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5巻

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 一章 デルトランテの攻防



 スマートフォンサイトで怪しげなバナー広告をクリックしたことで、異世界スターリアに転移した青年、石川良一いしかわりょういち
 神様からさずかったチート能力や頼れる仲間に恵まれた彼は、行く先々で多数の功績こうせきを挙げ、カレスライア王国の貴族になった。
 領地としてメラサル島のイーアス村一帯をたまわり、村の発展に努めていた良一だったが、第五王女スマルの要請ようせいを受けて、今は使節団の一員として隣国のマーランド帝国を訪問している最中だ。
 しかし、良一達の旅が平穏無事で済むはずもなく……邪神の襲撃しゅうげきや大精霊との邂逅かいこうなど、次々と予想外のトラブルに見舞みまわれることに。
 特に、良一の義理の妹であるモアに、大精霊の宿木やどりぎたるあかし双精紋そうせいもん〟が刻まれるという事態は、帝国の重鎮じゅうちんたちに大きな衝撃を与えた。
 帝国側は、その建国の歴史から精霊との関係を重視している上に、帝室にゆかりのある大精霊とえにしを結んだモアの存在を無視できない。しかし彼女は王国貴族石川良一の親族であり、過剰に厚遇こうぐうすると外交的に問題が生じる。
 こうした微妙な状況を受けて両国上層部が協議を行なった結果、良一は新たに男爵だんしゃくを授かり、特別交渉官として帝国内を自由に行動する権利を得たのだった。


 帝都マーダリオンを離れ、使節団とは別行動をすることになった良一達一行は、二台の竜車に分乗して、整備された道を進んでいた。

「良一兄ちゃん、これからどこに行くの?」

 対面に座っているモアの質問に、良一が返答する。

「これからマーランド帝国の西側にある町、デルトランテに行くんだよ」
「デリュトランテ?」
「デルトランテだよ、少し発音が難しいな」
「デルトランテ」
「ちゃんと言えたな、すごいぞ、モア」

 綺麗きれいに発音できてうれしいのか、得意げな笑みを浮かべるモアに、両隣に座る二人の少女が拍手をする。

「素晴らしいわ、モア。失敗にもめげずに、ちゃんと成功したんだもの」
「セラの言う通りなのです。やっぱりモアはできる子なのです」

 モアを褒めたたえる二人の可憐かれんな女の子の名前は、セラとシーア。見た目はモアとそう変わらない十歳前後の少女そのものだが、その正体は大精霊の子供――未来の大精霊――である。
 二人はモアのことが大好きで、マーランド帝国の大人達がモアを怖がらせた際には、怒りを隠そうともせずに、強大な力で周囲を威圧いあつして黙らせた。

「モアも元気になって良かったわ」
「そうです。モアが笑っていてくれて嬉しいのです」

 セラとシーアの言葉を受けて、モアも二人に笑顔をく。
 そんな三人を微笑ましく思いながら、良一は自分の右に座る高性能アンドロイドのみっちゃんに話しかけた。彼女は帝都における邪神の襲撃で大きな損傷そんしょうを負ったが、今は問題なく良一の秘書の役割を果たしている。

「みっちゃんはデルトランテの情報を教えてもらっているんだよね」
「はい、帝都にて情報を入手しております。デルトランテは、神殿が二つもある大規模な都市で、人口は帝国内でも三本の指に入ります。多様な民族が生活する帝国の中でも、獣人や鳥人、魚人と呼ばれる、人と動物の特徴をあわせ持つ種族が特に多いそうです」

 帝都をつ前に、帝国の内務大臣であるツユブル伯爵はくしゃくから手に入れた情報である。

「獣人さんか~、ココ姉ちゃんやスロントさんみたいな人だよね」

 獣人というワードに興味を持ったのか、モアが会話に加わった。
 ココは良一達と行動を共にしている犬獣人の女剣士で、スロントは家宰かさいとしてイーアス村を切り盛りしている象の獣人だ。

