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命喰いのゼロ
しおりを挟む「お、おいおいおい!? 魔女イザベルじゃねか?! ゼロ、逃げるぞ!!」
「向こうは戦う気も呪う気もない、安心しろ」
「で、でもよぉ」
慌てふためくマグノリアをゼロはいさめる。
「そうよ、小鳥ちゃん、私はソコの子を見に来たの」
「私が殺した人間についてか?」
「ええ、貴方は当主を殺すまでは人間から命を喰うことをしないと生きられなかった」
魔女──イザベルは淡々と述べる。
「貴方は無差別な殺戮はしなかった。悪人だけを殺した、ならば呪いはもういらないわね」
「魔女イザベル、貴方に問いたい」
「何かしら?」
「──命喰いとして死んでいった子らをどう思う?」
「……可哀想な事をしたと思うわ、もっと他の呪いにすれば良かったわ」
イザベルはふぅと息を吐いた。
「でもね、命喰いは当主が屑じゃないと生まれないの、そして命喰いが死ねば、当主の寿命は一気に縮む。次の子が生まれたら死ぬのは確実なくらいね」
「なるほど」
どちらにせよ、父親は死の運命から逃れられなかったことをゼロは理解する。
「解放された貴方は私を殺す?」
イザベルの問いにゼロは首を振った。
「別に、もう終わった事だ。私はここを去る、戻るかどうかは分からない」
「また悪人を殺す旅に出るの」
「そうだ、私はそれしか知らない。これからも」
「じゃあ、貴方に祝福を、どうか貴方に幸があることを──」
イザベルはそう言って姿を消した。
「で、どうするんだ?」
「行こう、マグノリア、シリウス」
ゼロは歩み出した。
「悪人はまだまだいる、命を喰らおう、私の手は血にまみれている、きれい事など今更だ」
「ひっひっひ、お嬢ちゃんのそういうとこ好きだぜ」
マグノリアは愉快そうに笑う。
シリウスはゼロの足下にすり寄る。
「何処へ行くんだ」
「海を見たい、海へ行こう」
「いいねぇ」
ゼロは歩み出す。
今まで以上に確かな足取りで。
悪人のみの命を喰らう娘が居た。
娘は今も悪人を殺し続けている。
命を喰らい、若い姿のまま。
傍らに悪魔を引き連れて。
名前はゼロ。
何も無かった彼女は、悪人を喰らう事に自らの生涯を捧げている──
悪人以外は決して殺さないことを誓って──
end
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