お人好し職人のぶらり異世界旅

電電世界

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5巻

5-2

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「良一兄さんはわかりますか?」

 メアが良一に声をかけてきた。

「うーん……なんだろうな」

 良一も顎に指を当てて少し考えてみる。

「商人ギルドが祀る神様なので、市場のようなものですかね?」
「残念ながら違います」

 良一が思いついた答えは不正解だったらしい。

「ビエス様、ビ、ビ、ビ……ス……あっ、ビスケットを作ってる!」

 モアが大きな声で自らの考えを口にした。
 子供らしい発想に周囲の騎士がプッと噴き出すが、両隣のセラとシーアはこれを見逃さなかった。二人が魔力を高めるのを感じ、彼らは慌てて背筋せすじを伸ばす。
 カロスは微笑みを浮かべながら、首を横に振る。

「残念ながら、ビスケットは作っていないんです。では、ヒントを出しましょう。作っているのは皆さんにもお馴染なじみで、きっと今までに何度も触ったことのあるものですよ」

 そのヒントによりビエスが何の神様なのか思い出して、良一は一つの答えに辿たどり着いた。
 メアが先んじて手を上げて、良一が考えたものと同じ答えを口にする。

「あのっ、お金を作っているんですか?」
「正解です。貨幣の神ビエス様の神殿では、皆さんがいつも目にする金貨や銀貨を作っているんです」

 答えを聞いた良一は少しだけ驚き、また納得もしていた。
 これまでスターリアで色々な硬貨を目にしていたが、どれも日本で見る硬貨と同じくらいに精密せいみつで形が揃っていた。そんな精度で硬貨を作るのは機械でもない限り不可能だと思ったが、まさか神殿で作っていたとは……
 驚くメアやモアのリアクションに満足したのか、カロスは笑顔で頷いた。

「今日は皆さんに貨幣を授かる瞬間を見ていただこうと思います」

 カロスのこの言葉には、今まで落ち着いていたキャリーやマアロも驚きをあらわにした。
 良一は小声でキャリーに尋ねる。

「貨幣を授かる瞬間を見られるのは、そんなに凄いことなんですか?」
「そうね……貨幣はその国の経済のかなめ。ある意味では国の命運をにぎっていると言っても過言じゃないわ。だからビエス様の神殿の御業みわざは、国によっては重要機密の一つに数えられることもあるの。滅多めったに見られるものじゃないわね」

 キャリーもカロスが見学の許可を出したのは異例だと認めた。
 この行動からも、良一達にどうにかして好印象を持ってもらいたいという侯爵家の意気込みがわかる。
 そんな話を聞いて、一行の足取りがわずかに軽くなる。
 やがてビエスの神殿がはっきり見えてくると、今まで訪れた他の神殿とは明らかに異なるたたずまいに、良一達は口々に感想を漏らした。

「見て、キリカちゃん! 金ピカだよ」
「本当ね、モア」

 そう、ビエスの神殿はなんともわかりやすく金色に輝いているのだ。
 その威容いようを目の前にして、良一も感嘆かんたんを禁じ得なかった。

「昨日侯爵邸の前でちらりと見た時は、何かが太陽の光を反射しているのかと思って気にも留めなかったけど、これだったのか……」

 良一はため息とともに感想をつぶやいた。

「私もカレスライア王国のビエス様の神殿を訪れたことがあるけれど、やっぱり圧倒されるわね」

 キャリーもしみじみとした様子で神殿を見上げる。

「王国の神殿も金ピカなんですか?」
「ええ、こちらの神殿に負けず劣らずの金ピカよ。神殿の上に立っている像まで全部同じ色ね」

 神殿の建物自体は二階建ての教会風ではあるものの、他の神殿と決定的に違う箇所がある。
 傾斜けいしゃがついた神殿の屋根の中央部、一番高い所に巨大な男性の像が立っているのだ。
 例に漏れずその男性像も金ピカだが、大きさが神殿の建物と同じか、それ以上ある。
 カロスが像を指さして言う。

