かるからってお前の番い気にしてしゃべらないのは失礼だろう?」

 慎次がマヨイに言う。

「う~……ごめんなさい」
「いい、気にしなくて。あんな隼斗は見たことがない」
「ぶっ壊れてるからな」

 蓮の番いの康陽に面倒を見られて別テーブルでカレーを食べている隼斗を見て、零は寂しげに呟いた。

「零さん、隼斗さんのことすきだったの?」
「まさか、ありえん」
「どうして?」
「奴は異形だけでなく、異形の子も目の敵にしてたんだ、共同で異形を狩る私は忌々しい存在以外何者でもなかっただろうよ」
「そなの?」
「そうだ」

 マヨイの問いかけに頷く。

「隼斗さん、最初は私達の事嫌いだったんだ……」
「最初はな、今は違うだろう?」
「うん」

 マヨイが頷くと、零はマヨイの頭を撫でた。

「あんな奴だが宜しく頼む」
「うん!」

「おーい、カレーもってきたぞ、チキンカレー」
「おお、有り難う」
「辛いから気をつけろ」
「分かった」

 零のカップに麦茶を入れ、慎次は差し出す。
 零は食べ始める。

「っ~~! 辛い! が、この辛さがやみつきになる‼」
「そうか」

 バクバクと食べては麦茶を飲み干す零を見ながら、慎次も食べ始める。
 なるほど、人間にはこれは辛いのだな、と認識しながらカレーを味わった。




「え、つまり私が料理に夢中になってる間に零さん来て帰ったってこと?」
「そうだな」

 我に返ったフエは紅から事の次第を聞き青ざめる。

「ちょっとー! 声かけしてくれてもいいじゃん!」
「声かけしてもあのお前には届かないだろう」
「そんなぁ」




「フエの浮気者……」
「はいはい。どうどう」

 その会話を影で見ている柊を、宥める康陽だった──





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