「そうだよ。帝都にもいたけど、話す機会はあまりなかったな」

 みっちゃんの帝国情報に耳をかたむけながら竜車に揺られ、良一達は一路デルトランテを目指したのだった。


 ◆◆◆


 ――数日後。
 良一達の竜車は目的地であるデルトランテに着いた。
 車窓しゃそうから見える外の景色は、帝都とはまた違ったおもむきがある。
 デルトランテは土壁つちかべの建物が立ち並び、都市全体が落ち着いたオレンジ色にまとまっている。
 竜車から降りて胸一杯に空気を吸い込むと、食欲をそそるスパイシーな匂いがした。
 刺激的な香辛料の香りは異国情緒いこくじょうちょあふれていて、自然と気分が上がる。

「ほあぁ……!」

 初めてぐ匂いに、モアは感嘆かんたんの声を漏らした。
 セラとシーアも鼻をクンクンしながら物珍しそうに周囲を見ている。

「あら、モアちゃん達もこの匂いにはまだ慣れていないみたいね」

 後ろの竜車に乗っていたAランク冒険者のキャリーが、良一達に合流して声をかけた。
 彼の後ろからその他の面々――モアの姉のメアと、水の神につかえる神官マアロ、カレスライア王国の公爵令嬢こうしゃくれいじょうであるキリカも続いてくる。
 みんな長旅でかたまった体を伸ばしながら、景色を見まわしている。
 そんな中、良一はしきりに鼻をこすっているココに気がついた。

「やっぱり鼻が良いと、この匂いはキツいのか?」
「そうですね、ちょっと気にはなります。……でも、不快ではないので、時間がてば慣れると思います」

 しばらく皆で町の感想を言い合っていると、二人組の男女が近づいてきた。

「大精霊様方、双精紋を持つ石川モア様、並びに保護者である石川男爵。ようこそいらっしゃいました」

 二人そろって折り目正しく深々と頭を下げた後、男性の方が一歩進み出た。
 褐色かっしょくの肌にスッキリとした目鼻立ちで、まさに正統派イケメンといった風貌ふうぼうだ。

「デルトランテを治めるデル侯爵家こうしゃくけの長男、カロス・レン・デルです。皆様を歓迎いたします」
「カレスライア王国男爵、石川良一です。お出迎えありがとうございます」
「皆様がデルトランテに滞在する間は、私が案内を務めさせていただきます」

 握手を交わすと、その手は予想以上に力強く、日頃から剣を振り、きたえ込んでいるのがわかる。優雅ゆうが所作しょさといい、隙のない服の着こなしといい、単なる貴族のぼっちゃんという以上の魅力を備えた人物だ。
 もっとも、帝国嫌いのマアロと、人間にほとんど興味のないセラとシーア、まだ子供のモアなど女性陣の大半が、それほど彼に興味を示していないようだが。
 カロスは挨拶を終えると、自分の後ろにひかえる女性を紹介した。

「彼女はデル侯爵家騎士団の副長、ナタリアです」
「カロス様の副官をしているナタリアと申します」

 ナタリアの髪はくすんだ銀色で、カロスと同じく褐色の肌に銀縁ぎんぶち眼鏡めがねをかけている。眼鏡の奥の目は切れ長で、いかにも優秀そうな雰囲気ふんいきまとっていた。
 厚手あつでよろいの上からでも、鍛えられた体格とプロポーションの良さが見てとれる。
 良一は彼女にもカロス同様、只者ただものではないという印象を抱いた。

「皆様竜車の旅でお疲れでしょう。どうぞこちらへ」

 カロスはそう言って、良一達を侯爵家の屋敷へ案内した。


 竜車を降りてから少しばかり歩いたところにある侯爵邸の門前で、良一達一行は唖然あぜんとしていた。
 目の前にそびえ立つのは、五階建ての大きな城。まるで皇帝が住むような、豪奢ごうしゃな建物だ。

