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手書きPOPと、意地と、負けず嫌い
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「柊さん、これ特売に出すからPOP書いてくれる?」
──配属初日のことだった。
杉野チーフに頼まれ、生まれて初めて“POP”というものを見よう見まねで書いた。
確かに……お世辞にも上手いとは言えなかった。
……けれど。
翌日。
売り場を見ると、私が書いたはずのPOPが貼られておらず──
そこには“森野さんが書いたPOP”がどーんと貼られていた。
「?」
(私のPOPはどこ?)
不審に思って裏返すと──
なんと、
私のPOPの裏に森野さんのPOPが上書きされていた。
カチン、と音がした瞬間。
背後を品出しの商品を抱えた森野さんが通りながら、
「あ、それ汚かったから書き直しといた」
と、軽~く言い捨てて去っていった。
……カッチーーーーン!!!
汚いから書き直した?
はいはい、すみませんね!!
こちとら、POPなんて書いたことありませんよ!?
今どき全部パソコンで済ませますよ!?
販売士の資格取ったのに、手書きPOPの勉強してなくてすみませんね!!
──と、心の中で悪態を吐きまくった。
だがその日の業務を終え、自宅に戻った私は
すぐに「POP 書き方」を検索して勉強し始めていた。
そして、売り場に何気なく置かれていたペンにもちゃんと役割があることを知る。
「なるほど~。
極太ペンが“値段”、
角ペンが“商品名”、
丸ペンが“商品説明”なのね」
画用紙に何枚も何枚も書きながら、
“いつPOPを書けと言われても大丈夫な状態”に仕上げた。
……が。
こういう時に限って、
POPを書く仕事って来ないのよね。
森野さんとの“POP事件”がすっかり忘れられた頃だった。
「あれ? 本部から送られてきたPOP、間違えてる……。
ごめん、柊さん。間に合わせにPOP書いてくれる?
森野くんには、この前みたいな失礼なことはさせないから……」
杉野チーフが申し訳なさそうに、両手を合わせてお願いしてきた。
「はい、わかりました!」
私は、この数か月間こっそり自主練してきた成果を思いきり発揮するつもりで、
迷いなくペンを取った。
「お? 柊さん……POP上手くなったね~」
書き終わったものを見て、杉野チーフが目を丸くする。
「これなら、パソコンじゃなくても十分だわ」
「手書きのほうが、なんか温かい感じがしますよね~」
木月さんも嬉しそうに笑っていると――
そこへ、森野さんがふらっと現れた。
「ほらほら、森野くん。柊さん、POP上手になったよ」
杉野チーフが得意げに私のPOPを見せる。
森野さんは、ちらっと視線を寄越しただけで、
「ふーん」
と、ひとことだけ言って売り場へ歩いて行ってしまった。
……でも。
嫌味を言われなかった。
それだけで、私は心の中で “勝った!” とガッツポーズを決めていた。
***
品出しのやり方からカッターの持ち方まで、
森野さんは細かいところにまで厳しく注意をしてくる。
そのたびに私の負けず嫌いが発動し――
「絶対できるようになってやる!」と心の中で何度も拳を握った。
そして三か月後。
気づけば、同期の中でいちばん評価されるようになっていた──。
──配属初日のことだった。
杉野チーフに頼まれ、生まれて初めて“POP”というものを見よう見まねで書いた。
確かに……お世辞にも上手いとは言えなかった。
……けれど。
翌日。
売り場を見ると、私が書いたはずのPOPが貼られておらず──
そこには“森野さんが書いたPOP”がどーんと貼られていた。
「?」
(私のPOPはどこ?)
不審に思って裏返すと──
なんと、
私のPOPの裏に森野さんのPOPが上書きされていた。
カチン、と音がした瞬間。
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「あ、それ汚かったから書き直しといた」
と、軽~く言い捨てて去っていった。
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汚いから書き直した?
はいはい、すみませんね!!
こちとら、POPなんて書いたことありませんよ!?
今どき全部パソコンで済ませますよ!?
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──と、心の中で悪態を吐きまくった。
だがその日の業務を終え、自宅に戻った私は
すぐに「POP 書き方」を検索して勉強し始めていた。
そして、売り場に何気なく置かれていたペンにもちゃんと役割があることを知る。
「なるほど~。
極太ペンが“値段”、
角ペンが“商品名”、
丸ペンが“商品説明”なのね」
画用紙に何枚も何枚も書きながら、
“いつPOPを書けと言われても大丈夫な状態”に仕上げた。
……が。
こういう時に限って、
POPを書く仕事って来ないのよね。
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「あれ? 本部から送られてきたPOP、間違えてる……。
ごめん、柊さん。間に合わせにPOP書いてくれる?
森野くんには、この前みたいな失礼なことはさせないから……」
杉野チーフが申し訳なさそうに、両手を合わせてお願いしてきた。
「はい、わかりました!」
私は、この数か月間こっそり自主練してきた成果を思いきり発揮するつもりで、
迷いなくペンを取った。
「お? 柊さん……POP上手くなったね~」
書き終わったものを見て、杉野チーフが目を丸くする。
「これなら、パソコンじゃなくても十分だわ」
「手書きのほうが、なんか温かい感じがしますよね~」
木月さんも嬉しそうに笑っていると――
そこへ、森野さんがふらっと現れた。
「ほらほら、森野くん。柊さん、POP上手になったよ」
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森野さんは、ちらっと視線を寄越しただけで、
「ふーん」
と、ひとことだけ言って売り場へ歩いて行ってしまった。
……でも。
嫌味を言われなかった。
それだけで、私は心の中で “勝った!” とガッツポーズを決めていた。
***
品出しのやり方からカッターの持ち方まで、
森野さんは細かいところにまで厳しく注意をしてくる。
そのたびに私の負けず嫌いが発動し――
「絶対できるようになってやる!」と心の中で何度も拳を握った。
そして三か月後。
気づけば、同期の中でいちばん評価されるようになっていた──。
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