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令嬢が慎ましいって、誰が決めたの?

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すると、レイモンド兄様がお母様に続いて
「レイモンド・バルフレアだ。よろしく」
と、笑顔を浮かべてアレクに右手を差し出した。でもアレクはニコリともせずに、無表情でレイモンド兄様の手を握り返すと、兄様が手を離したと同時に
「彼は幼馴染みの、ルイス・セヴァランスだ」
そう言って、ルイス様をアレクに紹介したのだ。するとルイス様は、大好きなタレ目が無くなる笑顔をふわりと浮かべて
「初めまして。ルイスと呼んでください」
と言って握手をしたのだ。
(この流れで、私もルイス様に握手してもらっちゃおう~)と、アレクの隣に並ぼうとした。その瞬間、レイモンド兄様が私の頭を掴んで阻止して来たのだ。
「レイモンド兄様、何をなさるの!痛いですわ!」
「お~ま~え~!今、何をしようとしていた?」
ギロリと睨まれ、『えへっ!』っと笑いながら
「私もルイス様に握手を……」
と言いかけると、頭を掴んでいる手に力が入る。
「痛い!痛い!兄様、痛いですって!」
涙目で叫ぶ私を、アレクが冷めた目で見ている。私はそんなアレクに、慌てて兄様に頭を掴まれたままでドレスのスカートを軽く摘み
「アレク様、初めまして。私はフレイアと申します」
と、優雅に挨拶をした。
そんな私達にお父様が咳払いをして
「レイモンド、挨拶の時位は手を離してやれ」
そう呟くと
「お言葉ですが、父上。手を離したら又、フレイアこいつがルイスに何をするか分からないんですよ」
と言われてしまう。
「まぁ!私が、ルイス様に意地悪でもすると思っていらっしゃるの!」
「逆だ、逆!ルイスにベタベタ付き纏うんじゃないかと心配しているんだよ!」
「そんな!」
反論しようとした私に
「じゃあ、何もしないと誓えるか?」
と叫び、私の頭を掴んでいた手を離した。
すると、レイモンド兄様の影になっていたルイス様の愛らしい顔が見えた瞬間、ショタルイス様の破壊的な可愛らしさに理性が崩壊して
「好き!」
と抱きつこうとして、レイモンド兄様に再び頭を掴まれた。
「ほら、こうなるんですよ!」
「ちょっと位、良いじゃないですかー!」
「お前は変態オヤジか!」
「変態オヤジでも良いから、ルイス様に触りたい~!」
手のリーチが長いレイモンド兄様の腕に阻まれ、その場でジタバタ暴れる私と、ルイス様に近付かせないようにしているレイモンド兄様との攻防が続いていると、背後から『プッ』と吹き出す声が聞こえた。
驚いて視線を向けると、笑っていたアレクが慌てて顔を平常モードに戻そうとしている。でも、私と目が合った瞬間、思い出したように吹き出して、声を上げて笑い出したのだ。
しかも、笑った顔が可愛いのなんのって!するとお父様は嬉しそうに微笑み
「こんな騒がしい家ですが、しばらく滞在していて下さいね」
と、アレクに呟いた。
アレクはお父様の言葉に、笑っていた顔を元の無表情に戻すと小さく頷いた。
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