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第1章 始まり
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登校時の茶番もあり、教室に入ったのは遅刻ギリギリの時間だった。
「あ、近藤くん、植松くん、おはよう!」
席に座るなり声をかけてきた人物は、タカシの左の席に座る柳原薫(ヤナギハラカオル)である。
積極的に話してくれる女の子だ。
ちなみに、席順はタカシを中心に左に柳原、右にマサトである。
明るい性格の彼女は毎朝笑顔で挨拶をしてくれる。
振り返る際にロングの艶やかな髪が揺れ、瞳がこちらを向くと、内気な性格のタカシは毎朝ドキッとしてしまう。
タカシはマサトとばかりつるんでいたため、新たに友達を作るような事はなく、お世辞にも社交的な性格とは言えなかった。
タカシは小学4年の時に両親を失い、完全に塞ぎ込んでしまった時期があった。
祖父母の家へ引越したことで転校を余儀なくされ、新しい環境に馴染めなかったのだ。
馴染む気力がなかったというのが正確なところだが、同じ境遇であるスズでさえ兄を励ましていたというのに、なんとも情けない話である。
だた、そんなタカシを外へ無理やり連れ出したのは、他の誰でもないマサトであった。
転校して早々にマサトはタカシのことを気に入り、毎日のように家に遊びにくる。
最初こそは、マサトのことを「うざい奴」と思い適当に遇らっていたが、徐々にタカシも心を開き、気づけば自他共にみとめるうわさの「仲良し悪ガキ」として地域に認識されたのであった。
そんなタカシにとって、自分に積極的に声をかけてくれる柳原には非常に感謝していた。
だが、やはりマサト以外の人間と話すのにはまだ慣れない。かなり緊張してしまう。
ましてや相手が女の子となると尚更である。妹以外の女の子と話すなど皆無であった。
「オ、オハヨウ、ヤ、ヤナギハラサン。」
「やなぎっち、おはよう!」
緊張から、タカシは今日もぎこちない返しをしてしまう。
入学から1ヶ月は経つというのにまだこんな調子である。
それを聞いた柳原はクスッと口元を緩めると。
「近藤くん、1ヶ月経つけど、まだ毎朝緊張しちゃうんだね。」
「やなぎっち、こいつは俺以外のやつに耐性がないからしょうがないんだよ。もう俺なしでは生きていけないからな。」
「うるせぇ! 誤解を招くようなこというなよ!」
「何言ってんだ、本当のことだろ? 照れるなよ~」
マサトが一方的にタカシにイチャイチャし出すのをみて、柳原がクスクスと笑っている。
入学当初こそ、柳原はそんな様子の2人を見ると恥ずかしそうに「そういう関係なの?」と誤解しているような問いかけをしてきてはいたが、今となってはじゃれあっている2匹の猫を見るような微笑ましい眼差しを向けてくれるようになった。
「本当に2人は仲がいいんだね。」
「あったぼうよ! 昔から一緒だからな!」
「だから小4からだからそこまで昔じゃないだろ。」
「あ、またその話する? そんなに俺を泣かせたいの? でも、そんなタカシも俺は……」
「あー! もうやめろ、わかったから!」
そんなじゃれあう2匹の猫を見て柳原は少し寂しそうに。
「羨ましいな。」
「「え。」」
思わず口に出してしまったというように、柳原はハッとして口元を押さえて顔を真っ赤にする。
それをみたタカシもなんだか顔が真っ赤にいなってしまう。
ただし、1人の解釈は違ったようだ。
「いくらやなぎっちだからって、タカシを渡すわけにはいかないぜ。」
タカシと柳原はぽかんと口を開けてマサトを見て固まる。
「なんてな、冗談だよ。でもやなぎっちは昔の俺みたいで親近感が湧くんだよな、タカシの半分ならいいぜ!」
「……」
「ぷっ……あはははは!」
何も冗談になってない気がするが、大真面目なマサトの言葉を聞いて柳原は思わず吹き出してしまったようで、腹を抱えて笑いだした。
「ありがとう、でもね、せっかく隣の席になったんだし、ちゃんと友達になりたくてね。早く私のことにも慣れてほしいってのが本音かな。」
笑いながらではあるが、柳原の言葉は芯が通っていた。
本心からそう思ってくれているのであろう。
「あ、ありがとう。」
そう返すと、柳原は笑顔で頷いてくれた。
「さ、1限目始まるよ!」
タカシは、マサトと柳原の好意は素直に嬉しかったが、やはり自分はまだ周りの人間に支えられてやっとここに立っているんだと実感する。
今まで何度もそれを実感することがあったが、その度に自分が情けなくなる。
ネトゲの世界では頼られることが多く、自分を誇示できるが、現実ではそううまくはいかない。タカシが深夜までネトゲをしてしまうのはそんな理由も1つある。
だが、いつまでも周りに支えられてばかりではいけない。
この社会の中で生きていくためには、自分1人で立つだけではなく、さらに壁さえも乗り越えなくてはならない。
でも、何のために「生きる」のだろう。
ふとそんなことを考えると、頭の中にスズの姿が浮かんだ。
考える必要もない。答えはもう出ている。
両親を失った最愛の妹を守り、立派に育てる。
それがタカシの願いでもあり、今を生きる意味でもあるのだ。
