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第五章
哀しい真実と嬉しい気持ち
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目を覚ますと、幸太と冬夜が心配そうに遥を見ていた。
夢だったのか───
甘美で美しいあの世界は、夢だったのだと哀しくなった。
一粒、涙が頬を流れると、冬夜がその涙を拭った。
(これも……夢か?)
しかし、自分の手を両手で力強く握り締める幸太を感じる。
目を瞬かせると、冬夜は遥の髪を優しく撫で
「心配させやがって……」
と呟いた。
それは“愛“ではなく“情“なのだと分かっている。
それでも、冬夜が心から心配してくれていたのを感じられて嬉しかった。
「幸太も……心配かけたな」
そう呟いた遥に、幸太は涙を流して遥の手に額を当てると
「良かった……。もう、目を開けてくれないんじゃないと思って、不安だった……」
と呟いた。
「ごめんな……」
そう呟いた遥に、幸太は何度も何度も首を横に振っていた。
──自分がどんな世界に居たのか、幸太は分かっているのかもしれない……と、遥はぼんやり考えていた。
「ごめん……」
それが、幸太を苦しめる事なのに……。
そう思ったら、口から『ごめん』という言葉が自然と出ていた。
二度目の『ごめん』の意味を悟ったのだろうか。
「謝らないで下さい! 帰って来てくれたなら、それで良いんです」
幸太はそう言って笑った。
遥は不思議だった。
幸太はどんなに遥が冷たくしても、邪険にしても……絶対に遥から離れない。
泣いても、転んでも……いつも遥を追いかけて来ては、隣に並んで笑顔を浮かべる。
「遥先輩、お粥作ったんです。食べて下さい」
幸太はそう言うと、ゆっくりと遥の身体を起こしてお粥を差し出した。
「遥が目覚めたから、俺はちょっと知らせて来るな」
そう言って立ち上がった冬夜に、思わず『誰に?』と聞きそうになって、唇を閉じた。
部屋から冬夜が出て行くと
「気になりますか?」
と幸太が聞いて来た。
「……まぁ、気にならないと言ったら嘘になるが……、私はきっと……冬夜を好きだったのでは無かったのかもしれないと思ってな」
お粥を食べるのを止め、ポツリと呟いた。
「え?」
「夢の中の冬夜は……明らかに本物の冬夜とは違った。本当に好きなら……すぐに気付いた筈だ。しかし私は……自分の都合の良い夢に酔い、浸った。そんな私に……冬夜を好きでいる資格なんて無い……」
そう呟いた遥に
「関係ないです! 好きでいる事に、資格とかそんなの……関係ないです!」
幸太はそう言いきった。
「幸太だって……私が冬夜を諦めた方が、嬉しいだろう?」
ポツリと呟いた遥に、幸太は目を見開いた。
夢だったのか───
甘美で美しいあの世界は、夢だったのだと哀しくなった。
一粒、涙が頬を流れると、冬夜がその涙を拭った。
(これも……夢か?)
しかし、自分の手を両手で力強く握り締める幸太を感じる。
目を瞬かせると、冬夜は遥の髪を優しく撫で
「心配させやがって……」
と呟いた。
それは“愛“ではなく“情“なのだと分かっている。
それでも、冬夜が心から心配してくれていたのを感じられて嬉しかった。
「幸太も……心配かけたな」
そう呟いた遥に、幸太は涙を流して遥の手に額を当てると
「良かった……。もう、目を開けてくれないんじゃないと思って、不安だった……」
と呟いた。
「ごめんな……」
そう呟いた遥に、幸太は何度も何度も首を横に振っていた。
──自分がどんな世界に居たのか、幸太は分かっているのかもしれない……と、遥はぼんやり考えていた。
「ごめん……」
それが、幸太を苦しめる事なのに……。
そう思ったら、口から『ごめん』という言葉が自然と出ていた。
二度目の『ごめん』の意味を悟ったのだろうか。
「謝らないで下さい! 帰って来てくれたなら、それで良いんです」
幸太はそう言って笑った。
遥は不思議だった。
幸太はどんなに遥が冷たくしても、邪険にしても……絶対に遥から離れない。
泣いても、転んでも……いつも遥を追いかけて来ては、隣に並んで笑顔を浮かべる。
「遥先輩、お粥作ったんです。食べて下さい」
幸太はそう言うと、ゆっくりと遥の身体を起こしてお粥を差し出した。
「遥が目覚めたから、俺はちょっと知らせて来るな」
そう言って立ち上がった冬夜に、思わず『誰に?』と聞きそうになって、唇を閉じた。
部屋から冬夜が出て行くと
「気になりますか?」
と幸太が聞いて来た。
「……まぁ、気にならないと言ったら嘘になるが……、私はきっと……冬夜を好きだったのでは無かったのかもしれないと思ってな」
お粥を食べるのを止め、ポツリと呟いた。
「え?」
「夢の中の冬夜は……明らかに本物の冬夜とは違った。本当に好きなら……すぐに気付いた筈だ。しかし私は……自分の都合の良い夢に酔い、浸った。そんな私に……冬夜を好きでいる資格なんて無い……」
そう呟いた遥に
「関係ないです! 好きでいる事に、資格とかそんなの……関係ないです!」
幸太はそう言いきった。
「幸太だって……私が冬夜を諦めた方が、嬉しいだろう?」
ポツリと呟いた遥に、幸太は目を見開いた。
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