2 / 4
幸せな生活!!~何故そう労わられるのでしょう?~
しおりを挟む「ここが、今日から君が住まう場所だ。気に入ってくれるといいのだが……」
「まぁ!!」
ディートリヒ様が案内してくれた部屋に私は思わず歓声を上げます。
だって、ファイルヒェン王国であてがわれた部屋よりもとても品があって綺麗な部屋だったのです。
綺麗な部屋に、綺麗な調度品、綺麗なベッド、最高です!!
「こんな素敵な部屋に住んでいいなんて……私幸せ者です!!」
「ブリュンヒルデ……聞きたいことがある」
「はい何でしょう?」
「君には辛い事を聞くのは承知なのだが、あちらではどのような扱いを?」
私はきょとんとしてから、何でもないようにファイルヒェン王国での扱いを喋りました。
妃教育と国守りと何故か多いお茶会で自分の時間などなく、その上私の扱いは「国守り」としては当たり前だからと疲労困憊でも休ませてもらえないことが普通。
妃になるのだからこれ位勉強して普通、私に休みなど不要。
そんな日々を送っていたことを伝えました。
ディートリヒ様は話を聞き終わると酷く渋い表情をしておられました。
そしてその後私の手を握りしめてくれました。
「それほど辛い目に遭っていたのだね、でもここではそういう扱いはしない。『国守り』も無理にする必要はない」
「いいえ、愛するディートリヒ様の愛する国ですもの。それに『国守り』の役目、私嫌いではないのですよ、だってあのように歓迎してくれた方々の国を守るのですから」
「ブリュンヒルデ……」
私の言葉を聞いたディートリヒ様は安心した様に微笑んでくださいました。
「なので『国守り』最初のお仕事、結界張りを行います」
私はにこりと笑い、ディートリヒ様に言いました。
「地図だけで結界が張れるのはわかった、だがこの国の国土は広い。大丈夫かい?」
ディートリヒ様の持ってきた地図を見て私はにこりと笑います。
「国土の部分に色を付けてくださったおかげで結界がとても貼りやすいです、ご安心を」
「いや、そういう意味ではなくて……」
「では、少し集中しますので」
「わかった」
私は地図をじっと見てから目を閉じる。
頭の中にこの国の風景が浮かび上がる。
それらすべてを包み込むようなイメージを浮かべて私は結界を張る。
「……できました!!」
「――驚いた、急に君が光りを放ったから何事かと思えば光が一瞬で広がったのが見えた……」
「いえいえ、では次は――」
「待ちなさい」
「くぇっ」
次の作業に移ろうとするとディートリヒ様に抱きしめられて変な声が上がりました。
「……すまない。君は無自覚だろうが、我が国は『国守り』なくともやってきた実績がある、何かするなら休憩をしてからにしてくれ……」
「ですが、結界を張る前にこの国の守りをしていた騎士の方々が負傷しているのがみえましたわ。治療をしないと」
「……分かった、それが終わったら休むこと、いいね?」
「はい!!」
ディートリヒ様がどこか悲しい表情を浮かべているのが私には理解できませんでした。
「成程、そこまで扱き使われていたとは……」
ディートリヒからの言葉に、ディートハルトは深いため息をついた。
「ブリュンヒルデも無自覚の職業病状態にありました。これは治す必要があります」
「そこはお前達に任せよう、特にお前の言葉ならよく効くはずだディートリヒ」
「はい、父上……ところであの国はどうなっておりますか?」
「ファイルヒェン王国か?」
「はい」
ディートリヒからの言葉に、ディートハルトは呆れたように息を吐いた。
「既に散々たる有様よ」
「ワイバーンの群れがやってきてるんです何とかしてください!!」
「こちらにはシルバーウルフの群れがやってきてるんです!!」
「『国守り』様、お助けを、お助け下さい!! 何で居なくなったんだ!!」
国の各地から寄せられる、魔物襲来の情報にフリートヘルムは頭を抱えていた。
結界は既になくなっており、その上『国守り』に任せっきりにしていた為か、騎士団は魔物の群れから自身の身を守るのに精いっぱいで民や国土を守る力はない。
「エルマーめ、何と言う事をしてくれたんだ……!!」
フリートヘルムは他国に救援を求めたが、他の国は「自分達の事で手一杯だ」と拒否してきた。
新たに国で見つけた「聖女」達の力も「国守り」であったブリュンヒルデには遠く及ばず、結界は張り続けなければいけない状態で、交代で休むことすらできず、結界は既に砕け散っていた。
「自分達のしでかしてきたことがようやくわかったか?」
悩むフリートヘルムの前に、ディートハルトが姿を現した。
「ディートハルト!! 貴様、我が国の『国守り』を返せ!!」
フリートヘルムの怒鳴り声にディートハルトは呆れたような表情を浮かべた。
「我が国――と言いながら随分な扱いをしていたようではないか、結界を張らせ、近づいただけの魔物の殲滅等扱き使っているにも関わらず、休みをロクにやらず、妃教育でもロクな扱いをせず、そんなので良くもまぁ――」
「『我が国の』などとほざけるものだ」
ディートハルトの眼光に、フリートヘルムは息を飲んだ。
「この国の民も、民だ。守ってもらって当然と思い込んでいた故に居なくなった途端この有様だ」
ディートハルトはフリートヘルムを睨みつけたまま続けた。
「『国守り』の稀少性を理解していながら『国守り』を蔑ろにし続けた貴様らの末路を見届けさせてもらおう、精々あがくが良い」
ディートハルトはそう言って転移魔法で姿を消した。
「……なんてことだ……!!」
フリートヘルムは再度頭を抱えていた。
「何とかして『国守り』を確保しなければ……!!」
その目は血走っていた。
12
あなたにおすすめの小説
転生したら既にやらかして断罪された悪役令嬢で未亡人になっていました
山田ジギタリス
恋愛
私が悪役令嬢に転生したと気がついたのは夫の葬儀ででした。
既にやらかしてザマアされた悪役令嬢で罰として好色な老男爵の後妻におさまりすぐに未亡人になってました。
そんな私を好色な目で見る義息子二人。敵意丸出しなその嫁達。祖父そして父親にそっくりな男孫たち。
男も女も酷い婚家で孤立無援なダイアナを助けてくれたのは意外な人物で……。
ふわっとした世界観でのお話です。気軽にお読みください。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】わたくし、悪役令嬢のはずですわ……よね?〜ヒロインが猫!?本能に負けないで攻略してくださいませ!
碧井 汐桜香
恋愛
ある日突然、自分の前世を思い出したナリアンヌ・ハーマート公爵令嬢。
この世界は、自分が悪役令嬢の乙女ゲームの世界!?
そう思って、ヒロインの登場に備えて対策を練るナリアンヌ。
しかし、いざ登場したヒロインの挙動がおかしすぎます!?
逆ハールート狙いのはずなのに、まるで子猫のような行動ばかり。
ヒロインに振り回されるナリアンヌの運命は、国外追放?それとも?
他サイト様にも掲載しております
聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜
手嶋ゆき
恋愛
「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」
バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。
さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。
窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。
※一万文字以内の短編です。
※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
四季
恋愛
前妻の子であった私は義母義妹に虐げられていましたが、ある日城へ行ったことをきっかけに人生が変わりました。
醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる