8 / 119
第一章
遥と幸太~時々、冬夜~3
しおりを挟む
自分だけドキドキしていて、冬夜の規則正しい心音に絶望感が増すだけだった。
遙は冬夜の背中に腕を回して
「もう2度とこんなこと言わないって約束する。
明日からは友達に戻るから……だから、もう少しだけこのままでいさせて」
必死に叫んだ遙に、冬夜は大きな溜息をつくと
「分かった」
とだけ短く答えた。
少しの時間だけ、初めて冬夜を独り占めした時間だった。
気持ちが落ち着き、ゆっくりと冬夜から離れた頃には涙も枯れ果てていた。
そんな遙の顔を見ると、冬夜は「プッ」と吹き出し
「折角の美人が台無しだなぁ~」
そう言いながら、遥の涙を大きな手で拭った。
これが冬夜に触れられる最後のチャンスだと……分かっていたから、遙はその手に自分の手を当ててそっとキスをした。
出会いは中学生の頃だった。
冬夜に出会ってから、誰も目に入らなかった。好きで好きで好きで……でも、決して手の届かない人。
ゆっくり遙が冬夜を見上げ
「ごめんね、ありがとう」
また込み上がって来る涙を我慢しながら、必死に笑顔を作った。
その時、何故か振られた自分よりも冬夜が傷付いた顔で遥を見つめていた。
悲しそうに揺れた瞳が近付いて来て、ゆっくりと触れたか触れないか分からないようなキスを落とされた。
「えっ?」
驚いて見上げた遙に、冬夜は悲しそうに微笑むと
「ごめん」
とだけ呟いたのだ。
その声は、どこか悲し気で……どこか切ない声だった。
まるで振られた自分よりも、深く傷ついているかのような冬夜の声に、遥は自分の想いが決して冬夜には届かないのだと実感したのを思い出す。
翌日、冬夜はいつも通りに出勤して来た。
ただあれ以来、遙と2人きりにならないようにしているようだった。
「先輩?」
ぼんやり思い出していると、幸太が不思議そうに遙の顔を見つめている。
「あ……ごめん、ごめん」
必死に笑顔を作ると、幸太がそっと遙の頬に触れて
「遙先輩。僕の前では、無理して笑わなくて良いんだよ。僕は、どんな遙先輩だって受け止めますから」
無邪気な笑顔を浮かべ幸太が呟いた。
「幸太……」
泣き出しそうになるのを誤魔化す為に、幸太のオデコを軽くデコピンして
「幸太の分際で生意気!」
そう言って笑った。
遙は冬夜の背中に腕を回して
「もう2度とこんなこと言わないって約束する。
明日からは友達に戻るから……だから、もう少しだけこのままでいさせて」
必死に叫んだ遙に、冬夜は大きな溜息をつくと
「分かった」
とだけ短く答えた。
少しの時間だけ、初めて冬夜を独り占めした時間だった。
気持ちが落ち着き、ゆっくりと冬夜から離れた頃には涙も枯れ果てていた。
そんな遙の顔を見ると、冬夜は「プッ」と吹き出し
「折角の美人が台無しだなぁ~」
そう言いながら、遥の涙を大きな手で拭った。
これが冬夜に触れられる最後のチャンスだと……分かっていたから、遙はその手に自分の手を当ててそっとキスをした。
出会いは中学生の頃だった。
冬夜に出会ってから、誰も目に入らなかった。好きで好きで好きで……でも、決して手の届かない人。
ゆっくり遙が冬夜を見上げ
「ごめんね、ありがとう」
また込み上がって来る涙を我慢しながら、必死に笑顔を作った。
その時、何故か振られた自分よりも冬夜が傷付いた顔で遥を見つめていた。
悲しそうに揺れた瞳が近付いて来て、ゆっくりと触れたか触れないか分からないようなキスを落とされた。
「えっ?」
驚いて見上げた遙に、冬夜は悲しそうに微笑むと
「ごめん」
とだけ呟いたのだ。
その声は、どこか悲し気で……どこか切ない声だった。
まるで振られた自分よりも、深く傷ついているかのような冬夜の声に、遥は自分の想いが決して冬夜には届かないのだと実感したのを思い出す。
翌日、冬夜はいつも通りに出勤して来た。
ただあれ以来、遙と2人きりにならないようにしているようだった。
「先輩?」
ぼんやり思い出していると、幸太が不思議そうに遙の顔を見つめている。
「あ……ごめん、ごめん」
必死に笑顔を作ると、幸太がそっと遙の頬に触れて
「遙先輩。僕の前では、無理して笑わなくて良いんだよ。僕は、どんな遙先輩だって受け止めますから」
無邪気な笑顔を浮かべ幸太が呟いた。
「幸太……」
泣き出しそうになるのを誤魔化す為に、幸太のオデコを軽くデコピンして
「幸太の分際で生意気!」
そう言って笑った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは
紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。
真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。
婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。
白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる