水鏡~千年の時を越えて、今、再び動き出す悲恋~

古紫汐桜

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第五章

過去と今を越えて、友になれる日が来るなら

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「え?」

「同じ学校で出会って、二人で恋バナしたり……」

遥が小さく笑った。

「恋……バナ?」

「ん~、分からないか。好きな人の話をすることを“恋バナ”って言うんだよ」

そう説明すると、遥は照れたように笑った。

「ずっと……そういうのをする女子を見下してたんだけどさ。
でも不思議と、翡翠さんとは色々話してみたかったなぁ~って思って」

その言葉を聞いた瞬間、翡翠の瞳から涙がこぼれた。

「え? えぇっ!? なに、そんなに嫌だった!?」
驚く遥に、翡翠は慌てて首を激しく横に振る。

「違います……! 違うんです……!
ただ……“晶様は晶様なんだ”って……思ってしまって……」

涙を拭いながら、翡翠はかすかに笑った。

「え?」

「晶様も……同じことを仰ったのです。
“君と友達になりたかった”って……」

「そう……なんだ」

遥は静かに息を吸った。
自分にとって前世は“遠い昔話”に過ぎないけれど、翡翠は千年前からずっと続く記憶の中で生きている。
その事実を、今さらのように痛感した。

すると翡翠が急にファイティングポーズを取り、

「あっ、でも大丈夫ですから!
晶様は晶様! 遥さんは遥さん! ちゃんと分かってます!」

と、元気いっぱいに叫んだ。

そして少し照れながら続ける。

「冬夜さんに言われたんです。
“たとえ俺が友頼様の魂を持っていたとしても、人格は『日下部冬夜』という一人の人間だ。
俺を通して友頼を見るな!”……って」

「……冬夜が? 本当に?」

「はい! こんな顔して!」

翡翠は目を釣り上げ、全力で“冬夜の怒り顔”を再現した。
そのあまりの迫力に、遥は吹き出してしまう。

「切れ長の目をしていらっしゃるから、怒ると本当に怖いんですよ!」

ぷんぷん怒る翡翠に、遥は笑いながら思う。

(……なるほど。冬夜は案外“重い男”だったんだな。
過去の自分に嫉妬するなんて……)

ずっと他人に無関心で、誰のことも気にしない冬夜しか知らなかった。
そんな彼にも、こんな人間臭い一面があったんだ──そう思うと、不思議と胸は痛まなかった。

むしろ……

(どうやってあの鉄面皮を崩してやろうか)

そんな事を考えてほんの少しだけワクワクする自分に気付く。

それはきっと、幸太のおかげだと分かっていた。

どんな時でも、どんな自分でも……幸太は必ず、

『そのままで良いんですよ』

と受け止めてくれた。

今はまだ、幸太の気持ちには応えられない。
でも──
今度は自分が、幸太の支えになれたらいい。遥はそう思った。

(私も……大概だな)

自嘲気味に笑う遥に、翡翠が不安そうに近付く。

「あの……だから私、遥さんは遥さんとして接しますから!」

どうやら何かを勘違いしているようだった。

遥は小さく笑い、

「あぁ……ごめん。今はちょっと違うこと考えてただけ。
私は別に、どっちでもいいよ。
過去も今も未来も……私は私だからね」

そう穏やかに答えた。
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