随分ずいぶんと大きな建物ですね……」

 皆が建物をあおぎ見ながらポカンとしている中、他の者達よりも一足先に我に返った良一が、全員の言葉を代弁した。

「ええ、歴代の家長かちょうが増築を重ねて現在の大きさに至っています。初代皇帝陛下の代から帝国に仕える、デル家の誇りそのものです」

 どうやら、元々はこんなに大規模ではなかったらしい。この侯爵邸はデル家が積み重ねてきた歴史であり、長く帝国に奉仕ほうししてきた証なのだろう。
 カロスの口ぶりからも、そのデル家の者であるという自負が感じられた。

「通りに沿って町の東には〝貨幣かへいの神ビエス〟様の神殿。西には〝剣神けんしんカズチ〟様の代弁者、〝剣聖けんせいボウス〟様の神殿があります」

 カロスはそう言いながら、侯爵邸の前の広場から伸びる二本の道の先をそれぞれ指で示す。
 この二つの神殿が、良一達が帝都を出てデルトランテに逗留とうりゅうする理由だ。
 神殿に興味津々きょうみしんしんといった様子の良一達に苦笑しながら、カロスは今日の予定を告げる。

「ご興味が尽きないでしょうが、デルトランテ観光は明日になります。本日はこのデルトランテ随一ずいいちの料理人を呼んでご馳走ちそうを用意していますので、英気をやしなうためにも、屋敷でごゆっくりおくつろぎください」

 カロスとナタリアに連れられて侯爵邸の中へと足を踏み入れてからも、驚きの連続だった。
 特に目を引いたのは、良一の身長の三倍はありそうな大きさのモンスターの毛皮だ。縞模様しまもようから虎のようなモンスターのものだと推測されるが、色は黄色と黒ではなく、赤と黒。見るからに禍々まがまがしい。

「良一兄さん、この毛皮、すごく大きいですね。色もなんだか怖いです……」
「本当だな……メラサル島で戦ったシャウトベアキングよりも大きいぞ……」

 メアと良一が壁に掛けられた毛皮をまじまじと見上げていると、カロスが声をかけてきた。

「いかがですか、デーモニアタイガーの毛皮は?」
「凄いですね。毛皮からも生前の力強さが感じられますよ」
「このデーモニアタイガーは、五年前にゲイル第一皇子と我がデル侯爵家騎士団が共闘きょうとうして討伐とうばつしたのです」
「ゲイル皇子がですか!」
「ええ、私も討伐の際には戦闘を指揮していました。その中でも、ゲイル第一皇子の活躍はめざましく、果敢かかんにデーモニアタイガーにりかかり、討伐をげたのです」
「皇子には帝都でお会いしましたが、確かに、自ら前線に立たれるような方でした」

 良一は覇気はきに満ち溢れるゲイルの姿を思い出した。
 少々型破かたやぶりな性格の彼は、邪神との戦いの際に突如とつじょ現れ、鍛えこまれた肉体と大剣を操って助力してくれたのだ。

「ゲイル第一皇子は、デルトランテにある剣聖ボウス様の神殿によく修業に来られます。デーモニアタイガー討伐の際も偶然町にいらしていて、騎士団の包囲が崩れそうになったまさにその時、颯爽さっそうと現れて助太刀すけだちしてくださったのです。あまりにも絶妙なタイミングで、心底驚きましたよ」