「あの屋根の上に立つ像が、貨幣の神ビエス様です」
「ビエス様は随分とふくよかな方なんですね」

 ビエス像は顎や腹回りなどの肉付きが良く、随分と貫禄かんろくがある。
 主神ゼヴォスやその使いの神白かみしろことミカエリアスは、人間離れした整った容姿だが、ビエスは庶民的な顔立ちだ。
 親しみやすさはあるものの、顕現けんげんした時にどれほど神々こうごうしいのかはイメージできない。

「ははは、豊かさの象徴の神様ですからね」

 若干の失礼な表現を否定せず、カロスはそのまま神殿に向かって歩いていく。
 神殿の入り口では、神殿長が出迎えてくれた。

「皆様、ビエス様の神殿にようこそ。本日は〝貨幣招来かへいしょうらい〟をり行ないまして、ビエス様の祝福を授かりたいと思います」

 神殿長はそう言ってからすぐに、良一達を神殿の奥にある広間へと案内した。
 外観のみならず、神殿の中の調度品も金ピカの物ばかりで、見ていると目がチカチカしてくる。
 これには全員が呆気あっけに取られて言葉も出ない。しかし、成金趣味なりきんしゅみとでも言うべきド派手な調度品も、ここまで突き抜ければ統一感があって、下品な印象にならないのは不思議である。
 そんなまばゆい内装以外にももう一つ、良一は他の神殿と違う点に気がついた。
 やけに神殿騎士が多いのだ。

「随分と神殿騎士が詰めていますね……」
「ええ、ビエス様の神殿はお金を扱っていますので、その分警備も厳重なのですよ」

 確かに、と一瞬納得しかけたが、良一は素朴そぼくな疑問を口にした。

「さすがに神殿に盗みに入ろうとはしないでしょう? 泥棒も神罰しんばつは怖いはずですし」

 神白の手で実際に神罰が執行しっこうされる現場を見た良一には、とてもではないがそんな罰当たりな真似まねはできそうにない。
 カロスは苦笑しながら応える。

「もっともです。しかし、人間は追い詰められたらなんでもしますからね。年間で数百人も神殿騎士団に捕縛ほばくされているのですよ」

 広間で談笑しながら待っている間に儀式の準備が整ったようで、列をなした神殿騎士達が、大人の腰の高さまである宝箱をいくつも運んできた。
 随分と重いのか、神殿騎士が数人がかりで一つの宝箱を運んでいる。
 全ての宝箱を運び終えたところで、女性神官が十人ほど広間に入ってきた。

「それでは〝貨幣招来の儀〟を執り行なわせていただきます」

 そう言うと、神殿長は広間の中心で白い大きな布を広げた。
 それにならって、女性神官も同じような布を広げる。
 神官が布を広げ終わると、宝箱の両脇に立っていた騎士達がそのふたを開けていく。
 宝箱の中身は精錬せいれんされた金属のインゴットらしく、すず、青銅、銅、銀、金など、どれも硬貨の原料となるものだ。
 錫の金属が入っている宝箱の前に立った神殿長が、祝詞のりとをあげる。

「貨幣の神ビエス様、御身おんみの深き情けにより、貨幣による平等をお導きください」

 ……すると、宝箱の中の金属がぐにゃりと柔らかくなり、水が流れるようにどこかに消えていった。
 皆が目の前で起きている現象に驚いている最中、良一は一瞬だけ神の気配が広間に浸透しんとうするのを感じた。
 それはすぐに霧散むさんしたが……次の瞬間、どこからともなく硬貨が一枚落ちてきた。

