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壱
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「よ!直輝おはよう。」
「おはよう光君。今日は流石に寝坊しなかったね。」
「まーな!」
直輝とはアパートの部屋が隣同士ということで、物心ついた時から、高校生となった今でもずっと一緒に居て、幼なじみ兼親友だ。毎日当たり前のようにしていた登下校も今日が最後だと思うと少し寂しい気もする。
俺の母は昔から身体弱くずっと寝たきりで、先月父もリストラに遭い職を失った。
元々貧しい方だった俺の家は、明日の食事も危うい中、家賃など払える訳もなく明日から九州にある祖母の家でお世話になることになった。
「2人で登校するのも今日が最後かぁ。」
直輝が薄らと無理に笑みを浮かべながら、どこか寂しそうに呟く。
「そんな辛気臭そうな顔すんなよ。一生会えないとかじゃないんだから。」
「確かにそれもそうだね。」
「来年の夏休みなったら、こっちに遊びに来るしお前もいつでも遊びに来いよな。あ、俺のばあちゃん家の近く海水浴あんだよ。」
「えっ、近くに海とか最高じゃん!次に会った時には日サロ常連級に焼けてそうだね。ほらほらあの前テレビに出てたホストの。」
直輝が笑うのをわざとらしく堪えながらそう言った。
いつの日か一緒にテレビで見た、日サロで焼けたホストの容貌を俺に置き換えて、2人で腹を抱えながら学校へ向かった。
学校ではクラスメイトから色紙や手紙を貰ったり、昼休みは今までと同じ様にいつものメンバーとサッカーをして楽しんだ。
半年間という短い間しか共に過ごさなかったが、いざ今日が最後だと思うと本当にこのクラスから抜ける事が寂しくて悔しかった。
「光、たまには帰ってこいよ!」
「新しい学校でも頑張れよ!」
「またサッカーしようぜ。」
皆に温かい言葉をかけられながら、俺は学校最終日を終えた。
そしていつものように直輝と待ち合わせし、同じアパートに帰る。いつより足取りは遅く、色んな話に花を咲かせながら帰路についた。
「じゃ、明日見送り行くからね。」
「わざわざいいのに。」
「光が日サロ常連客級になる前の姿の見納めだよ。ふっ。」
「まだ言ってるし!まぁありがとな。後でまたメールする。じゃあ。」
「うん。じゃーね。」
玄関を開けて、俺は乱暴に靴を脱ぎリビングに向かった。
「ただいまー。」
「光おかえりなさい。」
ベットの上から母が弱々しい声で返事をした。母は病弱で心配性だが、俺の事をいつも気にかけてくれて優しい自慢の母だ。
「父さんは?」
「引越し用のトラックを借りに行ったよ。光も荷造りはもう終わった?明日の朝一でトラックに乗せるからしっかり準備するのよ。」
「はいはーい。」
母に言われた通りに荷造りを早々に終わらせ、俺は明日に備えて今日は早めに寝床についた。
「光君、新しい学校では遅刻しちゃダメだよ。海行き過ぎもダメだよ。」
「はいはい。直輝もいじめられないようにしっかり胸張っとけよ!」
「もう光君がいなくてもいじめられないよ!だから安心してね。」
「ふふっ。遠距離カップルの別れみたいよ貴方たち。」
俺と直輝の母親がほっこりとした雰囲気で俺たちを見ていた。
「じゃあ、そろそろ行くぞー。」
父がトラックの窓から叫んだ。
「じゃあな、直輝。向こうに着いたらメールする。」
「うん。気をつけてね。」
そうして俺は故郷である東京を離れ、長い旅路をトラックに揺られ、九州の祖母の家に着いた。
「おーい光、もう着くぞー。」
父の声で目を覚まし、窓の外に目を向ける。一面に広がる緑。
「ほんとに相変わらず山と畑しかないじゃん。」
「自然いっぱいでいいじゃないか。空気も良いし、ここなら母さんも体調良くなりそうじゃないか。」
「そうね。きっと光もすぐ慣れるわよ。」
「そーかな~。」
(正月にたまに来る分にはいいけど、住むのはちょっとなぁ、とか言ったら怒られそうだし辞めとこ。)
