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第1章 始まり
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「なんだか場違いだよな。」
昇降口へと来たタカシは正面にあった来客用の椅子に座ってスズを待っていた。
その間、何人もの生徒が往来していたが物珍しそうな視線を向けてくる。
校舎の中に入っても、やはり地震などなかったかのように静かであった。
横切る生徒に地震の被害を確認しようと、何度か声をかけようとしたが、あまりにも平然と歩いているので、先ほどまでの出来事が本当に事実であるか自信がなくなり、言葉を飲み込んでしまう。
タカシは、自分だけが焦ってもスズに不安を与えてしまうかもしれないと、一度冷静になって、先ほどまでの出来事を振り返ることにした。
少なくともタカシが通っている高校の校舎内は地震により混乱していた。
この学校はタカシの学校から自転車で数分の距離しか離れていない。まさか、地盤の関係でここでは揺れがさほど大きくなかったのだろうかと考えてみる。
だがそれもありえないだろう。仮にそんなことがあったとしても、ここまで来る途中の街中でも多少の被害が出ているはずである。
それが高校の校舎を出てすぐの街中でさえ井戸端会議が開催されていたほどだ。
おばさま方が笑いながら話していたところを見るに、あの規模の地震の直後に笑い話など考えられないため、校舎の外には地震の影響はなかったと考えて良さそうである。
(学生証……)
説明がつかない事ばかりであるが、学生証に至っては、一度無くなったのにもかかわらず気づかないうちに戻ってきていたのだ。いったいどういうことなのか見当がつかない。
守衛さんに見せる直前に学生手帳を開いて学生証が入っていないことはタカシ自身も確認済みであり、職員室で担任に学生手帳を開いて見せた時に至っては担任も含めて確認済みである。
見間違いなどではない。先ほどまでは確実に無かったのである。
それが、このタイミングで学生証が戻ってきたことは謎ではあるが不幸中の幸だった。
こんな真昼間に学生服でうろついていたら補導されかねない。そこで学生証が無かったら今度こそ警察のお世話になってしまうところだ。
(それにしても、誰も俺のことを覚えていないってどういうことなんだ。)
これについては、生徒だけならクラスぐるみの虐めとして説明がつきそうではあったのだが、担任も含めてタカシの事を覚えていなかった事が不可解である。
ニュースなどで担任もグルとなった虐めというのも世の中にはあるようだが、学校にはタカシが在学していた記録すら残っていなかった。担任どころか学校ぐるみの虐めなどありえるのだろうか。流石に色々と問題になるだろうし、もっとも学校にとってメリットがまったくなく、問題が顕在化した時のデメリットしか無い。
そう考えると、ありえない事ではあるが、誰かが意図的に皆の記憶と学校の記録を操作してタカシがそもそもあの学校に在学してなかったことにしたのだろうか。
更に、その誰かが高校の校舎内だけであの地震を引き起こしたのだろうか。
タカシはそう考えたところで。
「バカバカしい。」
自分の考えが明らかに現実離れしすぎていることに気づき、タカシは考える事をやめた。
人間にそんな事ができるはずがない。
「人間には?人間以外なら……。いやいや、また、俺は何を考えてるんだっての。」
もう人間では説明できない。
タカシの頭が混乱のピークを迎え頭を抱えて下を向いていると、誰かの足が視界に入っていることに気づく。
ゆっくりと顔を上げると、そこには妹のスズが立っていた。
スズは無事だった。
安堵から、タカシの瞳から一筋の涙が頬へこぼれ落ちた。
「よかった。スズ、無事だったんだな。」
タカシは、また妹の、スズの笑顔が見れる。
そう思い、スズの顔を見るが。
「あなたは誰ですか?」
そこにあったのはスズの笑顔ではなく、まさに他人を見るような、異物を見るような不快そうな顔であった。
タカシは、残された唯一の支えを失い地獄の底に突き落とされた。
昇降口へと来たタカシは正面にあった来客用の椅子に座ってスズを待っていた。
その間、何人もの生徒が往来していたが物珍しそうな視線を向けてくる。
校舎の中に入っても、やはり地震などなかったかのように静かであった。
横切る生徒に地震の被害を確認しようと、何度か声をかけようとしたが、あまりにも平然と歩いているので、先ほどまでの出来事が本当に事実であるか自信がなくなり、言葉を飲み込んでしまう。
タカシは、自分だけが焦ってもスズに不安を与えてしまうかもしれないと、一度冷静になって、先ほどまでの出来事を振り返ることにした。
少なくともタカシが通っている高校の校舎内は地震により混乱していた。
この学校はタカシの学校から自転車で数分の距離しか離れていない。まさか、地盤の関係でここでは揺れがさほど大きくなかったのだろうかと考えてみる。
だがそれもありえないだろう。仮にそんなことがあったとしても、ここまで来る途中の街中でも多少の被害が出ているはずである。
それが高校の校舎を出てすぐの街中でさえ井戸端会議が開催されていたほどだ。
おばさま方が笑いながら話していたところを見るに、あの規模の地震の直後に笑い話など考えられないため、校舎の外には地震の影響はなかったと考えて良さそうである。
(学生証……)
説明がつかない事ばかりであるが、学生証に至っては、一度無くなったのにもかかわらず気づかないうちに戻ってきていたのだ。いったいどういうことなのか見当がつかない。
守衛さんに見せる直前に学生手帳を開いて学生証が入っていないことはタカシ自身も確認済みであり、職員室で担任に学生手帳を開いて見せた時に至っては担任も含めて確認済みである。
見間違いなどではない。先ほどまでは確実に無かったのである。
それが、このタイミングで学生証が戻ってきたことは謎ではあるが不幸中の幸だった。
こんな真昼間に学生服でうろついていたら補導されかねない。そこで学生証が無かったら今度こそ警察のお世話になってしまうところだ。
(それにしても、誰も俺のことを覚えていないってどういうことなんだ。)
これについては、生徒だけならクラスぐるみの虐めとして説明がつきそうではあったのだが、担任も含めてタカシの事を覚えていなかった事が不可解である。
ニュースなどで担任もグルとなった虐めというのも世の中にはあるようだが、学校にはタカシが在学していた記録すら残っていなかった。担任どころか学校ぐるみの虐めなどありえるのだろうか。流石に色々と問題になるだろうし、もっとも学校にとってメリットがまったくなく、問題が顕在化した時のデメリットしか無い。
そう考えると、ありえない事ではあるが、誰かが意図的に皆の記憶と学校の記録を操作してタカシがそもそもあの学校に在学してなかったことにしたのだろうか。
更に、その誰かが高校の校舎内だけであの地震を引き起こしたのだろうか。
タカシはそう考えたところで。
「バカバカしい。」
自分の考えが明らかに現実離れしすぎていることに気づき、タカシは考える事をやめた。
人間にそんな事ができるはずがない。
「人間には?人間以外なら……。いやいや、また、俺は何を考えてるんだっての。」
もう人間では説明できない。
タカシの頭が混乱のピークを迎え頭を抱えて下を向いていると、誰かの足が視界に入っていることに気づく。
ゆっくりと顔を上げると、そこには妹のスズが立っていた。
スズは無事だった。
安堵から、タカシの瞳から一筋の涙が頬へこぼれ落ちた。
「よかった。スズ、無事だったんだな。」
タカシは、また妹の、スズの笑顔が見れる。
そう思い、スズの顔を見るが。
「あなたは誰ですか?」
そこにあったのはスズの笑顔ではなく、まさに他人を見るような、異物を見るような不快そうな顔であった。
タカシは、残された唯一の支えを失い地獄の底に突き落とされた。
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