日の出が祝福する時

ふつうのひと

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1章

4話 "炎を出す能力"

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「えっとー、まず、右に行ったら危険な人達がいっぱいいるって言うのはどういう...?」
翔庭さんとの再会を経て、俺は気になることを口にする。場面は先程の再開の数分後、翔庭さんとペアになって道を歩いているところだ。

「あ、えっとそれは、私右から来たんですけど強い人達がたくさんいて私じゃ適いそうになかったので逃げてきた感じです、かね」
翔庭さんは少し残念そうな顔をしてそう言う。それにしても右へ行かなくてよかった。地獄に自ら足を踏み入れるようなものだ。

「なるほど、とりあえず無事でよかったよ。」

「あ、はい!ありがとうございます!!」
翔庭さんは不意をつかれたように一瞬目を見開いて、すぐにニッコリと笑ってそう返してくれる。
ちなみに翔庭さんは気合いを入れるためと髪を結んでおり、これはこれで可愛い、と俺は心が癒される。

「賢くんはもう4ポイント獲得してるんですね、お早い...」
翔庭さんは俺の右腕に着いているパネルを見ながらそう言う。翔庭さんの顔が急に近付いたので俺は反射的に目を逸らしてしまう。

「あ、あぁ。多分運が良かっただけかなぁ」
緊張で少しあやふやになってしまったが。実際かなり運が良かった。あそこで俺じゃ適いそうにない相手が来たら、俺は逃げる術が無いから恐らく何も出来ずにリタイアだっただろう。

「....賢くん、私の力はいざって時に、ホントにいざって時にしか使えないから、私は多分最後の最後まで力は使えないと思います。でも索敵とかは得意だから私に任せて欲しいです!」

「ん?あぁ、じゃあ頼むよ」
翔庭さんの力はサポート系なのかとばかり思っていたけど、どうやらちゃんと主戦力として使えるようだ。なにか発動条件があるのか?そこら辺は聞かないでくれと前に言われたから聞かないでおこう。
それにしてもここら辺は敵が少ない。やっぱり右の道の先に敵が山ほど居るのだろうか?だとすると、ちょっとだけ右の道に行くのもありだな。いや、やっぱり中央広場の方に行って高台から見下ろして確認する方がいいか...?
どちらにしても敵が多そうだ。何よりも──

「──賢くん!賢くん!!」

「...え?なに?」
考え事をしていたら、突然翔庭さんが俺に顔を近づけてきたので何事かと少し焦るのと同時に翔庭さんの顔が近くて緊張がより高まる。
「敵です!!」

「っははははァ!気付くの遅すぎでしょ!なんだぁ?カップルかぁ!?」

「──ッッ!!!」
俺は咄嗟に手を構えて低炎を出そうとして....

「させる訳無いっしょ?」
次の瞬間、男の顔が俺のすぐ近くに迫っており、俺の手を捻る。俺は手を捻られた時の独特な痛みによって悶える。俺と相手との距離はそれなりにあったはずだ。だが、どういう訳か一瞬で距離を縮められた。

「くっそ──翔庭さ──」 

「──あんた、こんな時まで他人の心配かい?」

相手の拳が俺の鳩尾に入り、体に衝撃が走る。俺は膝から崩れ落ち、喉から吐瀉物が込み上げてきたが、俺は何とかそれを吐き出さずに飲み込んだ。喉が灼けるような感覚を味わい、苦虫を噛み潰したような顔をしてしまう。

「君、淡生賢でしょ?俺知ってるよ。有名人だもん。」

「はぁ、はっ、はぁ。へぇ、それは、、よかった。」
未だに立ち上がれずにいる足を手で叩き、無理やり動かす。

「有名っつっても、悪目立ちってやつだな」
相手はふひっと口元を歪めて笑い、翔庭さんの方を見た。

「悪ぃけどあんたもリタイアしてくんない?女を傷付けるようなこと出来ねぇんだわ。」
翔庭さんはさっき攻撃を食らったのか木に叩きつけられており、体が動かせないようだ。

「──ッッ!!!」
俺はよそ見をしていたせいで敵の攻撃を回避出来ずに、ろくに防御も取れないまま頭に重い蹴りを食らい、視界がぼやける。そして少し経った後に頭痛と倦怠感が一気に襲いかかってくる。

「あのさぁ、はやくリタイアしろよ、めんどくさいな」

「...ちが、う。これは....」
一撃でこの威力。そして先程の異常なほどの速さ。これは...

「.....時間をかけすぎたかな」
そう言った瞬間、俺の頭目掛けて拳が飛んでくる。俺はそれを何とか額部分だけは避けて被害を最小限に抑える。

「運動能力の...強化...?」

「まぁ、そんなとこだ。でも、分かったところでだわな」
常に力を使わないところ、クールダウンでもあるのだろうか。

「───。」
俺は少しだけ動けるようになった翔庭さんの方を、否。翔庭さんの足元の石に視線を送り、翔庭さんはその視線に気付く。
そして翔庭さんは石を掴んで相手に投げつけた。

「ちょっ、なんだよウザったいなぁ!最後のあがき?みっともないなぁカップルそろって。」
相手が拳を振りかぶって一瞬で俺の眼前まで迫ろうとする。そしてそのまま拳を振り下ろし....

