ごめんね、でも好きなんだ

オムライス

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35話 蓮side

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誰かが呼んでいる声がする。










俺は自分を呼ぶ声で目を覚まし、重い身体を起こす。俺は一人暮らしなのでここには人がいるはずがない。しかも、今俺の目の前にいる奴は……







「蓮。」

奴は俺の名前を呼ぶ。昔は名前で呼びあっていたが、今となっては名前を呼ぶことは一切ない。そうだからと言って、別に呼びたいなんて思ったこともないし、気に求めたことがなかった。しかし…あいつから発せられる俺の名前を聞いて何故か俺の心臓は高鳴る。頬は紅潮する。こいつに名前を呼ばれただけでいつもの俺ではなくなったのはいつからだろう。あれだけ好きだった花のことを考えなくなったのはいつからだろう。

こいつのせいで


「…何?」

「俺、蓮の事が好き。」

「…は?」

「蓮のことが好きなんだ。」

「…いや、お前近藤って奴と付き合ってんだろ!」

「付き合ってない!!俺は蓮が好き!…ねぇちゅうしよ?」

そう言ってあいつは服を一枚一枚脱ぎ始める。男とは思えないほど華奢な体づき、真っ白な肌その全てが俺を動揺させる。なんで動揺しているのか考える余裕なんてない。ただその体に欲情し、まだ脱いでいる途中のあいつを俺は押し倒す。そして真っ黒で綺麗な奴の髪に手を添えて、俺は唇を—————-.....























「……ッはぁッ!」  
俺は飛び上がって辺りを見渡す。俺の名前を呼ぶ声は一切聞こえない。ただアラームの機械音が響き渡る。


「…なんであ、あんな夢…」

理由なんて本当はわかってる。分かってるけど認めたくない。認めたら、認めたら俺は今までの事を後悔してしまう。


俺はあいつが嫌いなんだ。

あいつに彼氏ができたって関係ない。あいつが俺の事が好きだってことももうあいつにとってただの過去。現に今アイツには近藤もいて周りにはたくさんの友達がいて、俺といるときとは別人のような顔で笑っている。

ただ俺1人…俺1人だけがその過去にしがみついているだけ。そんなことは頭ではわかってる。分かってるけど……






「…悠…」





もう一度、もう一度だけ名前を呼ばせて。
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