「!」

 視線を上に向けると、ランプの光をキラキラと反射しながら空中から大量の硬貨が降ってくるのが見えた。
 神殿長は最初に降ってきた硬貨を衣服のポケットにしまってから、もう一人の神官と一緒に広げた白い布で硬貨を受け止める。
 慣れているのか、他の神官達も冷静に白い布を広げて、硬貨をキャッチしはじめた。
 しかし神殿長と五人の女性神官だけでは大量の硬貨を受け止めきれず、布からこぼれた物が甲高い音を立てて床に落ちる。
 そのタイミングで新たな神官が現れて、床の硬貨を拾い上げていく。
 良一達は開いた口を閉じるのも忘れて、この驚愕きょうがくの光景に見入っていた。


 その後も青銅貨、銅貨と価値の低い硬貨から順に祝詞をあげていき、金貨が降ったところで、神殿長が儀式の終了を宣言した。

「以上で〝貨幣招来の儀〟を終わらせていただきます」

 金貨の上に白金貨や大白金貨もあるが、今日はその二種類の招来はしないようだ。
 床に落ちた硬貨も、神官達が拾い上げて全て回収した。
 静けさを取り戻した広間で、良一は先ほどまでの出来事を思い出す。
 硬貨が空から降ってくる様は一種の欲望の具現化だな……などと、他愛たあいないことを考えていた。
 すると神殿長が近づいてきて、手にしていた布の中から最後に降った金貨を一人一枚ずつ配った。

「今お渡ししたのは〝つつがね〟と言いまして、商売繁盛しょうばいはんじょうを願って財布に入れておくと、ビエス様のご利益りやくがあると言われています」

〝ご利益があると言われている〟などという曖昧あいまいな表現をされると胡散臭うさんくささが半端はんぱないが、実際に神の御業を目の前で見たばかりだったので信じざるを得ない。

「良一君、本当なら金貨の包み金を手にするには、最低でも金貨十枚のお布施ふせが必要なのよ」

 キャリーに耳打ちされ、良一はありがたく受け取った。

「ありがとうございます」

 良一達のお礼の言葉に軽く頷いて、神殿長は金貨が入った布を包み直して広間から出ていった。
 神殿長がいなくなると、誰ともなく大きなため息を吐く音が聞こえた。
 やはり皆この驚くべき光景を見て放心してしまっていたようだ。

「この後は少し休憩を挟んで、皆様にビエス様からの祝福があるよう、お祈りさせていただきます」

 案内の神官がそう言いながら、一行を応接室へと案内した。

「まさか金貨や銀貨があんなふうに降ってくるとは……想像してなかったな」
「良一兄さん、私もなんだか夢を見ているみたいで、驚いてしまいました。凄かったですよね」

 興奮冷めやらぬメアが熱く語った。

「そうだな、俺も金貨は鍛冶師かじしが作っていると思ってたからかなり驚いたよ」

 そんな二人の会話を聞き、マアロもどこか呆れたような声を出す。

「ビエス様の神殿は派手すぎ」
「まあ、これだけ金ピカだと圧倒されるよな」

 お祈りが始まるまでの間、良一はメア達と雑談を続けながら感慨かんがいふけっていた。

(これぞ本当の神の御業だよな……)

 良一とて、神白をはじめ、多くの神を実際に見てきた。
 そして神器を使用したこともある。
 圧倒的な実力差のある邪神との戦いも経験している。
 しかし今回は、今までのどの体験からも得られなかった驚きを、良一にもたらした。
 その後、良一達は神殿長から直々に祝福を受けたが、残念ながら誰もビエスの加護は授からなかった。
 こうして、良一達はデルトランテで一つ目の神殿行事を終えたのだった。


