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慈悲で無慈悲な王子様の御話
しおりを挟むこれは、とある国の王子様に関するお話――
昔々、ある所に、代々紫水晶のように美しい目を持って生まれる王が支配する国がありました。
その国に、白金色の髪に、白皙の美しい王子様がおりました。
王子様の目は紫水晶のように美しい紫の目をしておりました。
王子様には、目の色の違う妹がおりました。
父である王様にも、母である御后様にも、多くの者に感情を見せない王子様は、妹である王女様にだけ感情を見せ、笑顔を見せ、妹を可愛がりました。
王女様が結婚しても良い年齢になると、王女様は父である王様に言われて、大国に嫁ぐことが決まりました。
王様に反抗したことの無い、王子様は激昂し、その縁談に反論しました。
妹が、不幸になる、と。
王女様の結婚相手となる王子は、あまり評判は良くない男でした。
特に、女性の扱いが酷い、と。
ですが、王様は大国の王子が娘である王女様を気に入ったから、心配する必要はないと、いいました。
王子様はそれでも納得しません。
王様は、息子である王子様以外の王位継承権を持つ者がいないこともあり、王子様に何とか納得してもらおうとします。
王子様は、しばらく考えてこう言いました。
「もし、妹が不幸になったなら、私が何をしようとも、誰も止めないでいただきたい。私のすることを全て黙認していただきたい」
王様は、不幸になる訳がないと思い、王子様の言葉を認めました。
しばらくして王子様も、御后様をもって良い年頃になりました。
けれども、国中どこを探しても、王子様の心を射止める女性はいません。
どの同盟国の王女様達でさえ、貴族でさえ、王子様の心を射止めることはありませんでした。
そしてある日、王子様の言った事が現実になりました。
大国に嫁いだ王女様が、心身に深い傷を負い、更に心は幼児返りして戻ってきました。
王女様の負った傷はあまりにも酷く、王様はそれを息子である王子様に知られまいと彼女を幽閉しました。
けれども、王子様にそれはすぐさま気づかれてしまいました。
王子様は、父である王様にこう告げました。
「父上、約束を果たしていただきましょう」
王子様は、まず父を王座から退け、自分が王になりました。
王様になった彼は、妹の縁談を進めた自国の貴族、大臣達を罰しました。
そして前王である父を処刑し、母を幽閉しました。
王様となった王子様は、王子だった頃、父や大臣などの目を潜り抜け、大国によって苦役を強いられている国や、大国と敵対している国、大国に滅ぼされた国の生き残りなどと接触し、大国を滅ぼす準備を始めていました。
また、大国内部にある王や、次期王となる、妹の夫であった王子等への反感を持つ者達も取り込みました。
どんなに栄華を誇る大国であっても、敵意の矛先を外部からだけでなく内部からも受けてはどうしようもありませんでした。
捕えた大国の王子を、最愛の妹を傷つけた男を、王様は残忍な方法で処刑しました。
処刑された王子の側近達や、咎めもしない王と后等も、同様に処刑しました。
王様は、国の処遇は、手を貸してくれた者達に任せました。
王様はその後も誰一人とも、結婚することはありませんでした。
民や大臣達はこの国を終わらせるつもりなのだろうかと不安に思っていました。
その矢先、王様は自分と同じ色の目や髪の色をした赤ん坊を大臣達に見せました。
「この子は私の子だ、この子を次の王とする」
と。
大臣達は喜びましたが、母親は誰かと聞いても王様は答えませんでした。
やがて、王様の子が成長し、伴侶を見つけると王様は退位し、国を子に任せました。
賢き王に育てられた王子は良き王となりました。
王様をやめた元王様は、心の病んだ妹と静かに暮らしました。
妹は、兄である元王様だけに心を開き、幼子のように甘えたそうです。
どの女性も心引かれなかった王様の心を開き、子どもをなしたのは果たして誰なのでしょうか?
真相は──
彼と彼女だけが知っています。
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