慈悲で無慈悲な王子様の御話

琴葉悠

文字の大きさ
1 / 1

慈悲で無慈悲な王子様の御話

しおりを挟む




 これは、とある国の王子様に関するお話――




 昔々、ある所に、代々紫水晶のように美しい目を持って生まれる王が支配する国がありました。
 その国に、白金色の髪に、白皙の美しい王子様がおりました。
 王子様の目は紫水晶のように美しい紫の目をしておりました。

 王子様には、目の色の違う妹がおりました。

 父である王様にも、母である御后様にも、多くの者に感情を見せない王子様は、妹である王女様にだけ感情を見せ、笑顔を見せ、妹を可愛がりました。


 王女様が結婚しても良い年齢になると、王女様は父である王様に言われて、大国に嫁ぐことが決まりました。
 王様に反抗したことの無い、王子様は激昂し、その縁談に反論しました。

 妹が、不幸になる、と。

 王女様の結婚相手となる王子は、あまり評判は良くない男でした。
 特に、女性の扱いが酷い、と。

 ですが、王様は大国の王子が娘である王女様を気に入ったから、心配する必要はないと、いいました。
 王子様はそれでも納得しません。

 王様は、息子である王子様以外の王位継承権を持つ者がいないこともあり、王子様に何とか納得してもらおうとします。
 王子様は、しばらく考えてこう言いました。

「もし、妹が不幸になったなら、私が何をしようとも、誰も止めないでいただきたい。私のすることを全て黙認していただきたい」

 王様は、不幸になる訳がないと思い、王子様の言葉を認めました。


 しばらくして王子様も、御后様をもって良い年頃になりました。
 けれども、国中どこを探しても、王子様の心を射止める女性はいません。
 どの同盟国の王女様達でさえ、貴族でさえ、王子様の心を射止めることはありませんでした。




 そしてある日、王子様の言った事が現実になりました。

 大国に嫁いだ王女様が、心身に深い傷を負い、更に心は幼児返りして戻ってきました。
 王女様の負った傷はあまりにも酷く、王様はそれを息子である王子様に知られまいと彼女を幽閉しました。

 けれども、王子様にそれはすぐさま気づかれてしまいました。

 王子様は、父である王様にこう告げました。

「父上、約束を果たしていただきましょう」

 王子様は、まず父を王座から退け、自分が王になりました。
 王様になった彼は、妹の縁談を進めた自国の貴族、大臣達を罰しました。
 そして前王である父を処刑し、母を幽閉しました。




 王様となった王子様は、王子だった頃、父や大臣などの目を潜り抜け、大国によって苦役を強いられている国や、大国と敵対している国、大国に滅ぼされた国の生き残りなどと接触し、大国を滅ぼす準備を始めていました。
 また、大国内部にある王や、次期王となる、妹の夫であった王子等への反感を持つ者達も取り込みました。


 どんなに栄華を誇る大国であっても、敵意の矛先を外部からだけでなく内部からも受けてはどうしようもありませんでした。


 捕えた大国の王子を、最愛の妹を傷つけた男を、王様は残忍な方法で処刑しました。
 処刑された王子の側近達や、咎めもしない王と后等も、同様に処刑しました。

 王様は、国の処遇は、手を貸してくれた者達に任せました。




 王様はその後も誰一人とも、結婚することはありませんでした。
 民や大臣達はこの国を終わらせるつもりなのだろうかと不安に思っていました。

 その矢先、王様は自分と同じ色の目や髪の色をした赤ん坊を大臣達に見せました。
「この子は私の子だ、この子を次の王とする」
 と。

 大臣達は喜びましたが、母親は誰かと聞いても王様は答えませんでした。


 やがて、王様の子が成長し、伴侶を見つけると王様は退位し、国を子に任せました。
 賢き王に育てられた王子は良き王となりました。




 王様をやめた元王様は、心の病んだ妹と静かに暮らしました。
 妹は、兄である元王様だけに心を開き、幼子のように甘えたそうです。






 どの女性も心引かれなかった王様の心を開き、子どもをなしたのは果たして誰なのでしょうか?
 真相は──


 彼と彼女だけが知っています。






        
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。

桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。 それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。 でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。 そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

瑠璃の姫君と鉄黒の騎士

石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。 そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。 突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。 大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。 記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

処理中です...