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7話 友達
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今は、午前3時過ぎ。勝から電話が来た。
「もしもし、勝、入っていいぞ」
俺はより一層、低い声でそう言った。
『わかった』
と、言った後電話は切れた。少ししてから彼は入って来た。
勝の家庭は生活保護世帯なので徒歩でここまで来ている。
「こんばんは。大丈夫?」
勝は俺より2つ下の友人。彼がこの時間まで起きているのはきっと眠れないからだろう。奥さんは健常者なはずだけれど寝なくて大丈夫なのだろうか。奥さんは前に一度だけ遊びに来てくれたことがある。あれ以来、来たことはないが。
「相変わらず不安感が強いよ」
「そうなんだ。頓服は飲んだ?」
「飲んだけど効かない」
彼は今、俺の家の中にいて話を聞いてくれている。
「今日は仕事?」
「ああ、仕事だよ……」
俺は俯いた。彼はこう言った。
「休んで病院行ったらは?」と。
「勝。ずいぶん簡単に言うじゃないか」
俺は少し腹が立った。
「そういうわけじゃないけど、ただ晃さんの身を案じただけだよ」
「……そうかあ。心配かけて悪いな」
俺は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。
「ビール、飲むか?」
「いいの? くれるならいただく。どうせ、帰りは歩きだし」
缶ビールとオレンジジュースとコップを持って俺は元いた席に戻った。
勝が来てくれたお陰で俺は、若干、気持ちが安定した。
「勝の方は体調どうだ? うつ病のほうだけど」
「今は安定しているよ」
「そうか。それは良かった。俺、思うんだけど今回は薬を飲むことよりも勝が来てくれて気持ちが安定してきたんだ、ってことは、俺にはパートナーが必要かなって思ったんだ」
勝は考えている様子だ。
「まあ、ぶっちゃけ1人でいたい時もあるけど、楓は精神的に支えてくれているから助かってるよ。だから、晃さんも良い人見付けて結婚したらいいよ」
楓というのは、勝の妻だ。彼より6つ年下の34歳だったはず。彼女はパートで仕事をしている。今の生活保護プラス少しの収入を見込んでやっているらしい。
俺は彼にビールを手渡し、コップにオレンジジュースを注いで、
「勝はいずれ就職出来たらするつもりなんだろ?」
「まあ、体調を医者に相談しながらだけどね」
俺は頷いた。
「結婚かぁ……俺も中年のおっさんだからなあ」
「それにしたって41でしょ? まだまだこれからだよ」
勝は苦笑いを浮かべながら言っている。
「結婚は出来たとしても、子どもはどうかなぁ」
「相手が若かったらできるしょ」
彼は俺から目線を外して言った。
「そういう若い女が見付かればいいけど」
「そうだねぇ、こればっかりは縁だよ」
俺は再び頷いた。
それから1時間後――
俺らに沈黙が訪れた。
「だんだん、眠くなってほうきたなぁ……」
「お。それは寝た方ががいいよ。仕事もあるんだし。もう朝5時過ぎたよ。僕もそろそろ帰るからさ」
勝は欠伸をしていて眠そうだ。
「今日はありがとな。助かったよ」
俺はそう感謝の意を述べた。
「いやいや、僕で良ければいつでも言って」
「サンキュ! またな」
そう言った後、彼は残ったビールを飲み干してから立ち上がり、
「お邪魔しました」
とゆっくりと歩き出し、俺は彼を見送った。
いい奴だ、本当に。
「もしもし、勝、入っていいぞ」
俺はより一層、低い声でそう言った。
『わかった』
と、言った後電話は切れた。少ししてから彼は入って来た。
勝の家庭は生活保護世帯なので徒歩でここまで来ている。
「こんばんは。大丈夫?」
勝は俺より2つ下の友人。彼がこの時間まで起きているのはきっと眠れないからだろう。奥さんは健常者なはずだけれど寝なくて大丈夫なのだろうか。奥さんは前に一度だけ遊びに来てくれたことがある。あれ以来、来たことはないが。
「相変わらず不安感が強いよ」
「そうなんだ。頓服は飲んだ?」
「飲んだけど効かない」
彼は今、俺の家の中にいて話を聞いてくれている。
「今日は仕事?」
「ああ、仕事だよ……」
俺は俯いた。彼はこう言った。
「休んで病院行ったらは?」と。
「勝。ずいぶん簡単に言うじゃないか」
俺は少し腹が立った。
「そういうわけじゃないけど、ただ晃さんの身を案じただけだよ」
「……そうかあ。心配かけて悪いな」
俺は立ち上がり、冷蔵庫に向かった。
「ビール、飲むか?」
「いいの? くれるならいただく。どうせ、帰りは歩きだし」
缶ビールとオレンジジュースとコップを持って俺は元いた席に戻った。
勝が来てくれたお陰で俺は、若干、気持ちが安定した。
「勝の方は体調どうだ? うつ病のほうだけど」
「今は安定しているよ」
「そうか。それは良かった。俺、思うんだけど今回は薬を飲むことよりも勝が来てくれて気持ちが安定してきたんだ、ってことは、俺にはパートナーが必要かなって思ったんだ」
勝は考えている様子だ。
「まあ、ぶっちゃけ1人でいたい時もあるけど、楓は精神的に支えてくれているから助かってるよ。だから、晃さんも良い人見付けて結婚したらいいよ」
楓というのは、勝の妻だ。彼より6つ年下の34歳だったはず。彼女はパートで仕事をしている。今の生活保護プラス少しの収入を見込んでやっているらしい。
俺は彼にビールを手渡し、コップにオレンジジュースを注いで、
「勝はいずれ就職出来たらするつもりなんだろ?」
「まあ、体調を医者に相談しながらだけどね」
俺は頷いた。
「結婚かぁ……俺も中年のおっさんだからなあ」
「それにしたって41でしょ? まだまだこれからだよ」
勝は苦笑いを浮かべながら言っている。
「結婚は出来たとしても、子どもはどうかなぁ」
「相手が若かったらできるしょ」
彼は俺から目線を外して言った。
「そういう若い女が見付かればいいけど」
「そうだねぇ、こればっかりは縁だよ」
俺は再び頷いた。
それから1時間後――
俺らに沈黙が訪れた。
「だんだん、眠くなってほうきたなぁ……」
「お。それは寝た方ががいいよ。仕事もあるんだし。もう朝5時過ぎたよ。僕もそろそろ帰るからさ」
勝は欠伸をしていて眠そうだ。
「今日はありがとな。助かったよ」
俺はそう感謝の意を述べた。
「いやいや、僕で良ければいつでも言って」
「サンキュ! またな」
そう言った後、彼は残ったビールを飲み干してから立ち上がり、
「お邪魔しました」
とゆっくりと歩き出し、俺は彼を見送った。
いい奴だ、本当に。
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