両親の代わりなんて烏滸がましいことは言わないが、スズだけには幸せになってほしい。
そんなことを考えて、また日常が始まるのであった。
「あ、近藤くん、植松くん、おはよう!」
席に座るなり声をかけてきた人物は、タカシの左の席に座る柳原薫(ヤナギハラカオル)である。
積極的に話してくれる女の子だ。
ちなみに、席順はタカシを中心に左に柳原、右にマサトである。
明るい性格の彼女は毎朝笑顔で挨拶をしてくれる。
振り返る際にロングの艶やかな髪が揺れ、瞳がこちらを向くと、内気な性格のタカシは毎朝ドキッとしてしまう。
タカシはマサトとばかりつるんでいたため、新たに友達を作るような事はなく、お世辞にも社交的な性格とは言えなかった。
タカシは小学4年の時に両親を失い、完全に塞ぎ込んでしまった時期があった。
祖父母の家へ引越したことで転校を余儀なくされ、新しい環境に馴染めなかったのだ。
馴染む気力がなかったというのが正確なところだが、同じ境遇であるスズでさえ兄を励ましていたというのに、なんとも情けない話である。
だた、そんなタカシを外へ無理やり連れ出したのは、他の誰でもないマサトであった。
転校して早々にマサトはタカシのことを気に入り、毎日のように家に遊びにくる。
最初こそは、マサトのことを「うざい奴」と思い適当に遇らっていたが、徐々にタカシも心を開き、気づけば自他共にみとめるうわさの「仲良し悪ガキ」として地域に認識されたのであった。
そんなタカシにとって、自分に積極的に声をかけてくれる柳原には非常に感謝していた。
だが、やはりマサト以外の人間と話すのにはまだ慣れない。かなり緊張してしまう。
ましてや相手が女の子となると尚更である。妹以外の女の子と話すなど皆無であった。
「オ、オハヨウ、ヤ、ヤナギハラサン。」
「やなぎっち、おはよう!」
緊張から、タカシは今日もぎこちない返しをしてしまう。
入学から1ヶ月は経つというのにまだこんな調子である。
それを聞いた柳原はクスッと口元を緩めると。
「近藤くん、1ヶ月経つけど、まだ毎朝緊張しちゃうんだね。」
「やなぎっち、こいつは俺以外のやつに耐性がないからしょうがないんだよ。もう俺なしでは生きていけないからな。」
「うるせぇ! 誤解を招くようなこというなよ!」
「何言ってんだ、本当のことだろ? 照れるなよ~」
マサトが一方的にタカシにイチャイチャし出すのをみて、柳原がクスクスと笑っている。
入学当初こそ、柳原はそんな様子の2人を見ると恥ずかしそうに「そういう関係なの?」と誤解しているような問いかけをしてきてはいたが、今となってはじゃれあっている2匹の猫を見るような微笑ましい眼差しを向けてくれるようになった。
「本当に2人は仲がいいんだね。」
「あったぼうよ! 昔から一緒だからな!」
「だから小4からだからそこまで昔じゃないだろ。」
「あ、またその話する? そんなに俺を泣かせたいの? でも、そんなタカシも俺は……」
「あー! もうやめろ、わかったから!」
そんなじゃれあう2匹の猫を見て柳原は少し寂しそうに。
「羨ましいな。」
「「え。」」
思わず口に出してしまったというように、柳原はハッとして口元を押さえて顔を真っ赤にする。
それをみたタカシもなんだか顔が真っ赤にいなってしまう。
ただし、1人の解釈は違ったようだ。
「いくらやなぎっちだからって、タカシを渡すわけにはいかないぜ。」
タカシと柳原はぽかんと口を開けてマサトを見て固まる。
「なんてな、冗談だよ。でもやなぎっちは昔の俺みたいで親近感が湧くんだよな、タカシの半分ならいいぜ!」
「……」
「ぷっ……あはははは!」
何も冗談になってない気がするが、大真面目なマサトの言葉を聞いて柳原は思わず吹き出してしまったようで、腹を抱えて笑いだした。
「ありがとう、でもね、せっかく隣の席になったんだし、ちゃんと友達になりたくてね。早く私のことにも慣れてほしいってのが本音かな。」
笑いながらではあるが、柳原の言葉は芯が通っていた。
本心からそう思ってくれているのであろう。
「あ、ありがとう。」
そう返すと、柳原は笑顔で頷いてくれた。
「さ、1限目始まるよ!」
タカシは、マサトと柳原の好意は素直に嬉しかったが、やはり自分はまだ周りの人間に支えられてやっとここに立っているんだと実感する。
今まで何度もそれを実感することがあったが、その度に自分が情けなくなる。
ネトゲの世界では頼られることが多く、自分を誇示できるが、現実ではそううまくはいかない。タカシが深夜までネトゲをしてしまうのはそんな理由も1つある。
だが、いつまでも周りに支えられてばかりではいけない。
この社会の中で生きていくためには、自分1人で立つだけではなく、さらに壁さえも乗り越えなくてはならない。
でも、何のために「生きる」のだろう。
ふとそんなことを考えると、頭の中にスズの姿が浮かんだ。
考える必要もない。答えはもう出ている。
両親を失った最愛の妹を守り、立派に育てる。
それがタカシの願いでもあり、今を生きる意味でもあるのだ。
両親の代わりなんて烏滸がましいことは言わないが、スズだけには幸せになってほしい。
そんなことを考えて、また日常が始まるのであった。
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