「ほら光見てみろ。あの大きな山があるだろ。あの向こう側が海だ。綺麗だぞ~新しい学校の友達に案内してもらうといい。」
「そうだねぇー。」
と、どこが他人ごとのように返した。
「あらまぁ、よく来たねぇ。光お腹空いてない?由紀さんも身体大丈夫かい?」
「ばあちゃん久しぶり~!お腹空いた!」
「お陰様で大丈夫です。急に同居させて頂くことになってすいませんお義母さん。ご迷惑お掛けしますがよろしくお願いします。ほら貴方も。」
「ああ、母さん本当に助かったよ、ありがとう。」
「いいのいいの。私も爺さんが死んで寂しかったから嬉しいよ。ほら光、台所におやつがあるから食べていいよ。」
ばあちゃんは笑顔で俺たち家族を出迎えてくれた。それから美味しいご飯を食べ、近くの銭湯に入ったあとは、自室の布団の上で直輝とメールをした。そして明日からは学校もあったので早めに床についた。
人の気配を感じふと目が覚めた。今は、何時だろうか。身体が重い。何故か身体が動かない。
(金縛り?いや疲れてただけか。)
なんとか目を薄らと開けると、
寝ている俺の上に髪の長い人らしきものがまたがって俺を見ている。俺の顔に長い髪がパラパラと落ちてきた。
(え、)
次の瞬間、
「助けてよ助けてよ助けてよぉぉおお」
急に女が大声を出して叫び出した。
よく見ると、人の形をしたそいつの顔はただ真っ黒で顔とはいえず、人ではなく化け物だった。
「助けて助けて助けてってばああああああああああああああああああああ」
(や、やばい何だこの化け物)
叫んで別室にいる両親に助けを呼びたいのに声が出ない。化け物はまだ叫び続けている。俺は目をきつく閉じ、ただ時が過ぎるのを待った。
「ひか、るひか、る」
「うーん。」
「こら光!起きなさい!」
「うわあああああああ!」
「夢でも見てたのか?初日から遅刻はだめだろ、早く起きなさい。」
「な、なんだぁ父さんか。」
(はぁ、嫌な夢。昨日は疲れてたからな。)
俺は急いで準備をし、新しい制服に身を包み昨日のうちに教えられた通学路を全力で駆けていった。
「ふぅ、セーフ。」
「君が光か?初日からギリギリなんてさすが都会っ子だな~。」
とガハハと笑うこの人はどうやら俺の担任らしい。
「じゃあ、早速教室行こうか。」
「はい。」
今日から級友となる新しい仲間にワクワクし、いよいよと教室の扉を開けるとそこには2つしか席がない。そして埋まっているのは1席。俺は混乱しながらも、先生の後を追って、教卓の前に立った。
「ほら、光。挨拶!」
「え、あぁ、東京から転校してきました、遠藤光です。よろしくお願いします。
ってクラスメイト1人だけ!!??」
…………。教室に沈黙が流れる。
「そりゃこんな田舎なんだから、居るだけマシでしょ。実質、君が来るまで俺学年1人だったし。」
「光、こいつは加賀恭介だ。唯一無二の同級生なんだから仲良くやんな!9時から一限目だから、それまでは自己紹介でもしときな~。」
そう言って先生は教室を後にした。
(き、きまづ。)
教室にはまたもや沈黙が走る。
恭介君に1度ちらっと目を向けると、彼は僕を凝視していた。
「え、な、なに?なんかついてる?」
「まあついてると言えばついてるね。
ねえ、君見えてるんでしょ?祓えんの?」
「え、何が。」
「はぁ。あそこにいる化け物だよ」
恭介が指さした先、グラウンドの方を見ると、昨日俺にまたがっていた髪の長い化け物がいた。
「うわぁぁぁああ!」
「やっぱ見えてんじゃん。」
「昨日の夜俺にまたがってたんだよあいつ!夢じゃねーじゃん!、、、。
てかなんで平然としてんだよ!」
「あれは害がないやつ。ただうるさいだけで。封印する?」
「害がない!?封印?お前何言ってんの!?」
「とりあえず落ち着いてよ。まあ、簡単に言うと化け物!」
「見りゃ分かるよ、。」
「ああいう化け物を封印するのが僕ん家の家業なんだよ。」
「もう何言ってるか分かんねぇし、え、化け物近づいて来てね!?」
「見えるヤツ中々いないよ。教えてやるから君も封印できるようになれ。えっーと、あいつの封印の仕方はねぇ、、」
