魔性の鬼

蓮ノ葉 睡蓮

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魔性の鬼

泡沫の夢

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私が魔性の鬼と呼ばれて何ヶ月たったんだろう

そんなことをぼんやり考えていたらあの人の家から近い駅で降りてしまった

私は気まずくなり1度駅をでてICカードに1万円分チャージするとできるだけ遠い駅へ向かおうとした

1万円分チャージしたのは多分気が動転していたから
いつも通り1000円チャージする予定だったのに今回は1万円分チャージした

毎日1000円分ずつチャージしていて残高には困っていない
住所特定された時から送られてくるお金から数万ぬいて貯金をしているのでお金には困っていない

でも…だって…降りてすぐすれ違った人があの人に似ていたから

笑い方…

仕草…

そして煙草と柔軟剤の匂い…

すべてが彼と一致していた

だから私はストレス発散の代わりに1万円分チャージをした…

チャージしてすぐ私はお手洗いに駆け込んだ
お手洗いに駆け込むと何故か涙が溢れて止まらなかった

彼に声をかけられそうになったから…
彼も私も気付いていた…

しばらくして涙がおさまるとメイクを直し

普段は付けない真紅の口紅をつけた

べったりしすぎないよう唇に少しのせ指で馴染ませる

そしてその上からグロスを軽く塗る

これをつけるのはいつぶりだろうか…
彼が好きだった色で期間限定だったので2つ買ったのだ

きっとこれをつけて見つかったら間違いなく彼に気づかれてしまうだろう…

だからあえて付けたのだ
髪には洗い流さないトリートメントを

彼がいい香りと言ってくれたからずっと使い続けている

最後に彼と会った時と同じメイク

たった唯一の虚しくないSEX

だから私は魔性の鬼をやめられない

いつかその日を忘れられるために
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