その拳は、俺を捉えることなく空振りとなった。

「なっ、どこに!」

「これを使うのは初めてだな──高等手、消炎」
俺は拳相手の真後ろに瞬間移動しており、すぐにそれが翔庭さんの力だと気付く。心の中で翔庭さんに感謝しつつ、俺は技名をわざと相手にも聞こえるように告げる。

高等手、消炎。
それは、賢が矢羽根との練習の間に身につけた、新しい技である。通常手の低炎と違い、消炎は相手に当たるまで限界まで火力を抑えられ、着弾するまで姿を消す。

──そして着弾した瞬間に火力が一気に解放され、相手をも消し去る炎となりうる。

大規模な爆発により、爆発する瞬間だけ賢達の視界は白い光で埋め尽くされる。その一瞬の後、煌めく閃光と炎が賢達を飲み込む。少し遅れて試験会場全域にに轟音が鳴り響き、人々は何事かと恐れおののく。

「はぁ、はぁ、、、」
俺は内界力が切れたのか、その場にへたれこむ。さっきの負傷もあり、頭痛と倦怠感、吐き気が凄まじい。
「賢くん!大丈夫ですか!?」

「あ、あぁ。大丈夫だ。それより...」

「敵、ですね。」

かなりの爆発が起こり、賢達がさっきまでいた場所は跡形もなく消し去っていた。相手の身を案じている間に煙が段々と晴れ、あのボロボロになった男が.....

「──なにか膨大な出力の力を使う予兆が見られたので慌てて来てみれば、生徒にこれほどの威力を放つとは、何事だ?淡生賢、翔庭真名。」

「あ、う、えっと、これはですね...」
俺は突然現れた男に驚きつつ、聞き覚えのある声だったのですぐに状況を理解する。そして俺はどこから話すべきか言葉に詰まる。

「た、淡生くんはまだ力の扱いが慣れてないだけだったと思います!!」
と、泣きそうな顔で弁明をする翔庭さん。
そしてその弁明を思ったよりもちゃんと聞いてくれているさっきの男の生徒を抱えているのは...担任の先生だった。

「言い訳なら後で聞こう。とりあえず淡生はもっと爆発する瞬間の火力を抑えろ。消える炎の火力を抑えすぎだ。不発も起こりうるぞ。」

「え、あ、はい、分かりました。」
俺は思わぬアドバイスを受けて呆気に取られる。

「もっとシャキッとせんかシャキッと。それと翔庭真名。おまえもこれからは十分淡生を見ておくように。」

「は、はい!!」

「翔庭を見習わんか。そんなではすぐに飽きられてしまうぞ?」
と、最後に軽口を言って「はっはっは!」と笑い声を上げて立ち去った先生は、この後あの生徒を治療させに行くのだろうか。
右腕を見ると、ポイントが9になっていた。

「わっ、凄いじゃないですか賢くん!9ですよ9!」

「え?あ、あぁ。」
とりあえず、さっきの生徒との戦いの戦果は、5点と火力調整が必要なのと.....翔庭さんの満面の笑みだ。

​───────​───────​───────
「──それ、お前の見間違いなんじゃねーの?」
特進クラス選抜試験Aブロック担当の2人の教師が言い合いをしている。

「違いますよ!!ホントにあったんですよ!結界にあ、な、が!!」
穴が、を強調するこの教師は去年入ってきた新人教師だ。そんな教師が試験会場周囲の不審者防犯のために見回りをしていた所、試験会場全体を囲む大きくどんな力でも壊れないはずの結界にほんの少しの小さな穴があったとベテラン教師に報告してきたのだ。

「だーかーら。お前ちょっと疲れてんだよ。保護者説明会でも絞られてたろ?お前の担当クラス結構ワイルドなガキが多いんだろ?そりゃ疲れるだろ」

「確かにうちのクラスにはワイルドなクソガ...危なっかしい生徒達が多いですけども!そんな僕でも穴があったのを見たんです!!」
危うく言ってはいけない言葉を言ってしまいそうになってすぐ訂正した新人教師だが、それをベテラン教師は見逃すはずもない。

「....今のは今日の飲み、お前持ちにする代わりに黙っといてやるよ。それと穴開けてるとこを誰にもみられないって無理があんぞ?そこら中に警察がウロウロしてるからな」
試験会場周辺には、新人教師と同じく防犯のために警察が巡回をしている。

「うぅぅぅ、でも!見たんですって!僕の目が節穴に見えますか!?」
新人教師は目を指で無理やり開き、茶色の瞳をベテラン教師に見せつける。

「見える。」

「なぁんでだよおおおおおおお」
ベテラン教師に即答で否定をし、新人教師はあえなく撃沈する。


今こそ2人の教師は危機感をさほど抱いていないが、事の重大さがハッキリしたのはその僅か25分後だった。

​───────​───────​───────
「よし、小さな穴を作るのは完了!さぁてっ、ちゃちゃっとやっちゃいますか~っと」
試験会場の上空60m、ドーム状に張られた結界の縁に立っている男は、髪は白と黒のツートンカラー、服装は肩から足の関節ぐらいの長さの黒が特徴の服だ。その服の左肩側には$の真ん中の線が少し曲がった様なマークのデザインが施されていた。手首の少し前程度まである袖から白い肌色の手を出し、手で銃の形を作る。そしてそれを結界に向け──

「ばぁん!...なんちゃって」
直後、小さな穴が瞬く間に広がり、人1人通れるほどの大きさの穴となった。

「──ふ、ふふっ。どんな子達が居るんだろうなぁ、ワクワクしてきちゃった」
男は頬を赤らめ、紅潮した顔を隠しもせずに...

──空いた穴へと、飛び込む。

エンパイア、その中でも圧倒的な強さを誇る"四命将"の1人の男が試験会場へ乱入したのだった。
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