 ◆◆◆


 ちょうど昼時になっていたので、良一達はカロスの案内でデルトランテでも評判の店で昼食を取ることにした。

「午後は剣聖ボウス様の神殿か」

 良一がまだ見ぬ剣聖の姿に思いをめぐらせていると、マアロが彼のそでをくいくいと引っ張った。

「良一、ココがもう集中しはじめている」

 向かいに座るモアやキャリー達が話に花を咲かせている横で、ココは食事もそこそこに済ませ、目をつむって集中力を高めている。

「これから剣聖様と稽古けいこだからな」

 道中で彼女が剣聖との稽古を希望していると聞いていたので、良一はカロスに言伝ことづてを頼んでおいたのである。
 剣の道に生きるココとしては、この後に剣聖との試合が控えているとなれば、食事どころではない。
 何せ、以前カレスライアで剣聖ミカナタに挑んだ時は、彼女がおさめるガベルディアス家の流派――狗蓮流くれんりゅう奥義おうぎまで防がれて、完全敗北をきっしたのだ。
 リベンジというわけではないが、万全の状態で臨もうという気持ちの表れなのだろう。
 そんな彼女の気持ちをおもんぱかって、良一達はしばらくココをそっとしておいた。


 昼食を終えた一行は一度侯爵邸の前の広場へと戻り、ビエスの神殿とは反対の、町の西側にある剣聖の神殿へ続く道を歩き出した。
 すると……

「スラーッシュ!」
「「「スラーッシュ!」」」

 神殿に近づくにつれて、人の叫ぶ声が聞こえてきた。
 見ると、奇妙な掛け声に合わせて何十人という剣士達が剣を振るっていた。
 全員、汗を垂らしながらもその目は正面を見据みすえ、真剣そのものである。

「……これってゲイル第一皇子の技だよな」

 だからこそ、絶対に笑ってはいけない。過去の経験を踏まえ、良一は表情を崩さないように必死にこらえた。
 そんな良一の呟きに、カロスが応える。

「昨日もお話ししましたが、ゲイル第一皇子は幼き頃よりこの神殿で修業をしていました。皇子も習得しているあの剣技は、剣聖ボウス様を象徴する技なのです」
「つまりこの〝スラッシュ〟は、ボウス様が開発したのですか?」
「ええ、その通りです」

 ゲイルの個性的な技の意外な由来をカロスから聞いたところで、良一は改めて声が聞こえてきた方へと目を向ける。
 屋外の修練場の横には、和風だった剣聖ミカナタの神殿とは趣を異にする、重厚じゅうこうな石造りの神殿があった。
 そして神殿の上部には、幅二メートルほどのゴツゴツした柱状の岩が天高くそびえ立っている。

「あの岩は修練の岩と言って、体一つでよじ登る修業に使われているんですよ」

 口をあんぐりと開けて見上げる良一達に、カロスが説明した。

「遠くから見えていた細い棒みたいなものは、これだったんですね……。おかげで謎がまた一つ解けました」

 そんな良一達のもとに、神官が近づいてきた。

「カロス様、お話は伺っております。剣聖ボウス様が奥でお待ちです」

 神官に案内され、良一は仲間とともに神殿内へと足を踏み入れる。
 神殿の作りは単純で、正面の入り口から廊下がまっすぐ続き、その奥が、大きな広間になっているようだ。
 廊下の両側には大剣がずらっと立てかけられていて、この神殿が剣神を祀っていることを物語っている。
 大広間に入ると、その中央で筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの見事な体格にスキンヘッドというちの男性が待ち構えていた。右手は油断なく木製の大剣のつかを握り、眼光がんこうするどく来訪者をにらみつける。

