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うつくしいまなざし
しおりを挟む大きな龍が、悠然と横たわる。
時が止まる。なにもかもが、美しく見えて
でなかったはずの涙が、出ているように感じた。
わたしは、首を動かした金色の龍と見つめあう。
息が苦しかったことも
誰からも必要とされていなかった悲しみも
闇の中に落ちていく、救いようのない絶望も・・・。
すべてが、わたしのなかで覆い隠されて
闇をはらう。光がわたしの中へ満ちていく。
・・・これは、
私が死ぬことへの最後の走馬燈をみているのか。
それとも、意識がなくなる前の幻覚なのだろうか。
はたまた、この湖の中だけ、別世界なのかもしれない。
なんて…なんて…。
(‥‥き‥‥れい‥‥)
―――――それは、今まで私が生きてきた中で、
とても幸せな夢だと思った。
その龍は、私を見るや否や、頬をすりよせる。
自分の体に、慈しむかのような情愛の瞳をむけて、私を包み込む。
こんなに壊れ物をあつかうかのように、触れられたのは初めてだった。
懐かしい感情が、私の体中を駆け巡る。
しっている。
わたしは、この龍を…しっている。
「そなたに会えるのを、ずっと待っていた…」
私の体は、もう動かない。声も、出せない。
目を閉じたはずなのに。
でも、なぜか、龍のことだけは見えている。
不思議と、水の冷たさは消えていた。
「何度でも‥‥
幾千万年の時を越えようとも、そなたのことは忘れぬよ。龍族の娘よ」
忘れない想いなんて、あるのだろうか。
私の躯のまわりに、大勢の龍たちが頭を下げている。
金の龍が、私を取り囲むように、横たわらせる。
ああ。
でも、もう…わたしは駄目みたい。
意識を戻せない。
(わたしのことを、まっていてくれる人が…
いたのね‥‥)
金の龍の、ぬくもりの中で私はまどろむ。
(つぎに目覚めた時はきっと‥‥
金の龍と、ともに、生きたい。
‥‥あれ、まえにも、
こんなことをねがったようなきがする)
―――――金龍、どんな姿になっても、わたしを見つけてね‥きっとよ、きっと。―――――
深い湖に沈んだ彼女の瞳には、なにもうつらなかった。
湖のほとりでは、鳥が彼女をいたむようにして鳴き飛び立った。
雨は降ることなく、大地を枯れ果てた荒れ地へと変える。
空だけは、青い。
end
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