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4話 母に打ち明け話
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僕は大沢恵が発作を起こしたことが気がかりだった。何ていう病名だろう。デイケアスタッフ主任の高木紀子にプログラム後にスタッフルームで訊いてみた。
「恵さんねぇ、彼女は統合失調症とパニック障害なのよ。そのパニック障害の発作だね。いい子なのに、可哀相だわ」
聞いたことがある病名だ。
「そうなんですか。確かに気の毒ですね」
そこで話に入ってきたのはスタッフの笹田亮子だ。
「恵さんは24歳という若さだけど、よく気付くしとてもいい子だとワタシも思います。ただ、病気が邪魔をしているからうまくいかないんじゃないかと思いますね」
高木紀子主任は、
「確かにそうね。病気が邪魔をしているのは事実だわ」
笹田亮子は自分の机に座り、パソコンを起動した様子。
今日の送迎車の運転手は上原博。助手は僕。上原博は目鼻立ちがはっきりしていてイケメン。身体もほっそりしている。そのお陰か、女性のメンバーやスタッフに人気がある。今は独身だけど、本人曰く彼女がいるらしい。彼は26歳だが彼女はいくつだろう。気になるけれど、訊かない。癪(しゃく)に障るから。いい人なんだけど。
でも、上原博は仕事をする上でも、年齢も先輩だ。僕は今年の3月に大学を卒業して、4月からこの病院のデイケアでスタッフとして働いている。ちなみに22歳。上原博は山崎敏則よりも4つ年上。僕は内面も大切だと思っているが、外見も大事だと思っている。僕は外見にコンプレックスを抱いている。小太りで身長は160センチくらいと男性にしては低い。その上、禿ているし、顔にニキビが多い。だから、綺麗な顔をした上原博が苦手だ。仕事だから仕方なく話しているけれど。
僕が日報をつけていると、
「山崎君、送迎行くよ。忘れてたわけじゃないよね?」
「そんなことはないです」
相変わらず嫌なことを言う人だな、と僕は思って腹立たしくなった。「怒り」という感情には至らないが気分はよくない。でも、結局、仕方ないで終わらせてしまう。
でもいくら年が近いとはいえ、先輩は先輩だ。従わないと。
僕と上原博は送迎を終え、病院に戻ってきた。
「お疲れ!」
と、いつものように上原博は声をかけてくれた。
「お疲れ様です」
僕は答えた。
「山崎君、この病院にきて半年くらい経つか?」
笑顔でそう言われた。その笑みにはどういう意味があるのだろう。気になる。
「そうですね。お陰様で半年が経ちます」
僕は気分よく言った。
「誰のお陰だと思う?」
一瞬、この人は何を言ってるのだろう、と思った。
「それは、皆さんのお陰ですよ」
「おっ! その通りだ」
何だか感じが悪い。何でそんなこと言うのかな。恩着せがましいとはこのことだ。
「彼女はいるのか?」
訊かれたくない質問だ。
「いないですよ、どうしてそんなこと訊くんですか?」
上原博は笑っている。何か、腹立つ。自分は彼女がいるからいいかもしれないけれど。
「いや、何となく」
尚も笑っている。まるで、馬鹿にされているかのようだ。
僕は気分を害して足早にスタッフルームに戻った。
畜生! と拳を強く握りながら心の中で叫んだ。誰かに今までの一連の流れを話したい。できれば院内の職員に話したい。その方が分かりやすいから。
考えたがこの病院に就職してまだ約半年しか経っていないので愚痴を言える職員がいない。なので仕方ないから帰宅し、地元の母親に電話をすることにした。友達もいないことはないけれど、薄っぺらい関係であまり信用していない。ちなみに、僕は就職のために札幌市に引っ越した。地元は同じ北海道内の帯広市。
今は帰宅してコンビニで買った弁当を食べて風呂から上がったところ。いつもなら簡単な料理くらいは作って食べるのだけれど、今日の出来事はさすがに不快でショックを受けた。なので、作る気がなくなってしまったからコンビニ弁当を買った。
弁当と一緒に350mlの6缶パックの発泡酒を買った。それを飲みながら母に電話をかけた。結構長く呼び出し音が鳴った。そして、繋がった。
「もしもし、母さん」
『あら、どうしたの。久しぶりじゃない。連絡くれるなんて珍しいね』
「今日、仕事で不快なことがあってショックを受けたんだ。それで、落ち込んでる」
『あら、どうしたの? 話してごらん』
そうして僕は母に打ち明けた。
『それはあんたが負けないで彼女作ればいい話じゃない。好きな人いないの?』
「いるっちゃ、いる」
いくら母でもここまで打ち明けるつもりはなかったが、つい話してしまった。
『その人にアタックしたらは?』
「その話はいいよ、自分で考えるから」
母はいつも余計なことを言う。
『あら、そうなの』
