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令嬢が慎ましいって、誰が決めたの?②

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そんな二人を眺めていると、お父様が再び咳払いをすると
「所で、フレイア。お前は、何でそんなに粉まみれなんだ?」
と聞かれ、我に返った。
「いけない!ルイス様に食べて頂こうと、マークに頼んでパンを作っておりましたの」
そう叫び、調理場に戻ろうとした私の腕をお父様が掴み
「フレイア?お前は、どうしてそんなにルイス、ルイス騒いでいるんだ?」
怖い顔をして呟いた。
私が笑顔で
「それは、ルイス様が大好……モゴッ」
と答えようとした口を、レイモンド兄様に塞がれてしまう。
「もう一人の兄のように、慕っているんだよな?」
と叫ぶと、私の耳元で
「お父様にルイスが好きだとバレたら、永遠に会えなくなるぞ」
そう囁かれ、私は慌てて頷いた。
それでもひきつり笑いするお父様に、これは逃げるが勝ちだと判断した。
でも、一人で逃げたら絶対に怒られると思い、目の前のアレクの腕を掴むと
「アレク様、一緒にパンを作りましょう!」
と言って、脱兎のごとく逃げ出した。
「え?ちょっと……」
戸惑うアレクを無視して料理場まで走り込むと、顔を見合わせて爆笑した。
「お父様はね、普段は優しいのですけれど、怒ると怖いの。だから、レイモンド兄様がお父様の怒りを鎮めて下さるまでは、此処に退避していましょう」
そう言って微笑むと、頭にゴツンっとゲンコツが落ちる音と共に激痛が走った。
「フレイアお嬢様!また、皆様を困らせたのですか!」
人の良さそうな顔をした、恰幅のいいマークがわざと怒った顔をしている。
「だって……粉まみれだと怒られたの……」
しょんぼりした顔を作って言うと
「それは……私にも責任がありますね」
と、マークも神妙な顔をした。
これで無事に終わると思った瞬間
「もう、お嬢様を調理場に入れるのを禁止にしないと……」
そう言い出したのだ。
「えっ!」
驚く私に、マークは神妙な顔のまま
「そもそも、普通は公爵家の令嬢が調理場に出入りなんてなさいませんし」
と呟いた。
すると、巻き添えを食ったアレクまでも頷いているじゃない!
「嫌よ!そんなの困るわ!」
慌てて叫んだ私に、アレクが不思議そうな顔をして
「どうして困るんだ?」
なんて聞いて来た。
「ルイス様の胃袋を掴んで、私無しでは生きられなくする計画がダメになるじゃない!」
と叫ぼうとして、私は開きかけた口を噤む。
レイモンド兄様の『お父様にルイスが好きだとバレたら、永遠に会えなくなるぞ』の言葉が頭に過ぎったからだ。
ルイス様に会えなくなるなんて、折角、フラソに転生した意味が無い!
私は少し考えてから
「将来、伴侶になる方(私的には、ルイス様一択だけど)の胃袋を掴みたいの!」
と叫んだ。
するとマークも少し考えると
「成程、それは素晴らしい考えですね」
そう言ってから
「で、フレイア様が腕を掴んでいらっしゃるお方はどなたですか?」
と聞かれて、私は慌ててマークにアレクを紹介した。
「マーク。彼は、今日から我が家に暫く滞在なさるアレク様よ」
そう紹介すると、マークは目を見開いて
「こりゃあ、大変だ!今日の夕食は奮発しないと!」
腕まくりして叫ぶマークに、アレクは顔を曇らせた。
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