水鏡~千年の時を越えて、今、再び動き出す悲恋~

古紫汐桜

文字の大きさ
107 / 119
第五章

哀しい真実と嬉しい気持ち

しおりを挟む
目を覚ますと、幸太と冬夜が心配そうに遥を見ていた。

夢だったのか───

甘美で美しいあの世界は、夢だったのだと哀しくなった。
一粒、涙が頬を流れると、冬夜がその涙を拭った。

(これも……夢か?)

しかし、自分の手を両手で力強く握り締める幸太を感じる。
目を瞬かせると、冬夜は遥の髪を優しく撫で
「心配させやがって……」
と呟いた。
それは“愛“ではなく“情“なのだと分かっている。
それでも、冬夜が心から心配してくれていたのを感じられて嬉しかった。
「幸太も……心配かけたな」
そう呟いた遥に、幸太は涙を流して遥の手に額を当てると
「良かった……。もう、目を開けてくれないんじゃないと思って、不安だった……」
と呟いた。
「ごめんな……」
そう呟いた遥に、幸太は何度も何度も首を横に振っていた。

──自分がどんな世界に居たのか、幸太は分かっているのかもしれない……と、遥はぼんやり考えていた。
「ごめん……」
それが、幸太を苦しめる事なのに……。
そう思ったら、口から『ごめん』という言葉が自然と出ていた。
二度目の『ごめん』の意味を悟ったのだろうか。
「謝らないで下さい! 帰って来てくれたなら、それで良いんです」
幸太はそう言って笑った。

遥は不思議だった。
幸太はどんなに遥が冷たくしても、邪険にしても……絶対に遥から離れない。
泣いても、転んでも……いつも遥を追いかけて来ては、隣に並んで笑顔を浮かべる。
「遥先輩、お粥作ったんです。食べて下さい」
幸太はそう言うと、ゆっくりと遥の身体を起こしてお粥を差し出した。
「遥が目覚めたから、俺はちょっと知らせて来るな」
そう言って立ち上がった冬夜に、思わず『誰に?』と聞きそうになって、唇を閉じた。
部屋から冬夜が出て行くと
「気になりますか?」
と幸太が聞いて来た。
「……まぁ、気にならないと言ったら嘘になるが……、私はきっと……冬夜を好きだったのでは無かったのかもしれないと思ってな」
お粥を食べるのを止め、ポツリと呟いた。
「え?」
「夢の中の冬夜は……明らかに本物の冬夜とは違った。本当に好きなら……すぐに気付いた筈だ。しかし私は……自分の都合の良い夢に酔い、浸った。そんな私に……冬夜を好きでいる資格なんて無い……」
そう呟いた遥に
「関係ないです! 好きでいる事に、資格とかそんなの……関係ないです!」
幸太はそう言いきった。

「幸太だって……私が冬夜を諦めた方が、嬉しいだろう?」
ポツリと呟いた遥に、幸太は目を見開いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

処理中です...