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第120話

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 「私達が、エルフの村の転移魔法陣によって転移すると王都近郊の平原に転移しました。第3師団の騎士達と一緒に王都に入った時には、少しだけ生気のない王都の街でしたが人々は生活を行っていました。第3師団の駐屯所に一度身を寄せる事にして、レスニール達と家族の解放に向けての話し合いをしているとレスニールに王城からの使者が来て王城への召集がかかりました」

 「まあ、一度王城にも確認に行きたかったからな第3師団の騎士鎧を借りて一緒について行く事にしたんだよ」

 「でも、王城だったらゴーレンさんやアスカさんにサロパスタは顔が知られているから、すぐにバレるんじゃないの」

 「第3師団は異種族混成隊ですからね、今の王が顔を見たくないって全員が兜をつけるように申しつけているんだよ。まあ顔を隠せるから丁度いいが」

 ゴーレンさんとサロパスタが交互に説明を入れてくれる。

 「王城に入るまで、驚いたのは王城を守護する近衛師団が全員姿がなかったのです。その代わりに件の第4師団が王城の守護を行っており、黒い全身鎧が一際異様な存在となっていました。王城に入っても止められることなく王城の中まで通され、そこで不測の事態に備えて私が王城に勤めていた際にあった隠し部屋や隠し通路を使ってレスニールと分かれました」

 「ああ俺も知らなかった場所に通路があったりして驚いたよ」

 王との会話は私が、とレスニールさんが引き継いだ。

 「王と対談すると第3師団の解団を伝えられた。王の命令を達成できない騎士団など必要ない、またエルフの村の侵攻を出来なかった罪で私の首をはねる、部下の幹部達も同罪だと突如、王の間に現れた第4師団の騎士達に捕縛されて王城の地下牢に捕らえられたのだ」

 苦悶の表情をつくるレスニールさんと他の騎士達

 「私達も隠し部屋から、その様子を伺っていて私達の実力があればレスニール達を解放できたでしょうが、家族の人達を代わりに狙われるでしょう。数の差で全員の家族を助けられないかもしれないと考えて、レスニール達には我慢をしてもらい我々はすぐに家族の人達を安全な場所に移動させようとしました」

 「それから、フィーレンとリーンとホワイトと合流して拘束されなかった第3師団の騎士達と昼間はフィーレンとホワイトに情報収集を頼み、夜間はアスカさんやサロパスタがそれぞれの方法で情報を集めました」

 「そして、情報収集に1日、準備に1日、実行で1日の合わせて3日で作戦を実行しました。私は隠し通路を使って地下牢からレスニール達第3師団を解放し、アスカとサロパスタは第3師団の家族を見はる第4師団の騎士達を退けて王都の外まで脱出させました」

 「作戦は上手くいってな、家族は実行で全員王都の近くの前王の親臣だった貴族が代官を務める街へと第3師団の護衛で送り出し、レスニール隊長達は見ての通りだ」

 「作戦は上手くいって、翌日から第4師団の連中が俺達を探し回っていたが、まあ大丈夫だったんだが」

 そこで、一息をついた。

 「一昨日ですね、突然王都中にチラシが撒かれました」

 「俺も見ましたよそのチラシ」

 ゴーレンさんが、出してきたのは街道でもらったのと同じ魔人ヴェロニカに王の座を譲ると書かれたチラシだった。

 「チラシが出てから前王の遺臣達が第4師団に襲われて、その首を王都の街中に晒されました」

 部屋の空気が重くなった。

 「それからは王都の民達は急いで王都を脱出しようとしました。第4師団の騎士達も逃げる一般人には手を出しませんでしたが、第1師団と第3師団の駐屯所や前王に親しかった貴族の家は次々に襲われました。この家は長く空き家としていたので第4師団の手から逃れているようです」

 「それで、どうするんですか」

 「今宵にでも、王城に侵入し魔人を討伐しに行こうかと相談していたのですが、サロパスタがユート君達を待って万全の状態ではないと作戦は実行しないと言いまして、では暫くは様子を見ようとしていたところだったのです」

 「そうなんですか」

 「ユート君、我が国の問題に巻き込んで申し訳ないのですが、お手伝いしていただけませんか、召喚を行って頼める立場ではないのですが、お願い致します」

 ゴーレンさんに頭を下げられて、優人は了承した。

 「これまで、ゴーレンさん達には助けられてばっかりで、恩を少しでも返せるのなら」

 「有難うございます」

 それから、いつ王城に侵入するか相談して翌日の夜に作戦を実行することにした。

 
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