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婚約解消と婚約破棄~裏切られた者同士の婚約~
しおりを挟む私アイリーン・ディラックはディラック伯爵家の娘です。
父の友人であるウィルコックス侯爵様のご子息で次男のアルフ・ウィルコックスと婚約しておりました。
しかし、あるときお父様が言いました。
「アイリーン。婚約解消になった」
と、おっしゃいました。
やはり、と思う一方で一体何がと思いました。
「どういうことですか、お父様。説明責任は果たしてくださいな」
「……」
お父様は渋い顔をして話し始めました。
アルフですが、浮気をしてました。
それだけでなく、賭け事をして借金までこさえてました。
お父様と、ウィルコックス侯爵様は「こんな馬鹿と結婚させられる訳がない」「こんな馬鹿と娘を結婚させたくない」と意見が一致し、婚約は解消。
アルフは実家を追放されました。
かわいそうとは思いません、浮気をして、借金をして親に迷惑をかけていたのですから。
「……また、婚約相手探しからか……しかし、誰が良いのか」
お父様は頭を抱えます。
私も、どうしたものかと悩みました。
私の婚約解消を聞きつけた、友人達に夜会に誘われました。
もしかしたらいい人がいるかもしれないと。
──そんな都合の良い話あるはずがない──
とは思いつつも、彼女たちの提案を無下にすることはできず夜会に参加しました。
その日の夜会は騒がしかったです。
何事かと皆でその場所へと視線を向けると、美しい茶色の髪に、青い目のアルフの兄であるレックス様がいらっしゃいました。
ただ、レックス様はいつものお優しく端正な顔を怒りにゆがめ、婚約者である方を見ています。
「違うの、違うのレックス!!」
「違う? 何が違うだ!!」
レックス様が紙をばらまきました。
私は一枚がこちらに来たので拾い上げるとそこには──
レックス様の婚約者様であるジョディー・エッジ様の……浮気が詳細に書かれ、証拠の場面図も載っていました。
浮気とかで婚約解消したばかりの私にはちょっとげんなりくる内容です。
「私を侮辱する行動をしておいて、違うとよく言えたものだ!! お前とは婚約を破棄させてもらう!!」
「待って、レックス!! ねぇ、お願い!!」
「よるな!!」
レックス様はジョディ様の腕を払って夜会を後にしました。
よほど頭にきているのか、私の事に全く気づかずに。
「今日は、帰りますね。ごめんなさい」
私も、あまり気分が良くないので帰ることにしました。
「お父様」
「なんだい、アイリーン」
家に帰ると私はお父様に夜会での出来事を伝えました。
「……レックスも気の毒だな」
「ええ、あれほど大事にしていた婚約者様でしたもの、きっと女性不信になってもおかしくないですわ」
「それほどかやはり……」
お父様は渋い顔をしました。
「レックス様にお会いしたいですけど、今はそっとしておいた方が良いと思います……いくら私を可愛がってくださったとは言え、私も女性ですから」
「アイリーン」
「どうして、何も非がない方ばかり傷つくのでしょうね」
疲れたように言いました。
「お前、もしかしてアルフの事を……」
「それはそうですわ、いくらやんちゃとはいえ、婚約者でしたから。愛情がないとは言えないですし……」
私は言葉を濁しました。
「そうか……」
「では、失礼します、お父様。お休みなさい」
「ああ、お休みなさい、アイリーン」
そして、夜会から数日後──
「アイリーン、話がある」
「何でしょうお父様」
「お前の新しい婚約者が決まった」
私は少しいやそうな顔をしました。
だって、こんなに早くに決まるなんて絶対何かありますもの。
「……お父様、婚約者についての情報を」
「お前もよく知っている青年だ」
「?」
「レックスだ、ウィルコックス侯爵の嫡男。この間婚約者に浮気されたから婚約破棄をしたらしくてな、ならちょうどよいと」
「何がちょうどいいんですか」
お父様の言葉に、私は刺々しく返します。
レックス様は、婚約者様に浮気をされて傷ついているはずです。
あんな怒ったレックス様を見た事など私は一度もありませんから。
「それがな、最初はレックスも拒否したんだが、お前の婚約破棄の理由と弟の件を知って了承したらしい」
「何が良いんですか、これではまるで向こうが悪くて責任をとったみたいな変な形ではないですか」
「かもしれないが──レックスも、お前なら良い、と言ってな」
「はぁ……」
私はため息をつくしかありません。
婚約者だった、ジョディー様をあんなに大切にしていたのに、あんな裏切りをされたレックス様。
もし、私がアルフと結婚していたなら義兄になるはずの御方だった人。
それをすぐさま受け入れたとは考えづらいのです。
でも、きっと色々とあったし、家の事情などもあるのでしょう。
それに、浮気をされたレックス様なら、決して浮気をなさらないでしょう。
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