「でも、サンキュ! 少し気が晴れた」
『なら、よかった』
言ってから電話を切った。
なるほど、好きな子にアタックか。半分諦めていたから考えていなかった。その子は大学で知り合った。連絡先は交換しているからLINEしてみようかな。
「恵さんねぇ、彼女は統合失調症とパニック障害なのよ。そのパニック障害の発作だね。いい子なのに、可哀相だわ」
聞いたことがある病名だ。
「そうなんですか。確かに気の毒ですね」
そこで話に入ってきたのはスタッフの笹田亮子だ。
「恵さんは24歳という若さだけど、よく気付くしとてもいい子だとワタシも思います。ただ、病気が邪魔をしているからうまくいかないんじゃないかと思いますね」
高木紀子主任は、
「確かにそうね。病気が邪魔をしているのは事実だわ」
笹田亮子は自分の机に座り、パソコンを起動した様子。
今日の送迎車の運転手は上原博。助手は僕。上原博は目鼻立ちがはっきりしていてイケメン。身体もほっそりしている。そのお陰か、女性のメンバーやスタッフに人気がある。今は独身だけど、本人曰く彼女がいるらしい。彼は26歳だが彼女はいくつだろう。気になるけれど、訊かない。癪(しゃく)に障るから。いい人なんだけど。
でも、上原博は仕事をする上でも、年齢も先輩だ。僕は今年の3月に大学を卒業して、4月からこの病院のデイケアでスタッフとして働いている。ちなみに22歳。上原博は山崎敏則よりも4つ年上。僕は内面も大切だと思っているが、外見も大事だと思っている。僕は外見にコンプレックスを抱いている。小太りで身長は160センチくらいと男性にしては低い。その上、禿ているし、顔にニキビが多い。だから、綺麗な顔をした上原博が苦手だ。仕事だから仕方なく話しているけれど。
僕が日報をつけていると、
「山崎君、送迎行くよ。忘れてたわけじゃないよね?」
「そんなことはないです」
相変わらず嫌なことを言う人だな、と僕は思って腹立たしくなった。「怒り」という感情には至らないが気分はよくない。でも、結局、仕方ないで終わらせてしまう。
でもいくら年が近いとはいえ、先輩は先輩だ。従わないと。
僕と上原博は送迎を終え、病院に戻ってきた。
「お疲れ!」
と、いつものように上原博は声をかけてくれた。
「お疲れ様です」
僕は答えた。
「山崎君、この病院にきて半年くらい経つか?」
笑顔でそう言われた。その笑みにはどういう意味があるのだろう。気になる。
「そうですね。お陰様で半年が経ちます」
僕は気分よく言った。
「誰のお陰だと思う?」
一瞬、この人は何を言ってるのだろう、と思った。
「それは、皆さんのお陰ですよ」
「おっ! その通りだ」
何だか感じが悪い。何でそんなこと言うのかな。恩着せがましいとはこのことだ。
「彼女はいるのか?」
訊かれたくない質問だ。
「いないですよ、どうしてそんなこと訊くんですか?」
上原博は笑っている。何か、腹立つ。自分は彼女がいるからいいかもしれないけれど。
「いや、何となく」
尚も笑っている。まるで、馬鹿にされているかのようだ。
僕は気分を害して足早にスタッフルームに戻った。
畜生! と拳を強く握りながら心の中で叫んだ。誰かに今までの一連の流れを話したい。できれば院内の職員に話したい。その方が分かりやすいから。
考えたがこの病院に就職してまだ約半年しか経っていないので愚痴を言える職員がいない。なので仕方ないから帰宅し、地元の母親に電話をすることにした。友達もいないことはないけれど、薄っぺらい関係であまり信用していない。ちなみに、僕は就職のために札幌市に引っ越した。地元は同じ北海道内の帯広市。
今は帰宅してコンビニで買った弁当を食べて風呂から上がったところ。いつもなら簡単な料理くらいは作って食べるのだけれど、今日の出来事はさすがに不快でショックを受けた。なので、作る気がなくなってしまったからコンビニ弁当を買った。
弁当と一緒に350mlの6缶パックの発泡酒を買った。それを飲みながら母に電話をかけた。結構長く呼び出し音が鳴った。そして、繋がった。
「もしもし、母さん」
『あら、どうしたの。久しぶりじゃない。連絡くれるなんて珍しいね』
「今日、仕事で不快なことがあってショックを受けたんだ。それで、落ち込んでる」
『あら、どうしたの? 話してごらん』
そうして僕は母に打ち明けた。
『それはあんたが負けないで彼女作ればいい話じゃない。好きな人いないの?』
「いるっちゃ、いる」
いくら母でもここまで打ち明けるつもりはなかったが、つい話してしまった。
『その人にアタックしたらは?』
「その話はいいよ、自分で考えるから」
母はいつも余計なことを言う。
『あら、そうなの』
「でも、サンキュ! 少し気が晴れた」
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