上 下
36 / 150

第36話

しおりを挟む
 「それにしても、あの勇者は最低になったな」

 王国騎士団第二師団の騎士達と勇者を追い払った。優人達の馬車は、再びダンジョン都市ジャリスを目指し動き始めて、馬車の中は先程の出来事の話題で話し合った。

 「しかし、勇者というのにそこまでの力量を感じませんでした」

 そこで、優人は先程《詳細鑑定》で見た神宮司のステータスを馬車の中にいる全員に伝えた。

 「レベル100ですか、けれどもアビリティで力があるだけで使いこなせていない」
 「聖剣エクスカリバー、聞いたことがありませんが聖剣と言うからには覚醒すれば凄いでしょうね」
 「あんな勇者は、何人かデラード帝国にいた時に見たけど最後は悲惨な感じで死んでいったね」

 「神様は、神宮司が手に入れたアビリティをハズレと言っていたんですけど、アスカさんと余り変わらないレベルであのステータスの差はもう比べものにならなかったですね」

 それから、アビリティでレベル100になったが、そこから修行もしないでいるから、ステータスの上昇がほとんど無い。またレベル100が一般人の限界と言われており、そこからレベルが上がるかどうかは本人の才能によるらしく、アスカさんのレベル103も凄く素晴らしい才能らしい。

 そんなことを喋っていると、本日の野営地に着いた。

 「さて、今日は騎士団の連中に足止めされたから、明日は少し早めに出発しようと思う。反対意見があるなら言って欲しい、無いようだなでは本日は早めに休んで明日に備えてくれ」

 リーダーがそう言って、優人達は夕飯を食べてから早めに休んだ。

 テントの割り振りは、アスカさんとホワイト、優人とゴーレンさんで分かれた。



 「ゴーレンさん、まだ起きていますか」

 「はい、起きていますよ」

 「最初に勇者に地球に帰りたいか聞いたのは、やはり責任を感じてですか?」

 「その気持ちが無いと言えば嘘になりますね」

 それから、暫く沈黙した空気がテントの中を満たしたがゴーレンさんが、再び口を開いた。

 「しかし、彼はこの世界に馴染み、もう地球にも戻りたく無いと言った。私が出来る償いとしては、余りありませんね、私にとっての勇者は優人くんがいますからね」


 そう言って、ゴーレンさんは寝始めた。優人もそれに習って寝た。




 「見えてきたぞ、あれがダンジョン都市ジャリスだ」

 馬車は朝早くから野営地を出発し、昼の休憩を挟んでから夕方近くにダンジョン都市が見えてきた。

  「見えてきましたね、アスカさんは確かダンジョン都市ジャリスに用があるんですよね」

 これまでの旅の同伴者であるアスカさんに尋ねると

 「ええ、ダンジョン都市ジャリスに飛び出した妹がいると聞いて、故郷に連れ戻る為に来たのですがダンジョン都市は広いですからね、早く見つかると良いのですが」

 「何だ。アスカは別の用事があったのか、暫くは旅に同行するのだろう。やはりミルクはアスカに食べさせてもらったほうが旨く感じるのは何でだろう」

 それから、馬車は走り続けてダンジョン都市ジャリス門にたどり着いた。
しおりを挟む

処理中です...