 あきれたように笑いながら語るカロスだが、言葉の端々はしばしからゲイルを信頼していることを感じさせる。

「そうだったんですか。なんというか……ゲイル第一皇子らしいですね」

 良一がカロスと談笑していると、突然、甲高かんだかいラッパの音がホールに響き渡った。
 短いメロディーが終わると、それっきりラッパの音はピタッと止んだ。

「デル侯爵こうしゃく閣下かっかのお出ましです」

 ラッパを吹いていた若い男性がそう告げた。
 見ると、老齢の男性が玄関ホールの中央にある大階段を下りてきていた。
 カロスと同じ色黒の肌に、もじゃもじゃとした短い白髪はくはつ。ゆったりとした白い服はシンプルなデザインながら、明らかに高級品であるのがわかる。
 しかし、中でも一際ひときわ目に付くのは豊かな白いひげだ。
 鼻の下やほおあごのあたりから六本のまとまりが左右に伸び、毛先はくるりとカールしている。
 この特徴的な髭が、侯爵のいかめしい顔にただならぬ存在感を与えていた。
 帝国の貴族の中にも髭が立派な人達がいたが、良一はこれほどの人を見たことがなかった。
 メアやモア達もその髭に度肝どぎもを抜かれて、目を白黒させている。

「やはり私の自慢の髭は皆の目を引きつけてしまうようだな」

 侯爵がその風貌に見合う渋い声音こわねで話しかけてきた。
 そこでようやく良一も我に返り、自分がどのような状況にいるのかを思い出す。

「ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。カレスライア王国男爵の石川良一です」
「デル侯爵家の当主、カルデン・レン・デルだ。石川男爵一行の訪問、デルトランテをあげて歓迎しよう」
「ありがとうございます」
「この町にいる間は、ここを自分の家だと思ってくつろいでほしい」

 侯爵との挨拶を終えた良一達は、客室に通された。
 デルトランテに滞在する間は、侯爵邸に泊めてもらえることになっているのだ。
 案内の執事が部屋を去ると、ようやく人心地ひとごこちがついた気がした。
 良一は椅子に座り、張りつめていた気持ちをほぐすように体を伸ばす。

「デル侯爵もカロスさんも良い人そうだな」
「そうね、カロスさんもイケメンだったけど、侯爵様も渋くていい男だったわね」

 テーブルを挟んで向かいに座るキャリーがそう返事をした。

「良一もあの髭を見たでしょう。あなたもデル侯爵閣下のように髭をやせば、威厳いげんが出るんじゃないかしら」

 メイドが用意してくれた紅茶を飲みながら、キリカが面白がって提案した。
 良一も自分の顎に手を当てて考えるが……

「うーん……俺が髭を生やしても、威厳なんか出るか?」

 イーアス村にいた時は、たまに髭をるのを忘れて、無精髭ぶしょうひげが伸びていたこともあったが、モアやココの顰蹙ひんしゅくを買ってしまった。
 それ以来彼は、どれだけ忙しくても髭は剃るようにしている。

「まあ言い出したのは私だけど、やっぱり良一は髭がない方がいいと思うわ。まだ若いし」

 年下のキリカに若いと言われるのもおかしな話だが、自分に髭が似合わないのはわかっているので、良一は素直すなおうなずいた。


 雑談を交わしながら時間をつぶしていると、あっという間に夕食の時間になった。
 執事の案内で食堂に行くと、テーブルの上にはデルトランテ名物の料理が所狭ところせましと並べられていた。
 街中で嗅いだスパイスや香辛料がふんだんに使われている肉料理がメインのようだ。
 デル侯爵やカロス達も席に着いたところで、食事が始まった。
 モアは待ちきれないといった様子で、早速さっそく肉料理にかぶりつく。