「よく来たな」

 低い声で良一達に声をかけた男性に、カロスが応える。

「剣聖ボウス様、本日はカレスライア王国からの客人をお連れしました」

 この大柄な男が剣聖ボウス――カレスライア王国のミカナタと並ぶ、剣神カズチの代弁者の一人だ。

「うむ、はいやしろにようこそ。そちらのお嬢さんがミカナタから加護を受けた者か」

 ボウスが言う〝お嬢さん〟が自分のことだとわかっているココが返事をする。

「ココ・ユース・ガベルディアスです」
「ふむ……いくつかの大きな戦闘を乗り越えているな。そして、神器を一度使用している」

 ボウスは一目見ただけで、ココがどのくらい剣を振ってきたかを見抜いてしまった。
 しかしココは動揺どうようすることなく、冷静さをたもったまま言葉を返す。

「はい。神器は先日帝都での戦闘で一度だけ」
「なるほど……では剣を合わせようか」

 ボウスはそう言うと、壁に掛けられた模擬戦用の木剣を一瞥いちべつし、ココにそれを取るように促した。
 剣士の間に多くの言葉はいらない――そういう意図だろう。
 すかさず案内の神官がココ以外のメンバーを戦闘の邪魔にならない壁際に誘導する。
 この大広間は奥に祭壇さいだんがある以外は真っ平らで障害物がなく、日頃からこのような模擬戦の場として使われていることがうかがえる。
 ココは模擬戦用の木剣を手に取ると、体の正面で構えた。
 対してボウスは大剣を頭よりも高くかかげ、大上段の構えを取る。

「いきます」

 ボウスが構え終わると同時に、ココが一息で接近する。
 飛び込んだ勢いそのままにココが剣を横薙よこなぎに振るった。
 ココの斬撃ざんげきは良一も目で追えないほどの速さだったが、ボウスは的確に反応して大剣で迎え撃つ。
 後手に回ったはずのボウスの大剣の一振りで、ココは弾き飛ばされた。

「ココ姉ちゃん!」

 モアが思わず叫んだ。
 しかしココも迎撃げいげきみだったのか、体をひねって衝撃をそらし、回転しながら着地する。ダメージはなさそうだ。
 モアは不安がっているが、セラとシーアに怪我はなさそうだから大丈夫だと説明され、少し落ち着きを取り戻した。
 一方、ココはボウスの迎撃を受けてなお果敢に斬りかかっていく。
 反撃の隙を与えないように、息もつかせぬ連打で攻め立てる。
 だが防戦一方に見えるボウスは、まだまだしゃべる余力を残していた。

「実戦を重ねた良い太刀筋たちすじだ」

 対してココに返事をする余裕はなく、その表情も徐々に苦しそうに歪んでいく。
 あらゆる方向から剣を振るい、緩急かんきゅうをつけて相手のリズムを乱そうと試みるココだったが、ボウスの体勢は崩れない。
 彼は笑みを浮かべながら大きく息を吸う。

「そなたの剣の腕は理解した。我が輩の剣を受けて、さらなる高みを目指すが良い!」

 ボウスはため込んだ息を一気に吐き出すように、大きな声を広間に響かせた。
 そして、最初と同じように大剣を頭の上に掲げる。その姿はまさに剣聖と呼ぶにふさわしい気迫と神秘性に満ち溢れていた。
 広間は一斉に静まり返り、息をすることさえはばかられる。
 一見するとボウスの胴はがら空きだが、ココは動けない。一瞬でも隙を見せれば、あの一撃をまともに食らうと理解しているのだ。
 彼女は歯を食いしばって、次に来るであろう大技に備えて剣を構え直す。
 次の瞬間、ボウスが目をパッと見開いた。

「スラーッシュ!!」

 ボウスは叫び声を上げながら、上段に構えた大剣をまっすぐに振り下ろした。
 それは帝都でゲイルが使い、この神殿の修練場の門下生達が鍛錬たんれんしていた技。
 ただ振り下ろすだけ。
 それだけのはずなのに、一切の無駄をはいした一連の動きは、剣と体が一体化しているかのように錯覚さっかくさせる。
 剣術にうとい良一でも心からあこがれの感情を抱いてしまうほどに力強く、そして美しかった。
 しかし、この恐るべき剣を前にココがとった行動に、良一達はさらに驚かされる。
 彼女はボウスの大剣を避けるのではなく、むしろ自ら相手のふところに飛び込み、剣を振り抜いたのだ。

「その度胸や良し」
「届きました!」

 ココの剣はボウスの胴体をわずかな差で捉えきれず、空振りしたように見えた。同時に、大剣が彼女の肩口に叩きつけられる。
 防御姿勢を取る余裕もなかったココはその衝撃をもろに受けて、最初の迎撃の時とは比べ物にならないほどの勢いで壁際に弾き飛ばされた。


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