そうして、この田舎で俺は級友の恭介と化け物を封印する生活を始めた。。
「おはよう光君。今日は流石に寝坊しなかったね。」
「まーな!」
直輝とはアパートの部屋が隣同士ということで、物心ついた時から、高校生となった今でもずっと一緒に居て、幼なじみ兼親友だ。毎日当たり前のようにしていた登下校も今日が最後だと思うと少し寂しい気もする。
俺の母は昔から身体弱くずっと寝たきりで、先月父もリストラに遭い職を失った。
元々貧しい方だった俺の家は、明日の食事も危うい中、家賃など払える訳もなく明日から九州にある祖母の家でお世話になることになった。
「2人で登校するのも今日が最後かぁ。」
直輝が薄らと無理に笑みを浮かべながら、どこか寂しそうに呟く。
「そんな辛気臭そうな顔すんなよ。一生会えないとかじゃないんだから。」
「確かにそれもそうだね。」
「来年の夏休みなったら、こっちに遊びに来るしお前もいつでも遊びに来いよな。あ、俺のばあちゃん家の近く海水浴あんだよ。」
「えっ、近くに海とか最高じゃん!次に会った時には日サロ常連級に焼けてそうだね。ほらほらあの前テレビに出てたホストの。」
直輝が笑うのをわざとらしく堪えながらそう言った。
いつの日か一緒にテレビで見た、日サロで焼けたホストの容貌を俺に置き換えて、2人で腹を抱えながら学校へ向かった。
学校ではクラスメイトから色紙や手紙を貰ったり、昼休みは今までと同じ様にいつものメンバーとサッカーをして楽しんだ。
半年間という短い間しか共に過ごさなかったが、いざ今日が最後だと思うと本当にこのクラスから抜ける事が寂しくて悔しかった。
「光、たまには帰ってこいよ!」
「新しい学校でも頑張れよ!」
「またサッカーしようぜ。」
皆に温かい言葉をかけられながら、俺は学校最終日を終えた。
そしていつものように直輝と待ち合わせし、同じアパートに帰る。いつより足取りは遅く、色んな話に花を咲かせながら帰路についた。
「じゃ、明日見送り行くからね。」
「わざわざいいのに。」
「光が日サロ常連客級になる前の姿の見納めだよ。ふっ。」
「まだ言ってるし!まぁありがとな。後でまたメールする。じゃあ。」
「うん。じゃーね。」
玄関を開けて、俺は乱暴に靴を脱ぎリビングに向かった。
「ただいまー。」
「光おかえりなさい。」
ベットの上から母が弱々しい声で返事をした。母は病弱で心配性だが、俺の事をいつも気にかけてくれて優しい自慢の母だ。
「父さんは?」
「引越し用のトラックを借りに行ったよ。光も荷造りはもう終わった?明日の朝一でトラックに乗せるからしっかり準備するのよ。」
「はいはーい。」
母に言われた通りに荷造りを早々に終わらせ、俺は明日に備えて今日は早めに寝床についた。
「光君、新しい学校では遅刻しちゃダメだよ。海行き過ぎもダメだよ。」
「はいはい。直輝もいじめられないようにしっかり胸張っとけよ!」
「もう光君がいなくてもいじめられないよ!だから安心してね。」
「ふふっ。遠距離カップルの別れみたいよ貴方たち。」
俺と直輝の母親がほっこりとした雰囲気で俺たちを見ていた。
「じゃあ、そろそろ行くぞー。」
父がトラックの窓から叫んだ。
「じゃあな、直輝。向こうに着いたらメールする。」
「うん。気をつけてね。」
そうして俺は故郷である東京を離れ、長い旅路をトラックに揺られ、九州の祖母の家に着いた。
「おーい光、もう着くぞー。」
父の声で目を覚まし、窓の外に目を向ける。一面に広がる緑。
「ほんとに相変わらず山と畑しかないじゃん。」
「自然いっぱいでいいじゃないか。空気も良いし、ここなら母さんも体調良くなりそうじゃないか。」
「そうね。きっと光もすぐ慣れるわよ。」
「そーかな~。」
(正月にたまに来る分にはいいけど、住むのはちょっとなぁ、とか言ったら怒られそうだし辞めとこ。)
「ほら光見てみろ。あの大きな山があるだろ。あの向こう側が海だ。綺麗だぞ~新しい学校の友達に案内してもらうといい。」
「そうだねぇー。」