「んー! 美味おいしいよ、良一兄ちゃん!」
「こら、モア。お行儀よく食べなさい」

 今にも席を立って全身で美味しさを表現しかねないモアをたしなめながら、良一も料理を口に運ぶ。
 一口かじると、肉汁に溶け込んだスパイスが口の中で広がり、良一は思わず目を見開いた。
 胡椒こしょうのようなピリピリとした刺激を舌に感じ、心なしか自分の吐く呼吸も熱い気がするが、それがくせになり、次から次へと手が伸びてしまう。
 口の中の熱は、一緒に出された牛乳で割ったお酒を飲むと、その甘さとまろやかさで中和ちゅうわされる。そしてまた肉料理が欲しくなるといった塩梅あんばいで、酒も食もよく進む。
 大人でも少し刺激が強い味を、幼いモアが美味しそうに食べているのが不思議だったが、どうやら子供向けにスパイスを少量にしたものが用意されていたようだ。
 モアがパクパクと料理を頬張ほおばる横で、食いしん坊のマアロも子供向けの肉料理をむさぼっている。
 最初はマアロにも大人向けの料理が出されていたが、スパイスが強すぎて食が進んでいなかった。しかしメアから子供向けのものを少し分けてもらうと、これが口に合ったのか、マアロはすぐにメイドに同じものを頼んだ。
 そんな良一達の様子を見て、デル侯爵が相好そうごうを崩す。

「我がデルトランテ自慢の料理はどうですかな、石川男爵」
「はい、とても美味しいです。このスパイシーな味がやみつきになりそうですね」

 良一の言葉でもてなしの成功を確信し、侯爵の隣に座るカロスも満足げに頷いた。
 その後も料理の感想や侯爵の髭自慢などで盛り上がり、晩餐ばんさんはとても明るい雰囲気で過ぎていった。
 スパイスで刺激を受けた舌を休ませるためか最後にヨーグルトのようなデザートが運ばれてきて、それを食べ終わるとその日はお開きになった。


 ◆◆◆


「皆さん、充分な睡眠は取れましたか?」

 朝食を済ませ、太陽ものぼった頃に、護衛の騎士を伴ったカロスが良一達の部屋にやってきた。

「ええ、昨夜の料理とふかふかのベッドのおかげでグッスリ眠れました」
「それは良かったです。本日はデルトランテにある神殿の一つ、貨幣の神ビエス様の神殿へ行こうと思います」

 カロスはにこやかに今日の予定を告げた。
 良一達も既に準備はできているので、すぐに出発した。
 カロスに続いて大通りを歩き、神殿へ向かう。
 護衛の騎士に囲まれる良一達を見て町の人々が何事かと騒ぐが、皆カロスの姿を認めると、手を振ったり挨拶したりしている。デル侯爵家は町の人からもしたわれているようだ。
 帝国では竜車で移動することが多かったので、こうして自分の足で歩くと市中の活気を肌で感じられて新鮮だ。
 皆思い思いに町の様子を見たり、店先に売られている様々な品物を指さして話したりしている。
 楽しい観光気分にひたりながら歩いていると、前を行くカロスが振り返った。

「石川男爵、デルトランテの雰囲気はいかがですか?」
「活気に溢れていて、歩いているだけで元気がもらえます」
「この活気もデル侯爵家の自慢なのです。領民達が笑顔で手を振ってくれているでしょう? それが私達の統治が間違っていないという証明なんです」

 そう誇らしげに語るカロスの表情から、彼が心から領民を大切にしているのだとわかる。
 その自信に満ちた顔を見て、良一は少しうらやましくなった。

「私の領地でも同じ光景が見られるように努力したいですね」

 良一もイーアス村では、木工ギルドに所属している縁もあって、村人達から好意的な評価を受けている。しかし、それに胡坐あぐらをかかずに頑張らねばならないと、決意を新たにした。

「ところで、皆さんはビエス様の神殿に参拝さんぱいされたことは?」
「いいえ、私はありません」

 後ろを歩くみんなを見ると、キャリー以外は首を横に振っていた。
 良一が貨幣の神ビエスについて知っているのは、商人ギルドがまつっている神様だということだけ。メラサル島でメアとモアの父親が借金をした商人の口からその名前を聞いたくらいだ。

「では一つ問題を出しましょう。ビエス様の神殿では他の神殿では見られない〝あること〟を行なっています。それはなんでしょうか」

 カロスは人差し指を立てて、良一達にそう質問した。
 モアは真剣な表情で両隣のセラとシーアと話し合う。
 キャリーとココとマアロとキリカは答えを知っているのか、その様子を楽しそうに見ている。


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