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第四章
三郎太の決意③
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「よぉ! やっぱり来たか」
三郎太が翠の歩いていた方向に早足で歩いていると、橋のたもとにもたれて翠が待っていた。
三郎太は、なんとなく翠が待っているような気がしていた。
「あなたは……神出鬼没ですね」
表情を変えずに答える三郎太に
「そうか?」
と、大して興味がなさそうに答えると
「さて……どうするかな。友頼は、お前に会いたいだろうしな……」
翠はそう呟くと
「友頼は今、俺が作った結界の中にいる。入ったら最後、お前はもう、あの母子に会えなくなるぞ」
と続けた。
三郎太が翠を真っ直ぐに見つめ
「お別れはして来た」
と答えると
「……覚悟して来たってわけだ」
そう言うと、ゆっくりと歩き出した。
「……にしてもお前、緊張感なさすぎ」
翠はそう言って、音もなく抜刀した。
「なにをする!」
三郎太が叫んだ声と共に、閃光が三郎太の横を通り過ぎた。
すると背後から、バタバタと人が倒れる音が聞こえた。
───それはまるで、時が止まったようだった。
刀が作り出す美しい閃光は、人のものとは思えなかった。
「お前さ、着いて来るなら気を付けろよ」
刀をはらい、血糊を吹き飛ばして刀を鞘に入れる姿さえ静かで美しい。
「着けられてたぞ」
翠の言葉に、三郎太は辺りを見回した。
翠を追いかける時、辺りには気を付けていたし、人混みに紛れるように来た筈なのに……。
それでも着けられていたのには、三郎太も驚いた。
きっと……晶や頼久にも人を付けているのだろう。
それは……二人を心配してではなく、翡翠の亡骸を探している……ただそれだけの為に。
三郎太の心に、暗い闇が堕ちて来る。
───あんな奴に、全てを奪われた
そう思っていると
「なんでそんな顔してるんだ?
もう、敵はいないよ。全部切ったから」
翠の言葉に、三郎太はハッとして翠の顔を見た。
「何? 人を切るなんて酷い……とでも言いたい?」
小さく笑う翠に、三郎太は首を横に振った。
三郎太もきっと、同じ事をしただろう。
自分と翠が行く先に、友頼はいる。
それが知られたら、あの日のようにたくさんの家来を連れて近隣の村を襲撃するだろう。
そう考えていると、翠は小さく笑い
「心配するな……。何人来ようとも、全員、叩き切ってやる」
と呟いた。
その笑顔は、凍り付く程に美しい。
こんなにも翡翠様に似ているのに、なんて残酷に美しく笑うのだろう───。
三郎太はそう思いながら、陽だまりのように優しく笑う翡翠を思い出した。
『三郎太、三郎太』
鈴の音のように美しい声。
自分に差し出される手は、いつだって優しかった。
その翡翠によく似た、目の前の冷たく笑う翠という男。
翡翠が光から、翠は影のような存在。
この世界を、暗闇に染めるのは───翠なのかもしれない。
三郎太そう思いながら
「着いて来い」
そう言って歩き出した翠に続いた。
前を歩く翠の髪の毛を、風がふわりと揺らした。
その風は、懐かしい幼い頃にくらした村の風だった。
『三郎太、おかえりなさい』
黄色いタンポポの花が咲き乱れる草原で、三郎太はタンポポに囲まれて笑う翡翠の幻を見た───
『チリン……チリン……チリン……』
何処かから聞こえる鈴の音に、三郎太の瞳からは涙が溢れ出して止まらなかった。
それはきっと、この後に起こる悲しくも切ない悲劇の足音だったのかもしれない。
三郎太が翠の歩いていた方向に早足で歩いていると、橋のたもとにもたれて翠が待っていた。
三郎太は、なんとなく翠が待っているような気がしていた。
「あなたは……神出鬼没ですね」
表情を変えずに答える三郎太に
「そうか?」
と、大して興味がなさそうに答えると
「さて……どうするかな。友頼は、お前に会いたいだろうしな……」
翠はそう呟くと
「友頼は今、俺が作った結界の中にいる。入ったら最後、お前はもう、あの母子に会えなくなるぞ」
と続けた。
三郎太が翠を真っ直ぐに見つめ
「お別れはして来た」
と答えると
「……覚悟して来たってわけだ」
そう言うと、ゆっくりと歩き出した。
「……にしてもお前、緊張感なさすぎ」
翠はそう言って、音もなく抜刀した。
「なにをする!」
三郎太が叫んだ声と共に、閃光が三郎太の横を通り過ぎた。
すると背後から、バタバタと人が倒れる音が聞こえた。
───それはまるで、時が止まったようだった。
刀が作り出す美しい閃光は、人のものとは思えなかった。
「お前さ、着いて来るなら気を付けろよ」
刀をはらい、血糊を吹き飛ばして刀を鞘に入れる姿さえ静かで美しい。
「着けられてたぞ」
翠の言葉に、三郎太は辺りを見回した。
翠を追いかける時、辺りには気を付けていたし、人混みに紛れるように来た筈なのに……。
それでも着けられていたのには、三郎太も驚いた。
きっと……晶や頼久にも人を付けているのだろう。
それは……二人を心配してではなく、翡翠の亡骸を探している……ただそれだけの為に。
三郎太の心に、暗い闇が堕ちて来る。
───あんな奴に、全てを奪われた
そう思っていると
「なんでそんな顔してるんだ?
もう、敵はいないよ。全部切ったから」
翠の言葉に、三郎太はハッとして翠の顔を見た。
「何? 人を切るなんて酷い……とでも言いたい?」
小さく笑う翠に、三郎太は首を横に振った。
三郎太もきっと、同じ事をしただろう。
自分と翠が行く先に、友頼はいる。
それが知られたら、あの日のようにたくさんの家来を連れて近隣の村を襲撃するだろう。
そう考えていると、翠は小さく笑い
「心配するな……。何人来ようとも、全員、叩き切ってやる」
と呟いた。
その笑顔は、凍り付く程に美しい。
こんなにも翡翠様に似ているのに、なんて残酷に美しく笑うのだろう───。
三郎太はそう思いながら、陽だまりのように優しく笑う翡翠を思い出した。
『三郎太、三郎太』
鈴の音のように美しい声。
自分に差し出される手は、いつだって優しかった。
その翡翠によく似た、目の前の冷たく笑う翠という男。
翡翠が光から、翠は影のような存在。
この世界を、暗闇に染めるのは───翠なのかもしれない。
三郎太そう思いながら
「着いて来い」
そう言って歩き出した翠に続いた。
前を歩く翠の髪の毛を、風がふわりと揺らした。
その風は、懐かしい幼い頃にくらした村の風だった。
『三郎太、おかえりなさい』
黄色いタンポポの花が咲き乱れる草原で、三郎太はタンポポに囲まれて笑う翡翠の幻を見た───
『チリン……チリン……チリン……』
何処かから聞こえる鈴の音に、三郎太の瞳からは涙が溢れ出して止まらなかった。
それはきっと、この後に起こる悲しくも切ない悲劇の足音だったのかもしれない。
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