と、どこが他人ごとのように返した。
「あらまぁ、よく来たねぇ。光お腹空いてない?由紀さんも身体大丈夫かい?」
「ばあちゃん久しぶり~!お腹空いた!」
「お陰様で大丈夫です。急に同居させて頂くことになってすいませんお義母さん。ご迷惑お掛けしますがよろしくお願いします。ほら貴方も。」
「ああ、母さん本当に助かったよ、ありがとう。」
「いいのいいの。私も爺さんが死んで寂しかったから嬉しいよ。ほら光、台所におやつがあるから食べていいよ。」
ばあちゃんは笑顔で俺たち家族を出迎えてくれた。それから美味しいご飯を食べ、近くの銭湯に入ったあとは、自室の布団の上で直輝とメールをした。そして明日からは学校もあったので早めに床についた。
人の気配を感じふと目が覚めた。今は、何時だろうか。身体が重い。何故か身体が動かない。
(金縛り?いや疲れてただけか。)
なんとか目を薄らと開けると、
寝ている俺の上に髪の長い人らしきものがまたがって俺を見ている。俺の顔に長い髪がパラパラと落ちてきた。
(え、)
次の瞬間、
「助けてよ助けてよ助けてよぉぉおお」
急に女が大声を出して叫び出した。
よく見ると、人の形をしたそいつの顔はただ真っ黒で顔とはいえず、人ではなく化け物だった。
「助けて助けて助けてってばああああああああああああああああああああ」
(や、やばい何だこの化け物)
叫んで別室にいる両親に助けを呼びたいのに声が出ない。化け物はまだ叫び続けている。俺は目をきつく閉じ、ただ時が過ぎるのを待った。
「ひか、るひか、る」
「うーん。」
「こら光!起きなさい!」
「うわあああああああ!」
「夢でも見てたのか?初日から遅刻はだめだろ、早く起きなさい。」
「な、なんだぁ父さんか。」
(はぁ、嫌な夢。昨日は疲れてたからな。)
俺は急いで準備をし、新しい制服に身を包み昨日のうちに教えられた通学路を全力で駆けていった。
「ふぅ、セーフ。」
「君が光か?初日からギリギリなんてさすが都会っ子だな~。」
とガハハと笑うこの人はどうやら俺の担任らしい。
「じゃあ、早速教室行こうか。」
「はい。」
今日から級友となる新しい仲間にワクワクし、いよいよと教室の扉を開けるとそこには2つしか席がない。そして埋まっているのは1席。俺は混乱しながらも、先生の後を追って、教卓の前に立った。
「ほら、光。挨拶!」
「え、あぁ、東京から転校してきました、遠藤光です。よろしくお願いします。
ってクラスメイト1人だけ!!??」
…………。教室に沈黙が流れる。
「そりゃこんな田舎なんだから、居るだけマシでしょ。実質、君が来るまで俺学年1人だったし。」
「光、こいつは加賀恭介だ。唯一無二の同級生なんだから仲良くやんな!9時から一限目だから、それまでは自己紹介でもしときな~。」
そう言って先生は教室を後にした。
(き、きまづ。)
教室にはまたもや沈黙が走る。
恭介君に1度ちらっと目を向けると、彼は僕を凝視していた。
「え、な、なに?なんかついてる?」
「まあついてると言えばついてるね。
ねえ、君見えてるんでしょ?祓えんの?」
「え、何が。」
「はぁ。あそこにいる化け物だよ」
恭介が指さした先、グラウンドの方を見ると、昨日俺にまたがっていた髪の長い化け物がいた。
「うわぁぁぁああ!」
「やっぱ見えてんじゃん。」
「昨日の夜俺にまたがってたんだよあいつ!夢じゃねーじゃん!、、、。
てかなんで平然としてんだよ!」
「あれは害がないやつ。ただうるさいだけで。封印する?」
「害がない!?封印?お前何言ってんの!?」
「とりあえず落ち着いてよ。まあ、簡単に言うと化け物!」
「見りゃ分かるよ、。」
「ああいう化け物を封印するのが僕ん家の家業なんだよ。」
「もう何言ってるか分かんねぇし、え、化け物近づいて来てね!?」
「見えるヤツ中々いないよ。教えてやるから君も封印できるようになれ。えっーと、あいつの封印の仕方はねぇ、、」
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