28 / 33
最終話
季節が移ろい、僕の妊娠は確実なものになった。太陽は複雑な顔をしていたけど、元々優しい子なんだろうな。
何度も出て行こうとする僕を引き止め、今では父親の真似事をしている。
「考えてみたら、ヒートの時のすぐ後でしょう?俺が父親かもしれない」
そう言って笑う太陽に、僕は何度も救われた。
恭弥は山場を乗り越えたけど、いまだに目を覚ます事は無かった。
医療費は相楽の家から出ているらしいが、敦子様の事が向こうで公になるのを恐れ、恭弥は運ばれた病院で今も眠り続けている。
僕は毎日、病院へ足を運び
「恭弥、お腹が大分目立って来たよ」
「恭弥。赤ちゃん、順調だって」
手を握り、ずっと話しかけ続けた。
石井先生の話では、このまま目を開ける事無く内臓の機能が衰えて亡くなるかもしれないと言われた。
「恭弥……、目を開けてよ……」
温かい大きな手を握り締め、僕は恭弥を失う恐怖と背中合わせの日々を過ごしていた。
春が来て…夏が過ぎ…、秋を迎えた頃に、僕は恭弥にそっくりな男の子を出産した。
相楽家と鵜森家から援助があり、石井先生曰く。3人で生活していた頃より、裕福らしい。
石井先生も那月おじさんも、何故か太陽までもが可愛がってくれて、たくさんの人の優しさと愛情で僕と恭弥の子供はスクスクと育っている。
「今日、検診の後に病院に連れて行くんだろう?」
息子の恭介に上着を着せている僕に、那月おじさんが声を掛けて来た。
恭介が生まれて一番喜んだのは、なにを隠そう那月おじさんだった。
「俺も原稿終わったし、気分転換に一緒に行くよ」
そう言って車の鍵を手にした。
「恭介、那月お兄ちゃんの車でお出かけしような~」
って、僕が抱っこ紐をしている恭介の頬に触れた。
今日も、眠り続ける恭弥に声を掛けに行く。
いつ目を覚ますのか…。
それともそのままなのか…。
不安に押しつぶされそうになる僕を、3人が支えてくれた。
「あれ?今日は3ヶ月検診?俺も一緒に行って良い?」
大学生になった太陽が、僕たちの声を聞きつけて部屋から出て来た。
……結局、毎回、恭介の検診や病院はこの4人なんだよな。
僕が苦笑いを浮かべると、那月おじさんが車にエンジンを掛けた。
病院へ検診に行くと
「あらあら!又、若いパパとおじいちゃんと一緒で良いですね~」
って看護師さんに言われる。
「おじいちゃん…」
「若いパパ!」
落ち込む那月おじさんと、喜ぶ太陽を横目にいつもの病室へと向かう。
病室に入ると、相変わらず眠る恭弥の姿。
「恭弥、今日はやっと僕たちの子供を連れて来れたよ」
僕は話しかけながら、部屋のカーテンを開ける。
今日はなんだか温かい日差しが窓から差し込む。
太陽は恭介を抱っこしながら
「早く目を覚まさないと、俺が父親になっちゃうよ~」
って言いながら、恭介をあやしている。
僕が恭介をあやす太陽を見て笑っていると、恭介が突然、恭弥に手を伸ばして何か話している。
「どうした?恭介」
僕が抱っこして恭弥のそばに連れて行くと、恭介が恭弥の頬に触れて「う~、う~」って話しかけている。
恭介の小さな手が、恭弥の頬をペチペチと叩いて何かをずっと話している。
すると恭弥の瞼がぴくりと動いた…ような気がする。
「恭弥?」
僕が恭弥の手を取って叫ぶと、ゆっくりと恭弥の目が開いた。
「月夜…」
声が出ない唇が、僕の名前を呟く。
「恭弥!僕が分かる?」
嬉しくて涙が溢れ出す。
僕の声に、太陽は僕たちに近付き
「先生!…俺、那月と医者を呼んでくる!」
そう叫んで病室を飛び出した。
恭弥はゆっくりと微笑み、僕の頬に触れる。
「おはよう、眠り姫。待ちくたびれて、先にきみと僕の愛の結晶を1人で産んじゃったよ」
僕の頬に触れる恭弥にそう呟いて、僕は恭弥の唇にキスを落とした。
やっと…やっと…僕たちの時間が動き出した。
これからゆっくり、3人で幸せの時間を紡いていこう。
もう……相楽の家も、鵜森の家も関係ない。僕と恭弥、そして恭介の3人で。
その未来はきっと、光り輝いている筈。
【完】
何度も出て行こうとする僕を引き止め、今では父親の真似事をしている。
「考えてみたら、ヒートの時のすぐ後でしょう?俺が父親かもしれない」
そう言って笑う太陽に、僕は何度も救われた。
恭弥は山場を乗り越えたけど、いまだに目を覚ます事は無かった。
医療費は相楽の家から出ているらしいが、敦子様の事が向こうで公になるのを恐れ、恭弥は運ばれた病院で今も眠り続けている。
僕は毎日、病院へ足を運び
「恭弥、お腹が大分目立って来たよ」
「恭弥。赤ちゃん、順調だって」
手を握り、ずっと話しかけ続けた。
石井先生の話では、このまま目を開ける事無く内臓の機能が衰えて亡くなるかもしれないと言われた。
「恭弥……、目を開けてよ……」
温かい大きな手を握り締め、僕は恭弥を失う恐怖と背中合わせの日々を過ごしていた。
春が来て…夏が過ぎ…、秋を迎えた頃に、僕は恭弥にそっくりな男の子を出産した。
相楽家と鵜森家から援助があり、石井先生曰く。3人で生活していた頃より、裕福らしい。
石井先生も那月おじさんも、何故か太陽までもが可愛がってくれて、たくさんの人の優しさと愛情で僕と恭弥の子供はスクスクと育っている。
「今日、検診の後に病院に連れて行くんだろう?」
息子の恭介に上着を着せている僕に、那月おじさんが声を掛けて来た。
恭介が生まれて一番喜んだのは、なにを隠そう那月おじさんだった。
「俺も原稿終わったし、気分転換に一緒に行くよ」
そう言って車の鍵を手にした。
「恭介、那月お兄ちゃんの車でお出かけしような~」
って、僕が抱っこ紐をしている恭介の頬に触れた。
今日も、眠り続ける恭弥に声を掛けに行く。
いつ目を覚ますのか…。
それともそのままなのか…。
不安に押しつぶされそうになる僕を、3人が支えてくれた。
「あれ?今日は3ヶ月検診?俺も一緒に行って良い?」
大学生になった太陽が、僕たちの声を聞きつけて部屋から出て来た。
……結局、毎回、恭介の検診や病院はこの4人なんだよな。
僕が苦笑いを浮かべると、那月おじさんが車にエンジンを掛けた。
病院へ検診に行くと
「あらあら!又、若いパパとおじいちゃんと一緒で良いですね~」
って看護師さんに言われる。
「おじいちゃん…」
「若いパパ!」
落ち込む那月おじさんと、喜ぶ太陽を横目にいつもの病室へと向かう。
病室に入ると、相変わらず眠る恭弥の姿。
「恭弥、今日はやっと僕たちの子供を連れて来れたよ」
僕は話しかけながら、部屋のカーテンを開ける。
今日はなんだか温かい日差しが窓から差し込む。
太陽は恭介を抱っこしながら
「早く目を覚まさないと、俺が父親になっちゃうよ~」
って言いながら、恭介をあやしている。
僕が恭介をあやす太陽を見て笑っていると、恭介が突然、恭弥に手を伸ばして何か話している。
「どうした?恭介」
僕が抱っこして恭弥のそばに連れて行くと、恭介が恭弥の頬に触れて「う~、う~」って話しかけている。
恭介の小さな手が、恭弥の頬をペチペチと叩いて何かをずっと話している。
すると恭弥の瞼がぴくりと動いた…ような気がする。
「恭弥?」
僕が恭弥の手を取って叫ぶと、ゆっくりと恭弥の目が開いた。
「月夜…」
声が出ない唇が、僕の名前を呟く。
「恭弥!僕が分かる?」
嬉しくて涙が溢れ出す。
僕の声に、太陽は僕たちに近付き
「先生!…俺、那月と医者を呼んでくる!」
そう叫んで病室を飛び出した。
恭弥はゆっくりと微笑み、僕の頬に触れる。
「おはよう、眠り姫。待ちくたびれて、先にきみと僕の愛の結晶を1人で産んじゃったよ」
僕の頬に触れる恭弥にそう呟いて、僕は恭弥の唇にキスを落とした。
やっと…やっと…僕たちの時間が動き出した。
これからゆっくり、3人で幸せの時間を紡いていこう。
もう……相楽の家も、鵜森の家も関係ない。僕と恭弥、そして恭介の3人で。
その未来はきっと、光り輝いている筈。
【完】
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
全寮制の学園に行ったら運命の番に溺愛された話♡
白井由紀
BL
【BL作品】
絶対に溺愛&番たいα×絶対に平穏な日々を過ごしたいΩ
田舎育ちのオメガ、白雪ゆず。東京に憧れを持っており、全寮制私立〇〇学園に入学するために、やっとの思いで上京。しかし、私立〇〇学園にはカースト制度があり、ゆずは一般家庭で育ったため最下位。ただでさえ、いじめられるのに、カースト1位の人が運命の番だなんて…。ゆずは会いたくないのに、運命の番に出会ってしまう…。やはり運命は変えられないのか!
学園生活で繰り広げられる身分差溺愛ストーリー♡
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承ください🙇♂️
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
金曜日の少年~「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく~
大波小波
BL
貧しい家庭に育ち、さらに第二性がオメガである御影 駿(みかげ しゅん)は、スクールカーストの底辺にいた。
そんな駿は、思いきって憧れの生徒会書記・篠崎(しのざき)にラブレターを書く。
だが、ちょっとした行き違いで、その手紙は生徒会長・天宮司 伊織(てんぐうじ いおり)の手に渡ってしまった。
駿に興味を持った伊織は、彼を新しい玩具にしようと、従者『金曜日の少年』に任命するが、そのことによってお互いは少しずつ変わってゆく。