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オマケ小説~夏休み~

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「熊さん、聞いてよ!!」
  我が家に来てから、友也が泣きながら何やら騒いでいる。
ただ、泣いているから何を言ってのか全くわからない。困った顔をしていると
「大方、客に迫られた健人君を偶然見かけて、嫉妬して家出して来たんだろう?」
と創さんの言葉に友也が身体をビクっと震わせた。
「え?そうなの?」
驚く俺に、創さんは呆れた顔して
「もう、この光景を何度見たことか……」
そう呟いた。
「蓮君も、こうなるの分かってて旅行に行ったんだろうな。だから俺も旅行に行こうと思ったのに」
ブツブツと文句を言っている創さんに
「創先生、酷い!!誰のお陰で、熊さんと付き合えたと思ってるんだよ!」
ダンダンと机を叩き叫ぶ友也に、創さんは俺に合図して席を外した。
疑問の視線を向けながら、俺は友也の愚痴をひたすら聞いていた。
話をまとめると、どうやら繁忙期で健人君のお店を手伝っていたら、健人が常連の女性客にキスされたのを見てしまったらしい。
健人君は相手は酔っ払いなんだからと、友也の話を聞いてくれなかったらしい。
それが友也には尚更、面白くなかったという話だ。
「健人は、俺なんかどうでも良いんだ~!!」
この言葉から、また、同じ話が始まる。
下手な酔っ払いより面倒だと思っていると
「友也!お前、此処に居たのか!」
と、健人君が現れた。
「け……健人!!なんで此処に?」
泣き叫んでいた友也が顔を引き攣らせる。
「創先生から連絡来たんだよ!心配したんだぞ!!」
怒った顔をする健人君に
「心配?嘘つけ!」
何故か俺にしがみつき
「俺、此処で暮らす!もう、健人のところになんか帰らない!!」
そう叫んだのだ。
俺、この段階でハルさんの苦労を垣間見た。
「友也……」
と、何か言おうとした時
「はじめ!」
って創さんに呼ばれ、首を横に振られる。
なんだろう?と思っていると
「はいはい、クレームは家で聞くから。ほら、帰るよ」
健人君が友也の身体を俺から引き剥がそうとすると、友也が俺に必死にしがみついて離れない。
「い~や~だ~!帰らない!」
「友也!」
健人と友也のやりとりを唖然として見ていると、創さんが俺の背中に周った。
「?」
疑問の視線を向けると、突然、友也が笑い出したと同時に友也の腕が離れて、健人君に抱えられえてしまう。
「創先生!くすぐるなんて卑怯だぞ!」
騒ぐ友也に、創さんが絶対零度の笑顔を浮かべ
「友也君?僕が笑顔のうちに帰ってもらえないかな?ただでさえ、僕とはじめは2人っきりの時間が無いに等しいの分かってるよねっ!」
ほぼ脅迫に近い創さんの言葉に、友也が静かになった。
「お騒がせしました」
そう言って健人君が歩き出したので
「あの!」
と声を掛ける。
「折角来たんですから、今日は泊まっていったらどうですか?なんのお構いも出来ませんが……」
そう言った俺に
「はぁ!」
って創さんが怒りの声を上げ
「でも、折角の2人の時間を……」
と健人君が気にしている。
友也はもちろん
「熊さん!大好き!!」
って叫んだ。
まぁ、なんだ。
折角集まったんだから、一緒に過ごすのもありだと俺は思うんだよね。
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