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10話
しおりを挟む蓮が熱を出したその翌日、あの苦しそうな姿は嘘だったかのように蓮が元気に登校してきた。そしていつものように花にまとわりついて目をハートにしている。
「...おい、花に堂々と触れんじゃねーよ。やっぱりばかだから、風邪引いても1日しか寝込まねぇんだな。お前の顔当分見ないで済むと思ったのに。」
蓮が元気になって嬉しいのに、俺はまた思ってもない憎まれ口を叩いてしまう。
「…あ?お前は朝から本当に余計なことしか言わねぇな。…言っとくけど、俺が風邪引いたのお前のせいだからな。傘借してもらって感謝の一つもいえねぇのかよ。もし俺がお前だったら、罪悪感で見舞に行くとか普通するだろうけど。」
「...元々俺はかして欲しいなんて一言も言ってない。」
「はいはい。そうですか。もう言われなくてもお前なんかかまわねぇ。…それに自分で言っといてなんだけど、お前が見舞いに来てたらって考えるだけで気分が悪くなる。…逆に来なくてありがとよ。」
「……」
「ちょ、ちょっと蓮…!!」
蓮の言葉を聞いて花が何か言おうとするのを俺が止めると、花は不満そうに黙った。
蓮は俺が見舞いに行ってたことを知らない。俺は蓮の言葉がすごく心に刺さった。でもそれと同時に蓮に秘密にしておいてよかったと心から思った。もし花ではなく、俺が蓮を看病してたなんて聞いたら、また体調が悪くなるかもしれない。
「こんな奴のことより、花。昨日はありがとう。なんか色々作り置きしといてくれたんだろ?今日食べたけどすげぇ美味しかった。…さらに花が好きになった。」
「………う、ん…」
「もうすぐ朝礼だし急ごーぜ、ほら行くぞ、花!」
そう言って蓮は花の手を引っ張って行ってしまった。
…作り置き食べてくれたんだ。蓮は花が作ったと思って食べただけだけど、それでも俺が作ったものを美味しかったと言ってくれて本当に嬉しかった。いつも真顔で仏頂面だが、この時は周りにたくさん人がいるのに,思わずにやけてしまった。
蓮のことが嬉しすぎてそのだらしない顔が1人の男に見られていたとはこの時の俺はまだ知るよしもない。
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