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呪いが解ける

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 ゼロは捕まったフリをして、屋敷の前へとマグノリアが取り憑いた人間と共にやって来た。
「マグノリア」
「おうさ」

「何とか命喰いを捕縛した、案内を頼む」

「よくやってくれた、これで私は殺されなくて済む」
 男が現れた、その姿は夢で見た男の姿そのものだった。
「そうか、お前を殺せばいいのか」
「だそうだぜ?」
「?!」
 ゼロはナイフを手に持ち、構える。
「皆私を守れ! この娘を捕縛しろ!!」
 しかし、誰も怯えて近寄らない。
「くそ、役立たずが!」
 男はそう吐き捨てて逃げ出した。

 ゼロは他の連中に目もくれず、男を追う。

 マグノリアとシリウスを使って罠をくぐり抜け、男が逃げられない場所まで追い詰める。

「答えろ、何故お前を殺せば私は自由になる」
「命喰いは、その時の当主の命を喰らって他の命を喰らう必要がなくなる存在だ! お前は散々喰らってきたのだろう!? ならば私くらい見過ごせ!」
 みっともない命乞いに、ゼロは言う。
「嫌だね」
「父親を殺すのか!?」
「では貴様は娘を死なせようとしていることになるな」
 ゼロはそう言って近づき、シリウスで男の体を拘束する。
「死ね、私はそれで自由だ」

 ザシュ

 首を切り落とし、ゼロは息を吐き出した。
「お、おいおい、嬢ちゃん大丈夫か?」
「いや、今まで苦しさが残っていたが、今漸く消えた」
「お、つまりさっきのおっさんが言ってたとおり、命を喰らう必要がなくなったってことか!」
「そうだな」
 ゼロは命の感触を確かめていた。

 弱かった鼓動が強く、熱い物に変わっている事を噛み締めていた。

 すると、先ほど近寄らなかった連中がやってきた。
「何のようだ? 当主の仇討ちか?」
「いいえ、ご当主様」
 一人の言葉にゼロは周囲を見回す。
「私の事か?」
「はい、これでこのスルティス家の呪いは解けました」
「呪い?」
「はい、とある当主が多くの罪な気人々を殺した際、魔女から呪いを受けました。それほど命を喰いたいならお前の子孫に命を喰わねば生きられぬ者を産ませようと、呪いを解きたく場その物に当主の命を喰わせよ、と」
「では、聞こう。最初から私を牢屋に入れておけばよかったのではないのか? あの当主が死にたくなければ」
「最初に生まれた当主がそれをした際、呪いで一族の者が次々と亡くなり、それ以降人目の付かない場所に捨てる風習が付いたのです」
「嫌な風習だな。そしてお前達は私に何を望む」
 ゼロは吐き捨てるように言った。
「どうか当主として家を継いで欲しいのです、子は貴方しかおりません故」
 ゼロは髪をかき上げた。

 厄介なことになったと思ったのだ。

「で、どうするよ、嬢ちゃん」
「厄介だが、条件付きでなってやる」
 マグノリアにひそひそと話すとゼロは言った。
「構わん、だが条件がある」
「条件とは」
「私は旅に出る、その間は自分たちでどうにかしろ」
「それは困ります!」
「私はその魔女とやらに会いたい」
「復讐ですか!? おやめください」
「いや、只聞きたい事があるだけだ」

 そう言ってゼロはその場を後にした。
「おい、ゼロ。お前魔女の検討はついているのか?」
「ついているとも、マグノリア」
「ど、何処に」
「ソコにいるのだろう?」
 ゼロが振り返れば喪服姿の女が笑みを浮かべて立っていた──





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